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【完結御礼】新説信長公記! ― シスコンお兄ちゃんが大好きなんだけど、モテすぎだしハラスメントな信長さまだから、織田家滅亡のお手伝いをするね! ―  作者: 香坂くら
第九章 長篠攻防戦

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106話 長篠攻防戦⑤

長篠編佳境です。武田の三条姫隊を織田徳川陣に突入させました。


 冒頭は最近お約束の西暦……。

 もう止めておく。


 上杉および武田統合軍は、三河国設楽ケ原において、織田徳川軍と激突した。


 この決戦を主導したのは織田信長。


 彼のあざとい情報戦略によるものであった。

 上杉謙信ことスケルトンカセットと、その正妻三条ちゃんは、まんまと彼の流した偽情報に踊らされた結果となった。


 そしていま、山県昌景はじめ名だたる武田の精鋭らが、その、織田信長が築いた【長城】の内側で、銃撃戦を続けている。死の瀬戸際に追い込まれ、必死の抵抗を見せている。


「三条。どうだ、準備は?」

『悪いけど騎馬は役に立たへんから置いてく。信長軍(あいつら)の鉄砲の的になるだけやし。出せる限りの装甲車とトラックを使おって思てる。人数は最小限に絞ってな』


「にしても、結構時間喰ってんな?」

『……あんさん、そろそろ通信切ってええ? この会話、信長()に傍受されてるかも知れんねんで?』

「分かっててわざと聞いてんだ。【大事なモン】積んでるからだろーが、ああ?」

『……ま、そーや』


「根性だせや。ヤツラを全員残らず助け出すのがお前の役目だ」

『了解』


 いったん通話を絶ったスケカセは再びスイッチを入れ、


「信長。テメエ、必ず警察に突き出してやるからな。あの【ロケットランチャー】、オレはしっかり見届けたからな」


 言い放ち、叩きつけるようにして切った。


 イカスルメル星人は他星において、【必要かつ有意義】と判断された母星の文明の利器を持ち込むことを認められている。なぜなら当該星で彼らの人権と財産を護り、開拓先での絶対的優位性を保つことを第一の信条にしているからである。

 法令上、たとえばヘリや飛行機、車や通信機器、その他生活用品に至るまで、金さえ払えば他星でなに不自由無く生活出来る権利が容認されているのである。


 しかしここで但し書きがつく。

 ――但し、一般的な市場での取引ができない殺傷能力が認められる武器や兵器、たとえば銃や戦闘機、戦車、戦闘用ヘリ、軍艦、さらには手榴弾、ロケットランチャー、機関銃といった類のものは【護身用以外】原則許可されていない。


 故に先日のヘリには機関銃が外されていたし、げんにスケカセの眼下に展開する装甲車も、兵装品をすべて外した状態で使用する事で法に触れずに済んでいる。


 なお、ちなみに狙撃銃や拳銃は【猟銃として登録すれば合法】となっている。


「……その手で持ち込みやがったのか……? にしては、量が多すぎる」


 スケカセのひそめた眉が左右非対称に伸びた。


「……【ヤツ】か、ひょっとして……。アイツしかいないか……!」


 母星で最近、ロケットランチャーを使用した犯罪やテロが横行していると社会問題になっていた。第三国が紛争地域に密輸していた物が、大規模なマフィア組織によって大量に横流しされ地下流通したからだと報道していた。


「織田に肩入れしているヤクザ……。と言えば、間違いなくヤツの仕業だ」



 いつの間にか三条ちゃんがそばに戻って来ていた。


「……お。準備完了か」


「うん。ほんじゃあ、行ってくるなー」


 近所のスーパーにでも買い物に行くような軽い口調だが、その装いは赤い胴巻き(あくまで耐銃弾セラミック板製)に真紅の鉄兜(あくまで繊維耐強化プラスチック製)と、大層な重装備だ。


「母上、ご武運を!」


 勝頼が歩み寄った。


「勝頼! 謙信! 戻るときはあんたらの「大」と「毘」の旗を目指すからな! それまでしっかり大地に掲げといてや!」


 右手を出した三条ちゃんに、ふたりが両手を重ねる。彼女が左手をのせる。


「作戦の成功を!」

「ヨッシャアー!」


最後にハイタッチを決めて、装甲車へ。


「三条近衛隊出撃! 救出部隊全隊、わたしに続けい!!」


 装甲車の上部から号令した三条ちゃんは、助手席についた。


 真っ赤な狼煙が上がるのと同時に、彼女の搭乗する「日の丸」を掲げた赤色装甲車を軸に、直属隊二十台の装甲車両が急発進し、連吾川を渡って行った。

 続いて総数約四十台の装甲車、大型トラックが爆音をあげてその背を追う。


 猪突猛進の三条隊は、中央の防壁(ブロック)を突き倒してなおも前進を続ける。地響きと破壊音が周囲に起こり、銃撃が一気に静まり騒然となった。


 不鮮明ながらドローンから送られてくる映像に、かぶりつきで凝視する謙信(スケカセ)だったが、彼の不安は杞憂であった。


 見事にブロック壁は破壊され、赤い装甲車部隊が信長陣に斬り込んでいる。

 山県隊の一歩手前あたりを横切るような形勢を整えていた。


 彼女の指揮で進軍した大部隊は、轟音と共に障害となる鉄条網が踏み荒らし、織田徳川を分断するばかりか、後方トラック部隊の侵入をも成功させている!


「父上。侵入経路の路面は特に問題なかったようですね」

「まぁ、な。たしかに三条の言う通りだった。斜面が急だから泥が堆積してなかったんだろ。よく観察してやがった。次は先手を打てるかどうか、だがな。……ん?」


 ブレブレだが、画面端に西洋の鎧を着た変わり者が映り込んでいる。

 三条ちゃんの装甲車に向かって何か叫んでいるようす。


「勝頼! 音量上げろ!」

「は、はいっ! ……っく、これが限界です!」


 当世具足でなく南蛮鎧を着た優男――。


『何、せっかく人の作ったゲイジュツ的な陣を潰してんだ! アホっ! 後世で世界遺産になるかも知れんのに!』


「な、ナニ言ってんだ、コノヤロー? ……。――あッ!」


 スケカセは我を忘れて画面に怒鳴った。


「三条! ソイツの名前を聞け―っ! 周りを見ろっ! 木瓜の旗が無いかっ?」


 だが三条ちゃんは、色々な突っ込みどころをガチスルーして、まずこう尋ねた。


『ダレやぁ、アンタ! ヘンタイ仮面かーっ? というか、ウチの大事なヘリを落としたん、あんたか!?』

『ああ、オレだ。オレがやった。天誅を喰らわせてやったんだ。へっ、ざまあ!』


 ……間違いない。

 この声。この態度。この発想。


「父上、我々はこんな人と戦ってたんですか?」

「ああ。そうだ」


 スケカセは確信した。恐らくは勝頼も。


「……織田信長。堂々と敵前に現れやがって」

「母上に言って叩きのめしてもらいましょう」


「……いや。まずは馬場ら(味方)の救出が最優先だ」


 低く唸ったスケカセの声は微かに震えていた。


 

香坂くらです。「信長」終わらせるつもりでしたが未だ続けています。終わる終わる詐欺みたいですが何等か楽しんで頂ければ至上の悦びになります。ご支援のほどよろしくお願いいたします。

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