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【完結御礼】新説信長公記! ― シスコンお兄ちゃんが大好きなんだけど、モテすぎだしハラスメントな信長さまだから、織田家滅亡のお手伝いをするね! ―  作者: 香坂くら
第三章 京都上洛戦(新婚旅行したいから)

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27話 織田信長サイド① 妹よ、何考えてやがるっ


 妹の市が置き手紙を残して居なくなってから、一週間が経った。


『――お兄ちゃん江。市は自分探しに出かけます。お土産はフランスパンにします。』


 ううっ、どこに行ったんだ!? 市っ!


「……なぁオイ、勝家よー。(いもうと)土産(フランスパン)はまだなのか?」

「は! もっか全力で捜索しておりますが、お市さまの消息については一向に手掛かりがなく、誠に申し訳ございませぬ!」

「……はー。であるか」


 もう何回も聞いて分かってる回答なんだが、聞くたび心底落ち込むなぁ。


 ――森のくまさんこと、柴田(しばた)勝家(かついえ)


 コイツもクッキリと目の下にクマをこさえ、屈強なおっさんのはずなのに、見るからにフラフラした足取りで跪き言上している。

 全くの私怨ながら、(いもうと)に慕われているオマエの事は常時警戒レベル五で推移中なんだが、そこまでのやつれ様は同情を超えて間違いなく共感の域に達してるぜ、今回ばかりはな……。なんせボクも丸三日、オマエと同じ理由で寝れてないからな。いや、てんで眠気を覚えないからな。おそらくオマエもそうなんだろう?


 傍らの吉乃(きつの)がメソメソ泣きだした。


「わたしのせいです! わたしがもっともっと美味しいハンバーグを作ってあげていたら。わたしがもっと愉快で楽しいトークをしてあげれてたら。こんなにも嫌われることも無かったのに」

「ま、待て吉乃。聞き捨てならんな。なぜ嫌われてるって思うんだ?」

「だって。これは女の勘です。わたしがトイレ使わせてもらおうとノックしてもなかなか出て来てくれなかったりとか、わたしの作った物を『味見』と称して残さず食べちゃったりとか、お市さまの洗濯物には毎日食べこぼしのケチャプシミが付いてるとか、わたし自身はボケたつもりもないのに、いっつも風のように現れて「なんでやねん!」ってすかさずスリッパでツッコミ入れに来てくれてたりとか」


 ちょ待て。特に最後の! スリッパ?! と言うよりそれ、嫌われてたって言うの?!

 お前らボクの知らないところで色々楽し気にナニやってたんだ?


「吉乃。それはオマエの思い違いだ。(いもうと)はそんなヤツじゃない。そんなヤツじゃないってのは、市は意地悪やイジメするようなヤツじゃないってコトだ」

「でもそれならどうして、いまどき時代遅れの《自分探しの旅》になんて行くんでしょうか? あえて恥ずかしい思いをして心を磨くためなんじゃないでしょうか?」

「さぁ、な。それはどうかな……」


 もう色んな相手と百遍は繰り返してる堂々巡りの推論会。結論も手掛かりも出ず、いたずらに時だけが過ぎていく――。


「信長旦那っ! 半兵衛ちゃんが帰って参りましたでキキっ! 浅井(あざい)家との連携体制が整いましたっすよ!」

「おう、アリガトな。ボクらのハネムーンのために苦労してくれたな、半兵衛ちゃん」


 市のことで頭がいっぱいではあったが、吉乃の件もボクにとっては最重要事項だし、そのために骨を折ってくれたのはホントに有難い。


「旦那、それと。半兵衛ちゃんから重要な報告があるそうでごザル」

「重要だと?」


 平伏した半兵衛ちゃんはまなじりを上げ、仰天のセリフを放った。通常ならここでCMをはさむところだ。


「市さまからの新たなメッセージを入手いたしました。これに」

「なっ、なんだと! マジかっ!」


 三方に載せられたDVDをひったくり、再生機を探す。無い! 無いぞ! いったいこの城どーなってる! って、ここはボクの城か!


「再生するならこちらを。既にMYスマホにおとしておきましてごザル!」

「おおナイス、サルッ!」


 サルと肩を寄せ合い、サル所有のちっちゃなスマホを眺める。……なんか妙な塩梅だな。というかオマエ、動画をおとしたってコトはボクより先に(いもうと)の動画、見たんかーい!?


『わたしは寧々(ねね)。十四歳の中学二年生。母星イカスルメル星から地球に来たの。わたし、小五の時からウーチューバーの《ミショーさま》じゃなかった、織田信長さまの大ファンなんだ。これからもゼッタイゼッタイ、応援してるからね! のぶながさまー! スキーっ!』


 ?? なんだ、この子は? 《ミショー》って、ボクが以前に使ってた名前だが?


