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【完結御礼】新説信長公記! ― シスコンお兄ちゃんが大好きなんだけど、モテすぎだしハラスメントな信長さまだから、織田家滅亡のお手伝いをするね! ―  作者: 香坂くら
第三章 京都上洛戦(新婚旅行したいから)

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18話 宴会まだ続くんだ?


 料理長ご自慢のフルコースメニュー! だそうだ。丹羽くん、そーだな? キミが責任取り給えよ?


 肴の味噌焼き。味噌味の煮物。焼き味噌。香の物。湯漬け。最後に干し柿。ホントに無難だな。


 んーボクは美味いと思ったが、義昭公(しょーぐん)と、フジ……えーと、何とかオジサンは、「オーノー」としかめっ面だった。だったら、いっそサイ〇リアのミックスグルメでも良かったんじゃね? 安いし美味いぜ?


 スックと立ち上がった藤……孝さんだっけが、「ご膳のお礼に余興をひとつ」と一礼した。そして他の家来に竹と藁で出来たマネキンを五体、設置させた。


 ちょっとそれ、面白いんだろーな?


 光っちゃんこと、光秀オバサンが解説する。


塚原(つかはら)卜全(ぼくぜん)直伝の演武を披露されます」


 藤孝さんは、ジリ……と藁の前に立ち、柄に手を当てた。と、思ったら居合とともに刀を抜き放ち、ふたたび鞘に収める。一瞬の出来事だ。既に藁がふたつに分かれている。さらに次の瞬間には、すぐ隣りの人形が斬られていた。


 まるで刀を回すようなダンスを見せられながら、人形がタテ・ヨコに離れ離れになる様を眺める。技というより自然体な流動(リズム)。鞘に刀が戻るたびに一体一体が処理され、我に返ると五体全部が片付いていた。


「では、次はアカペラで米津を熱唱……」

「それは要らないそうです」


 義昭将軍の見事な指示大書に、藤孝さんは渋々自席に戻った。


 うん。たしかに要らないね。

 結構アンタ目立ちたがり屋だな、藤孝さんよ。でも刀の舞はよかった。年の瀬の忘年会に呼んでやるとしよう。


 今度は光秀オバサンが立ち上がった。舞台上の藁と竹が片付けられ、代わりに黒い丸を描いた菱形の板が二枚、縛られたサルのアタマの上に器用に載せられている。


「では、次に短筒の演武を披露します!」

「処刑か! ククク。サルの死にざまが見ものじゃ」

「帰蝶ちゃん、アホなの?」

「はー? アホ言う方がアホなんじゃ」


 コラ、市と帰蝶。二人ともケンカすんな。

 でさ? さっきっから室内で物騒なかくし芸してっけど、(かいじょう)側の許可取ってんの? お坊さんに叱られても知んないよ?


 ――バンッ!


 光秀オバサンは、腰にやるとサッと何かを取り出し、放った。

 銃か? 銃だ!


「すんげー! 黒い部分に当たった!」

「あーあ。外れた。サルのヤツ、死んでない」

「違うって! 帰蝶ちゃんのアホっ」


 ボクは、光秀オバサンの腕前に感動し、短筒(じゅう)を見せてもらった。

 戸惑ったオバサンだったが、照れたように丁寧に解説してくれた。


「短筒というのは長筒を短くして持ち運びやすくし、自由な姿勢で使えるようにした簡易銃です。ただし欠点もあります。銃身が短くなったため飛距離も延びません。また必然的に命中精度も落ちます」


「へぇ。母星のレーザー銃より重いな。当たり前か」


 バーン。ヒュ。バフッ。


 ちょ、待て!

 ボクの目の前を何かが通ったよ? ヒュンって言ったよ?


「恐れながら、手っ取り早く、続いて長筒の演武を披露しました!」


 縄を解かれた藤吉郎(サル)が手にしていたもう一枚の板のど真ん中も、弾が貫通していた。的は動いていたのに?! サルはちびった様子で舞台上でオロオロしている。


「あの子だよ、お兄ちゃん!」


 部屋の最も手前、末席に居たイケメン少年が手慣れた手つきで弾込めし、素早く構えて次弾を放った。


 バンッ。ビシッ。


 ほーっ、躊躇ないね―。


「お兄ちゃん! スゴイよー! 今度は帰蝶ちゃんのお箸に当たってるよっ? それも一発で二本とも折ってる!!」

「また外したのう。ワシのヒタイはココじゃ、ココ!」

「やっぱ帰蝶ちゃん、アホっぽいー。でも愉快ーっ」


 こっ、これは……。

 なかなか面白いかも。市も喜んでるしなぁ。……部屋の中がずいぶん硝煙くさいけど。


「義昭公。明智殿とそこの少年と。京の都に一緒に同行させたいのですが? もちろん費用は全部こっちで面倒みます」


 義昭公に頼み事をするボク。我ながら前代未聞だ。そしたら義昭公は筆を走らせた。……いい加減、口使えよ。


 いちいち藤孝さんが読み上げる。


「信長の元で働くのも当方で働くのも同じ事。なんならずっと出向してても良いぞ。それより上洛はいつになるのか?」


「上洛?」

「京の都にはいつ着けるのか? と聞いてるんですよ、旦那」


 サルに日本語を教えてもらうボク。


「宇宙船なら瞬時に?」

「マジメに答えた方がいいですよ? 妙な期待しちゃいますですよ?」

「あーそれじゃ、一ヶ月? で行けますかね?」


 とりあえず適当に言っとく。京の都って近かったっけ?


 将軍さんを見送った後、光秀オバサンにお辞儀をされた。こっちも礼を返した。チラリと長筒の少年に目をやる。色目を使っている帰蝶を一顧だにしてない。むしろ長筒に触れようとしている市に、鋭く注意の目を向けている。


「……あのイケメン小僧はアンタの子?」

「いいえー。。雑賀の荘で知り合いました。まだまだ子供なのに、鉄砲の名手なんですよ?」

「あのさー、うち給料いいからさ。……気にすんなよ?」

「えー、まー、将軍家って意外に給料しみったれてましたんで、気にしないことにしますー」


 帰蝶が走り寄って来た。ボクに、じゃなくって光秀オバサンに用らしい。


「のう! 久しぶりじゃったなぁ。えらく美人になりおって、まあ。こんなことならもっと早く手を付けといたら良かったわい!」

「……怖い」


 何がどう「怖い」んだか。いろいろ思う所がありそうだ。

 このオバサンは美濃国出身らしいから、同郷の帰蝶と知り合いだったんだろうと安易に想像がつくが、それ以上の詮索は今後ゆっくりと行っていくとしよう。


 まぁ、今日は気晴らしにはなったか。

 やれやれ。


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