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【完結御礼】新説信長公記! ― シスコンお兄ちゃんが大好きなんだけど、モテすぎだしハラスメントな信長さまだから、織田家滅亡のお手伝いをするね! ―  作者: 香坂くら
第十二章(最終章) 本能寺は大火で 

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122話 本能寺は大火で⑥


 ああ。


 まだデコと頬のあたりがカッカする。

 最近キレやすいのは自分でも分かってんだがな。


 ……もう少しで女の子に手を挙げるところだったし。

 ヤベえわ。

 でもま、何とかこらえたぜ。


「大殿さま。件の本願寺、いかにいたしましょう?」


 蘭丸、か。


 男にしとくのがもったいほどカワイイ(ツラ)したヤツ。今のオレの秘書兼雑談相手、と言ったところか。

 何故せっかくだから、と女の子をそばに置いとかないのか、と問われれば正直悩むところだが、そんな気が起きんのだとしか答えられん。くれぐれも身体に異状を感じるとか、歳だから、なんかじゃないからな。なお男の娘に目覚めたわけでも無いのであしからず。


「……うむ」


 まずは一呼吸置き。とりあえず、スマイリースマイリー……と。


「……そうさな。一切の武装放棄と僧以外の立入禁止を厳守するのなら、石山の地は安堵すると伝えろ。もちろん新規僧の入属は認めない。あと、如春尼以下、女たちはすべて京に別居を構えろと」


 ――本願寺か。

 連中が簡単に折れないのは想像がつく。


 けれども毛利も、公卿どもも、すでにヤツらを見限っている。

 これ以上の愚図りは無意味だと重々理解もしてるだろうし、後はどんな形で幕引きしようかと悩んでいるところだろ。

 これで長年の気遣いもようやくカタがつくってもんだ。


「大坂を得ないのですか?」


 ……あれ? 蘭丸くんまだ居たの? 命令が理解できなかったんだね?


「あのな。昨日のヤツらとの遣り取り、見てたろ? ヤツらはたぶん、近々最後の一戦を挑んでくるか、一斉に逃げ散るだろうよ?」

「主戦論者を封じ込めるねらいでございますか?」

「まぁ、な。『飲めないけども、信長さんは大きな譲歩をしてくれてる』って思わすんだよ。でないと家中に戦いたがりのお仲間がいる手前、肩ひじ張り続けるしか無いだろ? 実際はそろそろ諦めなきゃって、内心もう分かってんだって。てワケで望外な慈悲を示しときゃ、後は勝手に内部分裂してくれっだろが?」


 蘭丸の目がウルウルし始めた。……オレ、何かマズイこと言った?


「大殿ーッ。深いご明察、誠に痛み入りますう」


 ……オマエさ。

 いいヤツなんだけど、いっつも大袈裟なんだよね。

 でもオマエのおかげでイラ立ちが薄らいだよ。


「父上」

「おう信忠か。今度は何だ?」


 オレの子だ。

 名目上はコイツに家督を譲っている。

 元服も終え、もう立派な好青年だ。お父さんは嬉しいぞ。


 今日は四国征伐の準備のため岐阜から京に向かう途中、安土(ここ)に寄っているのだ。



帰蝶()さまが明智どのとともに、安土(こちら)に伺候したいと」


「帰蝶……と明智?」


 あいつらは京都勤務を命じてたはずだけど、なんだ、職場放棄か?


 それとも。


「いつ着きそうだ?」

「一刻後」


「な、なんだと? そんなに早く?」

 

 安土の盂蘭盆会を見に来るってわけじゃねーんだろ。


「承知した。正門開けて盛大に迎えてやれ。プロジェクションマッピングをいつも以上に派手にかましたれ。街中の者たちにも提灯とペンライト持たせてな」

「は、ははっ」


「待て。集まってくれた子供たち全員にお礼の菓子を配ってやれ。あと、民らには酒肴を。食糧蔵が空っぽになってもいい。ありったけふるまってやれ」


「ははあッ!」



  ◇    ◇ ― ◆◆ ―  ◇     ◇



「ノブよ。一ヶ月ぶりじゃな。寂しかったぞ。おかげで夜な夜な身体がほてって仕方なかったわい」

「このお話、良い子も読んでんだ。誤解を生む発言ヤメろ」

「だってぇ、儂はこー見えてもお前さんのヨメさんなんじゃぞ」


 相変わらずで何よりだ。

 まあ、カワイイのは認めるしな。


 しかし。いい加減にしろ。


「ところでよ、あのド派手な演出」

「決まっとる。エレクトリカルパレードじゃ? ……それが何か?」


 それが何か、じゃねぇ。


 そんなのは一目で理解したわいっ。


 安土の大通りを色とりどりのイルミネーションデコのキャラクターカーで練り歩きやがって。()()大テーマパーク定評イベントそのまんまの完全パクリだろーが。


 注)確認のところ、キャラクターは、すべてオリジナルデザインでした。また、正確には電飾カーではなく、色のついた和紙で作った提灯を大量にぶら下げた、改造山車(だし)でした。あしからず。


 オレの、安土城をスクリーンにしたプロジェクションマッピング。

 出迎えのサプライズだったはずが、帳消しどころかオイシイところ全部持ってかれたじゃねーか。

 

「しかし近江一帯は実に平和じゃのう。それに比べて京難路はなかなか騒がしいぞ」


「聞いてくれ。十日ほど前だがな、ほら信濃の佐久で浅間嶽が噴火しただろ? で、スケカセ師匠宛てに義援物資を送ってやったんだ。そしたら昨日、連絡して来やがってな。三条姫とそのお仲間らがオレに丁寧に頭を下げて来やがったんだ」


「ほほう?」

「でな、示し合わせてたんだな、本願寺の如春尼が裏で繋がってて。WEB越しとは言え、久々の対面だったのか、姉妹泣いて喜んでたんだよ」


「ふーむ。それが儂が振った話とどう関わって来るんじゃ?」


 気の短いロリだな。

 てか胡坐組むな、厭でもそっちに目が行くだろが。(むろん厭……ではない)


「本願寺顕如だよ。嫁の如春尼に引っ張って来られて顔出ししやがったから、ちょうどいい機会だと思って最後通告してやったんだ。ギャーギャー怒鳴りやがったが、どーも演技臭かったな」


「本願寺は早晩、降伏すると申すか?」

「ついでに武田もな」


「なっ。そう、なのか」


 見えてる、見えてるって。

 ……良かった、穿いてくれてて。


「如春尼がな、最後にこう言ったんだ。『あんさんが、【天子さまは蔑ろにせん】言わはるんやったら、わたしらはどないなとしてもええんや』ってな」


 かたわらに侍る明智の光秀(みっちゃん)を伺い見た帰蝶の目は素直な喜びではなく、とまどいを含ませていた。



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