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【完結御礼】新説信長公記! ― シスコンお兄ちゃんが大好きなんだけど、モテすぎだしハラスメントな信長さまだから、織田家滅亡のお手伝いをするね! ―  作者: 香坂くら
第九章 長篠攻防戦

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102話 長篠攻防戦①


 それは、天正三年五月十六日朝の事――。

 ……って!!

 何で天正なんじゃい!!

 いっそ西暦一五七五年でいいだろ!


 ――とりあえず戦場だが、本陣でこの日オレ嫁の三条と【信長の野心】にふけっていると、オレの(しもべ)がなにやらゴチャゴチャ。ご注進だそうだ。


上杉謙信(おやかた)さま。曲者を捕らえました」


 ウザッ。曲者? どーでもいーわ、そんなもん。

 と言いたいところだが、これ以上僕(かしん)に辞められても困る。しかも今は敵地で戦の真っ最中だしな。

 しかたなく三条にゲームの進行を任せ、その男を詮議する事にした。


 衛兵らに囲まれ、二重三重の縄で乱暴に縛られている男。ご丁寧にさるぐつわまでかまされている。

 浜松(いえやす)ならさぞ悦ぶだろうが、あの男のドM趣向なぞ、それこそどうでもいいわ。


 で曲者とやら。

 見れば、いかにも農民ふぜいのなりをしている。


「ただの農民じゃねーのか?」

「いえ。こ奴、夜中に関わらず街道を全力で走っておりまして、不審に思って声をかけると慌てて逃げだしました。とんでもなく脚が速く、捕まえるのに苦労いたしました」

「ほう」


 じゃ、脚の速い農民じゃねーの?

 オレ頭の中を読み取ったのか、衛兵が続ける。


「調べてみましたら、このようなものが…」


 それは、一枚の薄汚れた紙だった。

 内容は、


「奥平くん! 遅くなってすまん! あともう二、三日したら、徳川くんと助けに行くから。もう少し

頑張ってね!! 信長より」


 これは、(のぶなが)の字だ。

 特に末尾のサイン、これは将来有名になった時のことを考え、一緒に練習した、あのサインだ。明らかに特徴が出ている。

 庭に降りたオレは、男のさるぐつわを外してやる。


「教えろ。織田信長は北陸に向かわず、三河に来ているのか?」

「知らぬ」

「信長の有する兵の数は?」

「存じぬ」

「何かこう、変わった物を持ちこんでなかっか? たとえば筒状の?」

「見ませぬ」

「どこまで来ている?」

「ご自分でお調べください」


 なんか、イラッとしてきた。いくら心優しいオレでも堪忍袋の緒が切れちゃうぜ?

 オレがもしオマエなら喜んでベラベラしゃべ……らねーか。

 うーむ……コイツの態度はもっともか。なんせオレは敵だからな。

 しかし、利用するなら……。いい事を思いついた。


「どうかな? 長篠城の連中がなかなか降伏しないんでな。『信長は来ない。見捨てられたので降伏しょう』と言ってくれんか? 恩賞ははずむぞ」

「わかりました。城の前まで連れてってください……」


 バカかコイツ。


「お前さー、よく考えろよ。誘導尋問に引っかかってんじゃねーよ。これじゃ『信長さまは三河に来ているぞー』って白状したのと一緒じゃねーか」

「…………あ」

「あ、じゃねーよ。……で城の前まで来てどーするつもりだった? 言ってみ?」


 答えない。

 アパパパ。


「叫ぶんだよ、城兵(なかま)に。助けるためにさ? 何て叫ぶか、よく考えてな? いーか? 籠城しているオメーの仲間は、もう随分ハラをすかしてはずだ。でもガマンして頑張ってんだ。助けるために何て叫べばいいのか、分かってんだろーな? 念押しするぞ? オレは、お前の態度で信長がこちらに向かっているのを知った。だから大々的に罠を仕掛ける。……つまりどちらにせよ、ヤツはここにたどり着けない」

「ご厚情に感謝いたす」


 ヨッシャーーー!!

 クク、長篠が落ちたと知ったときの、信長の顔が見ものだな。


 城前まで行くと、その男は喉をつぶさんばかりに叫び始めた。


「城内の者たち!! それがし、鳥居(とりい)強右衛門(すねえもん)である!」


 モブにも名前があるんだな。

 城内からざわつきが漏れ始めた。塀から覗く顔も見える。

 しめしめ。非常によろしい。


「織田の援軍は!」

「はいはい。どうぞ〜〜」


 辺りが、シンとなる。はいはい、チューモーク。

 本当によろしい。


「織田軍はぁ、二、三日もすれば、援軍に駆け付けるぞー! 徳川軍も一緒だーっ! みんな頑張れーっ」


「うん、うん。そうだな、確かにそうだ……。えっ? えーっ!!」


 スネかドラか知らんが、男の必死の声に周囲は水を打ったような静けさになった。

 って、違うだ・ろ・う・がっ!

 そーじゃねぇってばよォォ!


「みんな! 耐えよ! お味方の勝利は目前だ!」


だから、ちっがーうー!


「そいつを黙らせろ!!」


 スネオ? のヤツはモミくゃにされながら消えていった。

 この状況で、無いわー、無いわー!


 あきれていると長篠城から呼応が。


「我は奥平貞昌であーる! あっぱれ命がけの伝令、しかと受け取った! 我らの勝利は、其方のおかげぞ! 皆の者、讃えよ! 鬨の声をあげよ!!」


 鬨の声は地響きとなり、四方に伝播した。なんて感動。なんてドラマチック。最終回に主人公が最後の力を振り絞って強敵を粉砕したみたいな? てことはなんだ? アイツ、モブどころか今回の主人公か? あーそーなのか?

 反対にオレの軍、みな首をうなだれてしまってる。


 これは、うーむ。

 この展開……オレ、もしかして悪役? 最低の人? 死ねばいいのに的な?


「これでもかという人数を投じて攻め殺せ。城中全員もれなく」

「……は。承知」


 承知と言いつつ、グズっている。


「なんだ?」

「先程、あの者は舌を噛みきり、自害しました」

「そうか。素っ裸にして【ばか】と書いた札を首からぶら下げて川にでも流しとけ」

「は?」

「冗談だよ。……ヤツらの城門前に晒しておけ。あとは捨て置け。監視など要らん。ちゃんと武具をつけといてやるんだぞ」


 スネちゃま。

 捕まえられた時、覚悟してたんだろう。城兵(ヤツら)に引き取らせてやろう。


 不惜身命。

 気分の悪い言葉だ。こうも目の当たりにすると、吐き気を催さずにはいられない。


 気分転換が必要だな。三条と遊ぶとしよう。


 本陣(てら)に戻ると、【信長の野心】のエンディングロールが流れている。


「三条ちゃん、統一しちったの?」


 小さく頷く、三条。

そっかー。天下統一したんだー。

 ふたりでの協力プレイで序盤の山は超えていたが、にしても早い。早すぎる。


「初めから始める?」


 オレ嫁な三条ちゃんは、二度頷いてくれる。

 彼女、オレが武田信玄してた頃に朝廷から嫁いできた娘なのだが。

 うーむ、まだ十三歳なんだよなー。将来が楽しみなんだけどなー。


 こうしてゲームやらせてみても、未知の物体に慣れるどころか「あっ」という間にクリアするし、イカスルメル星製の他の物品もすぐに使いこなすし。


 ロングストレートな黒髪に、大きな瞳を向けてきて……。

 あぁホント、将来が楽しみだぜ。


城攻めは、明日またがんばろう……。


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