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冬の日の向日葵の微笑みは・・・ (3)誘惑の共同生活

香月よう子side

 それから。

 亮介と詩織の「共同生活」が始まった。


 火事の翌日には亮介はなけなしの貯金をはたき、詩織の生活に必要なものは最低限買い揃え、学業に必須のノートパソコンも、詩織が使っていたものと同じ機種を詩織の為に買い与えた。


 生活ルールも話し合った。


 まず、お互いの仕事と大学に通う生活スタイルには、干渉しない。


 亮介のマンションは、六畳のリビングと四畳半の1LDK。四畳半の寝室を詩織が使い、リビングで亮介が寝泊りする。


 トイレ・風呂・洗面所・洗濯機は自由に使う。


 詩織の洗濯物は寝室に部屋干しすることにし、その為にハンガーを吊り下げられるよう、壁にロープも通した。


 リビングにあるTV・オーディオ機器なども好きに使うよう亮介は言った。リビングも亮介が居るとは言え、好きなように過ごしてくれとも亮介は言った。


 しかし、家にいる時はほとんど真面目に勉強している詩織は、TVを観ることはあまりなく、その代わりにダイニングテーブルを勉強机代わりに貸してもらうことにした。

 それは詩織にとって、非常に有難いことだった。


 生活費を全て亮介が負担することには詩織がなかなか納得しなったが、亮介が説得した。

 判子も通帳もなく、当座の資金すら心許なかった詩織は、結局のところ亮介の厚意に甘えるしかなかった。


 お互い、入浴中など必要以上に緊張し、又、どうしても自分の私生活を見られることには気を遣った。


 大人の男女が一つ屋根の下に暮らすのだから、それはかなりの覚悟がいった。


 しかし、そんな緊張を強いられる生活の中でも詩織は、亮介の為に必ず手作りの朝食と夕食を用意した。

 そんな気遣いは要らないと亮介は言ったが、朝、目が醒めると必ず朝食が用意されており、詩織のバイトの帰宅が早い日は夕食も詩織が作った。


 詩織は亮介のおかげで、変わらず大学・バイトに通いながら、新しい引っ越し先を見つけ始めることができた。


 しかし、安価で良い物件は当然なかなか見つからない。

 前のアパートは築40年以上・駅から徒歩約十八分ということもあり、月四万四千円だったという。詩織にはそれ以上の家賃は出せないとのことだが、きょうびそんな良心的な物件は滅多にない。

 しかし亮介は、詩織に焦らないようにと根気よく説得した。


 詩織との共同生活。

 それは、時に目の前にいる詩織に無意識に手を触れたくなる。

 そんな瞬間が正直、多々ある。


 しかし、亮介は必死にその誘惑にも堪えた。


 思えば、相手が詩織だからこそできる忍耐であるのかもしれなかった。


 そして。

 ようやく徐々に詩織と二人の生活にも自然と慣れて、その生活が心地良いものになり始めていた。


「新婚生活」て……こんな感じなのかな。


 そんなことさえ思い浮かび始めていたその頃。


 それは、起こった────── 




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