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冬の日の向日葵の微笑みは・・・ (2)決意する秋の朝

 あれ……


 何かいい匂いにつられて、思わず亮介は鼻をかいだ。


「あ。亮介さん。おはようございます」


 詩織の言葉に亮介はやっと目を醒ました。

 リビングのソファで一晩を明かした亮介は、昨日の騒動もあり、さすがに怠さを感じている。


 しかし。


「わ! 美味そう」


 ダイニングテーブルの上には、こんがりチーズが程よく焼けたピザトーストにふんわりスクランブルエッグ、食べやすく綺麗にカットされた林檎とトマトのサラダ、オニオンスープにミルクと珈琲があった。


「すみません。冷蔵庫覗いて、お台所借りました。こんなものしか作れなくて……」

「全然こんなものじゃないよ! 大体、あの冷蔵庫の中身でよくこれだけ作れたね」

 自炊などほとんどしない亮介の冷蔵庫の中には、ろくな材料は入ってなかったはずだ。


「冷蔵庫の残り物でお料理作るのは得意なんです。自炊は貧乏生活の基本ですから」

 恥ずかしそうに詩織は笑うが、それは美徳以外の何物でもないだろう。


「うん! 美味い!」


 亮介はご機嫌で詩織の作った朝食をあっという間に平らげていく。


「でも詩織ちゃん。自分の分は?」

 しかし、迂闊にもやっとその時、詩織はホットミルクを口にしているだけで、食事が一人前しか用意されていないことに亮介は気付いた。


「あ……。食欲が、なくて……」

 詩織は目を伏せた。


 自分のアパートが全焼したのだ。

 詩織の気持ちもわかる。しかし、食は生活の基本だ。


「こんな時だからこそ、しっかり食べないと」

 亮介は、珈琲を飲み干すと言った。


「幸い今日は俺も非番だから。今日中に最低限当座、君が必要な服や生活雑貨・日用品を揃えよう。新しい住居が見つかるまでここにいてくれて俺は全然構わないから。大学の本やテキスト、今後のことは君の友達や教授にも相談すればなんとかなるよ」


 詩織の目を見つめながら力強く、亮介は言った。


「亮介さん……」

 詩織の目がみるみるうちに潤んでいく。

 やがて、ぽつぽつりと詩織の瞳から雫が落ちた。


「詩織ちゃん。大丈夫! 頼りないだろうけど、俺が精一杯力になるから」


 可哀想に……

 よほど心細かったんだな……


 思わず詩織の背を撫でさすりながら、亮介は思う。


 俺は彼女より八歳も年上なんだ。

 俺がしっかり彼女を守らないと。


 本来、頼れる騎士(ナイト)タイプではない亮介なのだが、愛する詩織を前にすると、沸々と心に強い想いが沸き起こってくる。


 風が運ぶ秋の気配を感じながら決意する、そんな九月のある朝のことだった。





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