「……なんだ? この動画は?」

「間違えマシタでござるぅ、キッキィ! しっかしカワイイなぁ、寧々ちゃわぁん!」

「アホかーっ! 確かにカワイイが。今ぁ、百パーセントカンケーなかろーが!」


 背後に感じる吉乃の、情念のこもった視線もかなり痛くてツライ。サル公、分かっててやったか? コノヤローが!


「こっちでした。改めてどーぞっ!」


『お兄ちゃん、市だよ』


「ふわぁ市! いちいちいちいいちいちいちいちいいちいちいちいーっ!」


『あのさ、お兄ちゃん。結婚おめでとう。吉乃さんと末永く幸せになってね』

「おう、あたりきよーっ! 任しとけ!」


『わたしさ。おばあちゃんに急に会いたくなったの。だからしばらくイカスルメル星に帰るね。勝手にゴメンね。じゃあね』


 帰るだと? イカスルメル星に? ちょっと待て、メッチャあっさりしてんな! それだけかよ! もっと他にも言うべきことがあるだろう!?


「恐れながら申し上げまする。くだんのごとく市さまの意志は固いらしく、もうすでに今頃は宇宙(そら)の人になっているかもな……と……思ったり、思わなかったり」

「ぬわんだとぉ!!」

「ひっ。ごめんなさい、ごめんなさいっ!」

「……半兵衛ちゃん? なんでオマエが謝る必要がある?」

「……あ。い、いえ別に。つい、怒られたと思って」


 サルと半兵衛ちゃんは擬音を付けたいくらい「そそくさ」とボクの前から逃げ去った。そこまでビビらんでも。そんなに恐いカオしてたかな。


 ……市。


 なんでなんだよ。


「よぉ。そこに居るのは、妹に見捨てられたお兄ちゃんではないか!」

「はぁ? なんだ、帰蝶(きちょう)か。ウザイから去ねや」

「うっはー、こりゃまた愉快なほどメッチャ上機嫌じゃのう。楽しすぎるわい」


 コノヤロー、たまには本気で怒るぞ、ロリババアめ。オイ誰か、鋼鉄製の超強力なフトンたたき持ってこいや!

 だが、吉乃がボクの手を強く握った。わあってるわあってる。ただ思っただけで、良い子の前で野蛮な行いはしないよ。


「なんか用なのか? ボクはスゴーク、スゴーク忙しいんだがな?!」

「まーそー言うなや。オマエ近日中に京に出かけるらしいじゃないか?」

「……連れてけってか?」


 好奇心の旺盛さでコイツの右に出るモンはいねーからな。だがよ、前の足利将軍接待の時みたいに醜態晒すなよ? 織田軍の風紀乱すなよ?


「ダレが付いてくか、浮気な男と恋敵(どろぼうネコ)とのいちゃらぷランデヴーなんぞに」

「浮気? どろぼうネコ? 意味不明なセリフを吐くなっ」

「アホか、オマエ? いっとくが一応はな、正式にはワシは信長(オマエ)正妻(ヨメ)設定なんだぞ? そこのところ脳内整理、追いついてるか?」

「……あー。そー言えば」

「あー……そー言えば、じゃねーわ。ったく。……まーいーさ。その代わりしっかり京土産買って来いよ?」


「はいはい。《京名物百味会聖〇院八〇橋総本店の生八ッ橋》な」

「ちがーう! 京と言えば《らし〇ばんの掘り出しレア品》と、《京ア〇ショップのオリキャラフィギュア》じゃろう! 特にゼーッタイに絶対に、頼みたいのは凸守〇苗ちゃんの……」


 ……なぁ帰蝶(きちょう)

 アンタの行き着く先は何処なんだ? オイ、吉乃。笑ってないでオマエも参戦しろ! このロリ、今日も快調にトバしてるぞ! 好きにさせるな。


「あーはいはい。売ってれば買って帰ってやるよ」

「ときに若造」

「なんだよ」

「お礼と言っては何だが、ひとつ質問してやるとしよう」

「もったいぶんなよな。はいはい、シツモンナンナンデスカー」


「お主、妹をどう思ってるんじゃ?」

「はい?」

「しゃーないヤツじゃのう、言ってるイミが分かんないか」


 やれやれ。などと、ロリはロリのクセに、欧米人風に両手の平を上げて肩をすくめた。


「お前にとって、妹は妹なのか? 妹の方は妹なのか?」


 言ってるイミがゼンゼン分かんねー。


「あのなー。なぞなぞか? それとも禅問答か?」

「実に単純な問題よ。お前の特別は、相手の抱く特別とイコールなのか、違うのか。いっぺん考えてみろや。そーゆーておるのだ、このノータリン」



 んなコト言われても。



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