冬の日の向日葵の微笑みは・・・ (4)左手のプロポーズ
香月よう子side
本編「未来に繋がる絆」(https://ncode.syosetu.com/n3827eo/)の
第114話「幸せのパンケーキ」(https://ncode.syosetu.com/n3827eo/114/)と併せてご覧下さい。
お父さん
お母さん
詩織はお医者さまにならなくてはいけないの?
詩織は……
本当は……
……………・・・
「詩織ちゃん……!」
詩織がいつもの夢から目覚めると、傍らで亮介が心配そうに詩織を見つめていた。
「ここは……」
「救急病院だよ」
亮介が呟く。
詩織は四人部屋の白い病室の中で、ベッドの上にいた。
「軽い脱水症状だそうだ。今、投薬中の点滴が終われば帰れるよ」
詩織の細い左腕には、大きな点滴針が刺さっている。
「亮介さん……。どうしてここに……?」
「宇野がLINEくれたんだよ。君がバイト中に倒れて、この病院に搬送されたって。それで仕事はキリのいいところで半休にして駆け付けた」
「すみません……」
「詩織ちゃん。だから言っていただろう。もっと食べて、もっと休むようにって。宇野から聞いたよ。あの火事以来、バイトのシフト増やしたんだって?」
「はい……」
「それでなくても君はいっぱいいっぱい働いて、大学の勉強も真面目にやっているじゃないか。無理がたたったんだ。倒れても当然だよ」
「すみません……」
詩織は、か細い声で涙目になっている。
自分は頑張らなくてはいけない。
奨学金を借りているが、学費も生活費も全て自分の肩にかかっている。
でも、大学で勉強して将来、社会福祉士の「心理カウンセラー」になる。
その夢を叶える為だ。
自分は頑張らなくてはいけない。
鳴治館大学・福祉学部受験を決め、入学以来ずっと今まで、そう自分に言い聞かせて必死に頑張ってきた。
しかし、入学して一年半。その見えない無理、綻びが出てきたのかもしれない。
詩織は途方に暮れる想いだった。
家もなくし、体も壊し、これからどうやって生きて行けばいいのか……
「詩織ちゃん」
その時だった。
亮介が、ベッドの上の詩織の左手を突然、その大きな節太い両手で握り締めた。
「俺と結婚を前提に正式につきあってくれ」
その瞬間、詩織は目を見開き、固まった。
亮介は、バクバク鳴る心臓を冷静に沈めながら言った。
「君はまだ大学二年生で、結婚なんて考えたこともないと思う。でも、俺はもう君以外との女性とのつきあいは考えられない。もし、この先も俺とつきあってくれるのなら、結婚を前提として考えて欲しい」
亮介と詩織はただ見つめ合う。
「返事は……今すぐでなくていいんだ。まずは、体を治して欲しい」
亮介はそれ以上何も言わなかった。
ただ、黙ってぎゅっと詩織の左手を握り締めた。
詩織は亮介の温かい手の温もりを感じながら、彼の誠実な瞳をいつまでも見つめ返していた。




