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初恋はスローモーション (2)恋の痛み
「申し訳ありませんが……」
お佳は丁寧に頭を下げる。
目の前の男子は思わず深いため息をついた。
「あの噂は本当なんだね」
不意に彼が忌々し気に呟いた。
「噂……?」
「君が高橋にゾッコンだって「デジャヴュ」内じゃ有名だよ」
お佳の顔色がさっと変わる。
「悪いことは言わない。高橋はやめた方がいい」
「は、離してください!」
お佳が思わず声をあげた。
彼がお佳の左腕を突然掴んだからだ。
「あいつには女子高生の彼女がいるんだぞ!」
お佳の動きが一瞬、固まった。
しかし、
「岡田さん!」
お佳は彼の右手を振り切り、後ろに駆け出していた。
彼女
彼女
彼女
考えたことがなかったわけではない。
けれど、大地はいつも充分過ぎる程、お佳に優しかった。
女子高生……
私より年下の彼女だなんて……!
全速力で走っていた脚をようやく止め、お佳は肩で息をした。
大地さん……
大地さん……
ああ……!
大粒の涙が溢れて落ちる。
私の……初恋……
なのにどうしてこんなに辛いんだろう……!
スローモーションでやっと訪れた初めての恋は、お佳には酷く苦かった。




