47話 番外 雑賀の荘 その三
最終巻となる第三巻の出だしは、実戦演武のルールが事細かに書かれている。
前話で《実戦形式の演習》とあったが、より盛り上げを図るためか、実際にこのような催しが行われているのか、第三巻では《実戦演武》と表記されている。
「実戦演武?」
「そうじゃ、この巻は対決号。登場キャラ同士でバトるんじゃ。少年マンガ風にのう」
「へー。殺し合いすんのか?」
「アホかっ。同士討ちしてどーすんじゃ。ペイント弾じゃよ」
「……もはや時代考証皆無だな。まったく差し支えはねーが」
「顔料を詰めた粘土を丸め、焼き固めたものじゃ。メイドイン雑賀じゃぞ!」
「ほー、そーけ。もっともらしく説明するもんだ」
まずは雑賀エリアに存在する五つの惣で予選が行われ、それぞれから代表が選抜され当日の本選に臨む。そして同一会場での総当たり戦で、最後まで生き残ったチームが優勝となる。
このときばかりは各惣の住民たちはこぞってこの演武の応援に集まり、雑賀ノ荘の高台は人であふれかえっていた。実際、これはただのお祭りのはずなんだが、みなの意気込みがハンパ無い。この演武の結果によって、自分たちの惣としての株が上がり、その年に受注する仕事での実入りが違うそうで、各々の応援にもおのずと熱が入るわけだった。
そしてそのイベントに、前話で登場した牧なる美少年と、明智光秀、そして師匠の土橋守重が加わってチームを組み、参加するというストーリー展開である。
壮大な《卒業課題》だなぁ。
◇ ◇ ◇
で、予選。当然ながら光秀チームが難なく通過する。
なんせチート感が凄まじいのだ。
まず、光秀が得意とする短筒の命中精度の高さ。
標的とされた相手のその八割は、狙われたら最後、撃ち倒されていた。しかも彼女は二丁銃! 連射撃しているのと同じだった。
次に、牧少年。
こちらの種子島長筒は、何処から狙ってるのかわからない遠距離から狙われ、気付けば撃たれていたといったケースが殆どだった。
典型的なスナイパーで、彼は対戦相手から最も恐れられていた。
さらに、土橋守重師匠。
彼の扱うのは大筒だ。
飄々として身軽そうな体格でありながら、ナゼ? と疑問視するほどの巨大な大筒の使い手。一発命中すれば五人程度を吹き飛ばす威力を有していた。
本選開始前、出場の五チームが一箇所に集められる。……ナルホド、この時に相手の所有している武器を把握できるチャンスなんだと……。守重師匠にいたっては、相手が誰であるかで強さも解りそうだしな。
そして、一発目の号砲。
それぞれのチームが散開する。
しばらくして、二発目の号砲が鳴らされ、ついに戦闘が開始される。
まるで「かくれんぼ」みたいな始まり方だな。
「要するにサバゲーだからな」
ボクの独り言に帰蝶が解説。オマエ、令和人確定。
「織田家の鉄砲衆にも同じ訓練をさせてやろう。《最弱》から《微弱》くらいにはレベルアップできるだろう」
「ああ、良いかもの。光秀と滝川一益に命じて競わせたら良かろう」
コイツ、ときたま道三的発想してくれるんだよなぁ。……そーしよ。
ええと。
で、開始された時点で光秀たちは、森の中に入り、それぞれ木を背にし。
師匠が語り始める。
「この演武が、今日までの訓練の総仕上げと心得て臨んでくれ。辛かった修行も、すべて今日のための、この演武で発揮するためのものだったと覚悟し、全力で取り組むようにな、っぴー」
「はっ!」
「ところでお前たち、相手の武器を見たか?」
守重師匠の問いに光秀が即答する。
「大筒のみのチームが一組、種子島長筒のみが一組、大筒と種子島長筒の混成が二組ありました」
「牧よ、混成の振り分けは?」
守重師匠が、牧に向いた。
「……種子島長筒が二人に、大筒一人。……二組とも同じだった」
「正解…! で、奴らの得意とする戦術は何だと思うっぴょん?」
ニヤリとした師匠が尋ねる。
「大筒は全体的に攻撃が可能。他方の種子島長筒は、狙撃が得意ですよね?」
「そうだ。それなら牧は、この混成の奴らがどんな戦術を立ててくると思う?」
「……大筒は大きく攻撃が出来る。けど発砲地点が知られちゃう。……だから、狙撃手の二人が攻撃の主力を担って大筒は逃げるときのためのものでしかない」
「そうだ、正解」
牧の大人しい性格を知る師匠は、いちいち尋ねながら教えることを心掛けていた。と、ト書きが添えられている。そーか、ボクもキツノンに実践してみよ。
正解だとホメられた牧少年のテレ顔が、ことさら美少年に描かれている。
「かわえーのう、牧くん」
会話中、三本の煙が爆音と共に上がった。
遠方で一本、それより近くに一本、そして、もう一本は至近距離だった。
「確認に行こう」
三本の煙が落下した地点が赤く染まっている。その中に三人の喪心者が確認された。彼らは混成武器の組だった。




