表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結御礼】新説信長公記! ― シスコンお兄ちゃんが大好きなんだけど、モテすぎだしハラスメントな信長さまだから、織田家滅亡のお手伝いをするね! ―  作者: 香坂くら
第四章 兄妹乖離(歴史物じゃねぇの?)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/125

41話 お市サイド⑨ 吉乃さんへ(後編)


 久々のリアルタイムお兄ちゃん声。もっと遠い存在に感じるのかと思ったのに。

 忘れていた《わたしの日常》が戻って来た、そんな気がした。しかも「あっかんべー」付きで。背を向けようって頑張ってるのに、どーしてあなたはそんなにイジワルなの?! でもでも! それ以上に、なんでこんなに嬉しーのよォ!

 ……お兄ちゃん、やっぱいいな。


 はぁあ。ふー。

 しばしの悦楽。

 なのにナガマサったら、イミなくお兄ちゃんにが突っかかっていっちゃって! アホチンッ! 急にハラハラしだした。ケンカなんて、して欲しくないからっ!


「いい加減にしなよっ、ナガマサ! そのへんで止めなさいっ」

『分かってるよ。ついカッカきちまった』

「早く吉乃さんを呼び出してよ」


 上手く話を誘導して吉乃さんを呼び出して欲しかったの。オレに任せろなんてゆーものだから、つい頼っちゃったら、ホラ、何故かふたりがケンカを始めてるし。数パーセントくらい不安だったのが見通し甘かったぁ。


 半ば諦めムード漂わせてたら、何と! 吉乃さんが登場した!

 結果オーライってやつ? ヨカッタぁ。


 そうこうするうちに人の出ていく音。ツイてることに、吉乃さんの方から「ナガマサとふたりで話がしたい」って言ってくれたので。渋々のお兄ちゃんと帰蝶(きちょう)ちゃんが退室したとうかがえた。


『市。いいか?』


 あっ、ナガマサ。吉乃さんにわたしの存在がバレちゃうよ、いちいち問い合わせしないで。


『……お市ちゃん? わたしです。吉乃です』

「はあぁぁぁ?」


 吉乃さん?!

 なんでナガマサ、電話代わってんの?!


『わたし、うすうす気付いてました。長政さまが陰で遣り取りされておられるの』

「うう」

『お市ちゃん、どうか返事してください』

「……」


 あまりに唐突だったんで、どーしていいか分かんない。


『……お市ちゃん』

「あ」

『……はい』

「あの」

『はい。ゆっくりでいいですよ』


 なんでだろ? 鼻がヒクヒクする。目がジーンってする。


「わたし」

『……はい。……はい。どうしましたか』

「あ、あのね、わたし、吉乃さんは地味だって思うんだ」

『えー? そーですかぁ?』

「地味! 地味すぎ! だからさ、派手でバカバカしい服、プレゼントしたの!」

『それって、どうしてですか?』


 うーん。口に出したくないよォ。……でも。

 電話の向こうの吉乃さんは気が長いのか単に優しいのか、根気強くわたしの次の言葉を待っている。見えなくてもニコニコ顔が伝わってくる。

 うう。


「あのさぁ、吉乃さんにはいつも楽しく元気で居て欲しいんだ。そうしたらお兄ちゃんだって嬉しいし楽しくなるでしょ?」

『ああっ。……そういうつもりだったんですね』

「し」

『し?』


 息苦しい。胸が、痛い……。

 でも。ちょっぴりだけ、嬉しい。

 だって、考えようによっては、お兄ちゃんの笑顔を運んでくれた人だから、とってもいい人だって確信できたから。ちょっぴりだけ、そう思えるから。


 だから。

 さぁ、口を開け! わたし!


「幸せになってね! 吉乃さん!」

『……』


 ? 聞こえなかったかな? もっかい言うね。


「吉乃さん、おめでとう! お幸せにね!」

『……』


 ――アレ?

 まさかの無反応? ……そんなー。


「ち、ちょっとぉ。ここはカンドーして『ありがとう』を連呼するところでしょー?」

『……』

「……あ」


 ひぃぃぃぃ!

 わたし、道化! ピエロってるぅ!


『オイ、市。オレだ!』

「オトコになってるぅ!」

『オレだ、オレ! ナガマサだ!』

「な、ナガマサ?」

『吉乃さんな、お前の臭いセリフにカンドーして言葉を詰まらせて泣いてるぞ』


 はー……。

 臭いは言わなくていい!


「と、とにかく良かったよ。じゃ、よろしく言っといて」


 予定外だったけど、直接話できて結果的に良かったかも。


『あ、お市ちゃん!』

「ん? 吉乃さん?」

『わたしです、吉乃です。ありがとう、本当にありがとう、お市ちゃん』

「あ、今更ヤメて。恥ずかしーよ」

『お市ちゃん、イカスルメル星には帰ってなかったんですね?』

「うん。……って、うわ! たばかられた?!」

『そんなつもりじゃありませんが、まだ近くに居るんでしたら、帰ってあげてくださいな。お兄さんのところへ』


 今度はわたしが沈黙する番のよう。考えがまとまらないんじゃなくって、返事すらしたくないだけ。吉乃さん。わたしって女のことをまったく分かってないよ。


「吉乃さん。わたし、いまイカスルメル星にいますから。ゼッタイに岐阜城には戻りません。そーゆーセリフは有難迷惑ですから」

『……お市ちゃん』

「じゃ、これで切りますね」

『お市ちゃん! わたし分かってますから!』

「……何を?」

『お市ちゃんのキモチを分かってて、その上で信長さまを愛していますから! これからはお市ちゃんに気兼ねはしませんから!』


 吉乃さんはホントに良い人だ。

 わたし、大負けだ。

 今日こうして、この人とお話が出来て。


 よかった。


「吉乃さん。わたし、あなたが大大大キライ! だから、わたしもしあわせ探しちゃるからね!」

『わたしはお市ちゃんが大大大スキです、だからずっと負けません』

「わたしもだ! 次は勝つから!」

『はい!』


 離れたところでナガマサの男泣きする声が聞こえた。


 もーっ。ウザイ!




 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