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26 雨、逃げ込んだ先

 それから俺達は再びアリサを探し続けた。

 一応もう一度アリサの家に行ってみたが、まだアリサは帰宅していないみたいだった。

 それからも色々と探してはみたものの、やはり手掛かりゼロの探索は無謀だったのかもしれない。


 ……アリサの影も掴めやしない。


 掴めやしないまま。


「……あ」


「降って来やがったな」


 少し前から雲行きが怪しかったのだが、とうとう雨が降って来てしまった。

 正直それが小雨であるならば、適当にその辺で傘でも探して買ってアリサを探し続けてもよかったのだけれど……まあ、そうはいかなかった。


「うわ、結構強いなオイ!」


「これどっかで雨宿りした方がいいっすよ絶対!」


 リーナの言う通りだった。

 雨は一気に強さを増し、大袈裟かもしれないが風呂の水をひっくり返した様な状態になってしまっている。こんな状態では人探しなんてできたもんじゃない。

 そして少し運が悪かった。


「……どっか雨宿りったってお前……」


 近くに雨宿りが出来そうな建物が見当たらないのだ。

 雨宿りに使えそうな飲食店なんかもなく、雨避けがある建物もない。あるのは個人で所有している様な無断で入ってはいけない類の建物ばかり。


 最悪の状況である。


 ……だけど一つだけ、運が良かった事があった。

 それは少しだけ動けば雨宿りが出来そうな場所を俺が知っていたという事。


「……よし、着いて来いリーナ!」


「ど、どこか雨宿りできそうな所知ってるんすか!?」


「俺んちが近い!」


「マジっすか!?」


「マジだ!」


 マジである。

 とりあえず適当にアリサを探していた訳だが、そうする内に自宅付近にまで戻ってきていたのだ。

 本当に不幸中の幸いである。


「とにかく行くぞ! ほんと近いから!」


「はいっす!」


 そして俺達は全力で走り出した。

 リーナに言った通り、俺達が地点から自宅である賃貸アパートまではダッシュで一分も掛からない。

 当然辿りつく頃にはびしょ濡れにはなっているのだけれど。流石にそれは避けられないのだけれど。それでもとにかくこの雨が止むまで凌げるなら本当にラッキーだ。本当に何もないような所にいなくて良かった。


 そして本当にすぐにアパートの敷地内に辿りつく。


「先輩部屋何処っすか?」


「二階の一番奥!」


 そしてそんなやり取りをしながら、二階へと上がる階段にまで辿りつく。

 そこまで辿り着けば一応屋根がある訳で、そこで俺達はようやく一息つく事ができた。


「……ふぅ、マジで先輩んち近くてよかったっす。うわぁ、すんごいびしょびしょ」


「とりあえず部屋入ったらタオルは貸してやる」


「すみません。お願いするっすよ」


 ……そんなやり取りをしながら階段を上がっていく。

 ……というかもうタオル貸す云々で済む様な状態ではなくないだろうか? 服とかエグい事になってるし濡れた物着続けてたら風邪も引きそうだし。

 ああ、これシャワーとか貸した方がいい奴か。


「あととりあえず良かったらシャワー使うか? 着替えもサイズでかいだろうけど、渇くまで俺の貸してやるよ」


「あざっす! ……あ、でも覗かないでくださいよ」


「え? 覗かないけど」


「なんでそんな真顔で言うんすか。逆に少しショックなんですけど」


「いや、普通に真顔案件じゃね?」


 いや、ね。男は獣とはいうけれど、それやりだしたらもうそんな、獣とかそういう可愛い表現できないだろ。

 ただの犯罪者である。

 と、まあそんなやり取りをしながら階段を上がりきった所で……俺は思わず立ち止ってしまった。


 視界の先に、予想外の人物を見付けたのである。


「ん? どうしたっすか先輩。急に立ち止って」


 そしてリーナも階段を上りきり……そして。


「……あ」


 と、そんな声を出す。


 そして視界の先の人物はまず俺を見て、少し安心した様な表情を浮かべ……そして、続いて上がってきたリーナを見て少し驚いた様な……そして気まずい様な、そんな表情を浮かべていた。


「……アリサ」


 俺の部屋の扉の前に、体育座りでアリサが座っていた。

 まるで此処に俺が来るのを待っていた様に。



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