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24 なあなあで済ましていた事について

 Aランクのテストを終えたグレンが、観覧席の俺達の元へと戻ってきた。


「お、グレンお疲れ」


「お疲れさまです」


「いやー全体的にパワフルな戦いだったっすね!」


「お、おう……」


 俺達三人に迎えられるグレンはどこかやつれている気がしたけれど……その事にはとりあえず触れない事にした。

 最後の明らかに強すぎる一撃についてと、何故Sランクのテストを受けなかったのかも。


 ……俺達三人共、色々と察してたからな。

 多分その辺にいらっしゃるのだろう。

 きっとその誰かが助けてくれたんだ。

 ……無理強いはしないんで、今後ともグレンに何かあった時は手を貸してやってください。お願いします。


 ……さて。

 身の危険を感じるような何かは一先ず起きないだろうけど、あんな戦いを見せられれば動く人間も多いはずで。


「おーいそこの。ちょっと話あるんだけど」


「俺ら組めば最強だと思うんよ。パーティー組まねえ?」


「あ、てめえら抜け駆けしてんじゃねえよ!」


「ん? なんか知らんけど盛り上がってる! 良くわかんねえけど便乗しとこ! はい! 俺も俺も!」


 さっきのテストでグレンに目を付けた連中が集まってくる。

 どっかで絡んだ記憶あるなと思ったら、アリサとパーティー組み立ての頃に俺の事勧誘してきた連中だ。

 ……追い払わねば。


「はいストップストップ。悪いけどグレンはウチのパーティーに内定済みなんで」


「え、マジでか」


「ああ、誘ってくれるのは嬉しいが、そういう事になってんだ」


 グレンがそう答えた事により、その場に居た全員が、一応納得したような反応を見せる。

 ……聞き分けいいなコイツら。


「あ、そこのSSランクの幸運の。ちょっとちょっと」


 と、その連中が代わりに俺を手招きしてくる。


「えーっと、どした? 一応納得してくれたと受け取ったんだけどまだ食い下がってくる感じか? 割りいけどウチの大型新人は渡さねえぞ」


「あ、いや、それはもう納得したからいいんだけどよ。人の仕事仲間無理矢理引き抜くとかなんか悪いし」


 とても常識的な事を言った冒険者の男の一人が、グレン達三人に聞こえないような声量で言う。


「……いや、お前完全に両手に花みたいな状況だったじゃん。その……これほんと勝手な心配なんだけども、そこに別の男入れるってのはなんというか……良かったのか?」


「……そういやお前ら俺が下心でアリサとパーティー組んだって勘違いしてたんだったな」


「まあ若干勘違いしてたな。下心があってあの子とパーティー組んでるというよりは下心で女の子とパーティー組んでるって感じだったな実際には。目指してんだろ? ハーレム王でも」


「いや目指してねえよ……改めて言っとくけどマジで誤解。別にアリサもリーナも下心でパーティー組んだ訳じゃねえ。もしそうだったら親友とはいえグレンパーティーに勧誘してねえだろ」


「確かに。パーティーに男入れた途端妙に説得力が出るな。とりあえず理解した」


 と、そこで別の奴も小声で聞いて来る。


「……って事は現在進行形で下心とかは別に無いと。だったらちょっとご飯でも誘ってみよっかな。二人共無茶苦茶可愛いし」


「なんだてめえぶっ飛ばされてえのか」


 思わずそんな声が溢れ出てきた。


「あ、いや、なんでもないです……」


「……これは大有りだな下心」


「…………まあ。でもパーティー組んだ理由とは別の話な」


「ほんとうかぁ?」


「本当だって……」


「ま、人のパーティー……というより交友関係にあんまり首突っ込むもんじゃねえわな。特に俺らマジでただの顔見知り程度でしかねえわけだし」


 そう言った冒険者の男は一拍空けてから言う。


「それと前回勢いで話終わっちまったから今回は言っとくけど……悪かったな、色々と」


 悪かった。

 一瞬何の事だろうかと思ったが、恐らくあの件だろう。

 アレックス達が俺の悪評を流し、俺の入院中にアレックスから遺言を受け取ったルークが誤解を解いてくれるまでの間。

 その時の拒絶に等しい対応。

 思いつくのはそれ位だ。


「正直都合よく簡単に手の平返しまくってる奴らの言葉なんてどこまで信用して貰えるかは分からねえけど、その……本当に悪かったと思ってるんだ」


「いいよ、別に。悪評を流されても無理のない状況だったし、悪評流れてくりゃそこまで面識ない奴相手に変わらず接する方が難しいだろ。大事なのは誤解とか解けた後、ちゃんと手の平を返してくれるかどうかが大事な訳で……だからいい。これから仲良くやってこう」


 知ってる。

 頑張っても。頑張っても。頑張っても。頑張っても。

 それでも手の平を返して貰えない。

 何の評価も変えられない。


 そういう事はどうしようもない位、現実的に起きる事だから。


 だからちゃんと誤解が解けるような事があって、それで自分の事を悪く思っていた誰かが都合良く手の平を返してくれるような事があるのなら……きっとそれは幸せな事の筈だ。

 ……少なくとも俺はそう思うよ。


「仲良く……か。へへ……そっちがそれで良いならそうしようぜ。機会あったら一緒に仕事しよう……あ、あとどっかで飲みに行こう飲みに」


「そだな。また今度な」


 と、そんなやり取りをしていると、後方からリーナの声が聞こえて来る。


「おーいせんぱーい! いつまで内緒話してんすかー?」


 ……確かにちょっと長話だったな。

 次リーナの番で時間あんまりねえのに。


「おう、今戻る。……じゃあ俺はこれで」


「おう戻れ戻れ」


 そう言われて送り出され、俺は三人の元へと足取りを向ける。


 ……しかし飲みの誘いか。

 ……本当に最近、色々な人に良くしてもらっている。


 今の俺に付与される幸運スキルの恩恵は殆ど無いと思うけれど、それでもやはり自分は恵まれているのだと思う。

 ……今歩んでいる道は幸せなんだって。

 それだけは間違いなく、強く言えるよ。

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