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42 別行動

「遅いぞグレン!」


「悪い! で、状況は?」


「村の東門と西門に向かって魔獣の群れが接近中だ。数は各門約35」


「35ずつ……なんとかなりそうですね」


「だな」


 担当者の話を聞いてアリサとそんな会話を交わす。

 元々俺とアリサだけで、俺が死に掛けたものの同時に100体の討伐に成功しているんだ。今回はまず総数の段階でその時の数を下回っていて、そして戦闘に参加する戦力もあの時より遥かに多い。

 当然防衛戦なので、魔獣を進ませない様に戦うという事になるので一体当たりの難易度は今までよりも高い訳だがそれでもなんとかなりそうだ。


 ……本当にその数で正解ならば。


 事前に数を聞いていて、全然違うじゃんというのが件の森の一件だった為、予め数を聞いても思わず疑ってしまう。

 ……だけどまあ、今回の場合直近に確認できた数がそれなのて多分正解で、システム上ある程度それは正確な筈だ。


 村の外周には現代の魔術、科学文明の結晶である探知結界が張り巡らされている。数年前にラーンでも導入した。

 この結界のおかげで今回の様に敵の接近ポイントや総数などを事前に把握し対策を組め、事前に決めたプランの元、迅速に人員を振り分けられる。


「東と西の両方に同じ位の数……ね」


 面倒臭そうにグレンはそう言ってから俺達に言う。


「まあ、そんな訳でこっからは別行動だ」


「……だな」


 このケースだと俺達のパーティーと一部の村の人間が西側。グレンを初めとする精鋭が東側担当という事になる。


「とりあえずクルージ。そっちは頼むわ……まあ魔獣に関して言えばお前らならなんの問題もねえと思うが……魔獣に関してはな」


 そう言ったグレンは俺から視線を外し……アリサとリーナに視線を向けて言う。


「とりあえず……クルージの事、頼むわ」


「はい、分かってます」


「了解っすよ」


 そう言って二人はグレンの言葉に頷く。

 頼む……か。

 それが何に関してなのかは、直接的に何も言わなくても流石に分かってる。

 ……あまり分かりたい事ではないのだけれど。


「グレンも気を付けてな」


「俺の心配はいらねえよ。東側は精鋭揃いだ。ただ魔獣だけを相手にしておきゃいいんなら、とりあえずは大丈夫だ」


 そう言ってグレンは一拍空けてから踵を返して俺達に言う。


「じゃあ後で、四人全員無事で再会できるのを祈ってる」


 そう言ってグレンは東門の守りの集合地点に向かって小走りで消えていく。


「……じゃあボク達も行きますか」


「そうっすね」


「ああ」


 俺達もいつまでもこうしてはいられない。

 ……さっさと持ち場に付きに行こう。

 鐘の担当者からは碌な視線を向けられてなかったとしても。

 向かった先で、アリサとリーナしか待ち望まれていなかったとしても。




「クルージさん」


 持ち場へと向かう中でアリサが話しかけてくる。


「どうした?」


「この先の魔獣との戦い、基本的には前にやったみたいに各々魔獣を対処しつつお互いにフォローを入れていく形になると思います」


「まあそうなるだろうな」


 もっともあの森でアリサと魔獣討伐をした時は、殆ど一方的に助けてもらっていたので頷いても良いのか良く分からなかったけど。

 それでもまあ、アリサの言う通りこの先の戦いは多分それでいい。

 そこにリーナのサポートが入る。対魔獣のフォーメーションとしてはそれがきっとベストな筈。

 ……でだ。


「そうなるだろうけど……どうした?」


「相手はたかが35体です。抜かれる抜かれないはともかく、クルージさんが危ないって事はそう無いと思います。だから一応……少しは周りに注意を向けてください」


「周りの連中守れるようにって話……じゃねえよな?」


「ええ。周りを注意してくださいって話です」


 そして一拍空けてからアリサは言う。


「だから……極力、ボクやリーナさんから離れない様にしてください」


「確かにそれが良いっすよ」


 リーナもアリサの言葉に頷く。


「流石にこういう大事な時に自分達の首を絞める様な真似はしないと思うっすけど……まあ、分かんないっすから。少なくとも私達の前では何もしないと思うっすよ」


「……分かった。肝に命じとく」


 答えながら思う。

 ……それの返答が本当に自然と出てくる辺り、俺は本当にどうして頑張ろうとしているのだろうかと。

 それでも頑張らないといけないと思う動機は一体何なのだろうかと。


 それが分からないまま、俺達は集合地点へと辿り着いた。

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