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ただキミを幸せにする為の物語 -SSランクの幸運スキルを持つ俺は、パーティーを追放されたのでSSランクの不幸少女と最強のパーティーを組みます-  作者: 山外大河
三章 人間という生き物の本質

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10 空き巣と強盗の話

 さて、そんなシドさん達との邂逅を終えた俺達は、軽く何かを食べながらグレンを待つことにした。

 よくよく考えれば寝起きでダッシュしてきたので朝食も食べておらず、そう考えればこの空時間はありがたかった。


 トーストにサラダ。スクランブルエッグとソーセージにコーヒーも付いてくる。ギルド朝の人気モーニングセット。ホテルかな?

 ……まあそれを食べながら、多分朝食は取ってきたらしくコーヒーとデザートを食べる二人に言う。


「しかしまあ、気のいい人達だったな」


「そうですね。後は……なんか謝られちゃいました。今までの事」


「……そうか」


 シドさんだけではなくアスカさんもルナさんも、アリサの事を気に掛けてくれてはいたのだろう。仮にそれまで何も出来なかったのだとしても、そう思ってくれていたのならありがたい話だとは思う。

 ……実際今に至っても、アリサの事を避ける連中はいる訳だから。


「まあ本当にアスカって人が引くくらい刀に目がない事以外はすっごい接しやすい人達っすね」


 うん、それ以外ね。

 あの札束出してくる感じは……正直ヤバいよね。


「あんまり話やすかったもんっすから、今度姉御に少し魔術教えてもらう約束取り付けたっすよ」


「姉御?」


「ルナさんの事です。なんだかリーナさんとルナさんが妙に意気投合しててそんな感じに……」


 ……それ短期間で馴染みすぎじゃないかな。

 ていうかなんだろう……また凄いリーナがパワーアップしそうな感じがする。平気で高等技能マスターして帰ってきそう。

 ……冗談抜きで追い抜かれるぞ。マズイマズイ。

 いや、まあそれだけ強くなってくれるのはいいことなんだけど……いいこと、なんだけど……なんだかなぁ。


 うん、忘れよう。今だけでも忘れよう。モーニングセットうまいなー。


 と、そんな事を考えていた時、ふと隣のテーブルから物騒な会話が聞こえてきた。


「そういやさ、昨日ウチ空き巣に入られてさー」


「え、マジで!?」


「いやーマジマジ。まあたいしたもの置いてなかったから被害は少ないから不幸中の幸いって奴なんだろうけど……」


「まあアレだ……ドンマイとしか言い様がないな」


 ……空き巣、ねぇ。

 なんか前にも少し考えた気がするけど、今までアリサはその辺大丈夫だったのだろうか?

 そう考えながらチラリとアリサの方に視線を向けると、アリサが深くため息を付いているのが分かった。

 そしてアリサは言う。


「空き巣って……タチが悪いですよね」


 ……全然大丈夫じゃなかった。

 完全に被害者のプロフェッショナルの目をしている。


「えーっと……アリサちゃん。大丈夫っすか?」


「……大丈夫ですよ。もう終わった事なんで」


 言いながらアリサはとても遠い目をする。

 ……多分それで相当キツい目にあったんだろうなと、想像する事が容易い。


 と、そこでお隣さんの会話が再び聞こえてくる。


「でもまあポジティブに行こうぜポジティブに。こう思うんだよ。まだ強盗じゃなかっただけマシだって」


「お、おう、そうだな。強盗だったら命まで危ないもんな……」


 ……なんだろう。またしても嫌な予感がする。

 またしてもアリサが強盗被害者プロフェッショナルな、そんな予感がビンビンにしやがる。

 と俺が……というより表情を見る感じリーナもそう思った所でアリサは言う。


「……せめて強盗なら良かったんですけどね」


「はいアリサストップ」


 先程の話から地続きに出て来た、あまりにもぶっとんだ発言に思わずそう静止を呼びかける。


「なんですか?」


「ごめん聞き間違いかな。ちょっと意味が分からねえ」


「ご、強盗だったら良かったってどういう事なんすか?」


 俺とリーナが全く意味が分からずそう尋ねると、どこか当たり前の事を言うようにアリサは言う。


「え、だって強盗なら返討ちにすればそれまでじゃないですか」


「「……」」


 なんかもう、ガチなプロフェッショナルだった。

 なんかこう……強いなぁ、アリサは。

 いや……これに限らず、そんな事ばかりだから強くなったのか。

 笑い事じゃねえな、本当に。

 そんな笑い事じゃない事が。冗談の様な事が、アリサにとっては日常だった。


 だけどこれからはそれを変えていける。


「……」


「……」


 そしてふとリーナと目が合い、俺達は静かに頷いた。

 そして思う。


 改めて頑張ろうと。





 そしてそんな風に雑談をしながら俺は朝食を終え、後はゆっくりと依頼人が。グレンが来るのを待つだけとなった。

 そして待っている間にリーナに聞く。


「そういやお前ラーンに滞在してる時、グレンと会ったりした?」


「うーん、どなたがグレンさんなのか分かんないんすよねー名前聞いて無いですし」


 そう言った後、リーナはそう言えばというようにハッとした表情を浮かべる。


「そう言えばさっきツンツン頭とか言ってましたね」


「言ってましたね」


「ツンツン頭……ああ、じゃああの人っすかね。疫病神の話が出た時に偶々居合わせたクルージさん位の人で、やたら不機嫌そうにしてた人がいたんすよ。多分その人っすね」


 と、リーナがそう言った時だった。


「あ、良かった此処にいましたか」


 受付嬢のお姉さんがそう言いながら俺達の方に歩み寄ってきた。


「ん? どうしたんすか?」


「まだ時間には早いですよね?」


「まあそうなんですけど、少し早めにグレンさんがいらっしゃったので。そういえばさっきこっちの方に皆さんが行ったのを見たのでまだいるかなーと」


 ……その不機嫌な面を浮かべていた親友がやって来た事を告げる為に。

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