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ただキミを幸せにする為の物語 -SSランクの幸運スキルを持つ俺は、パーティーを追放されたのでSSランクの不幸少女と最強のパーティーを組みます-  作者: 山外大河
四章 冒険者達の休日

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ex 死霊使いの鍛冶師

「……ッ!」


 同時に襲いかかってくる黒い影の幻覚に対し、グレンは足の裏に魔術を展開。

 地面を蹴る事により生まれる力を一点に集中させ、擬似的に瞬間的な脚力を強化。

 迫ってくる一体に自分から向かっていく。

 この状況において最悪の悪手はその場で待ち構え、この多勢相手に囲まれたままで戦闘を行う事。

 それ故に立ち止まらず、一斉攻撃を喰らうよりも前に、例え一瞬だけでも一対一に持ち込みダメージを与える。

 完全に倒しきるまで一切動きが鈍らないという無茶苦茶な設計になっていなければ、それだけで随分ここから先が楽になる。

 黒い霧の幻覚の攻撃を速度を落とさずかわし、すれ違いざまにハンマーに魔術を付与。

 全身全霊の一撃を叩き込む。


(手応えあり……ッ)


 その手応え通り黒霧は弾き飛ばされ、その先で消滅する。


(消えた? 倒したのか? なるほど……なるほどな!)


 手応えで理解できた。

 確信できた。

 目の前の黒い霧の幻覚を、かつて戦った黒い霧の化物と同一に考えてはいけない。

 ビジュアルが近いだけで完全に別物。対処方法もまるで違う。


 黒い霧と比較して僅かにスピードが劣り、だがしかし攻撃の破壊力はおそらくこちらの方が上。

 だがしかし耐久力は圧倒的に劣る。

 全身全霊の一撃ならば、一撃で潰せる。


 だとすれば、随分と気が楽だ。

 一撃で倒しきれない。受け止められカウンターを狙われる。

 それらが無いだけで、攻撃を打ち込んでも中々倒せず動きも早く、そして他の連中を守りながら同時に三体と戦うという無茶よりも遥かに楽だ。


 楽だと、そう思ってしまった。

 自分に有意な状況になり、このテストにおける常識の脆さを一瞬失念してしまう。


(次だ!)


 態勢を整え残りの四体の方に振り返ろうとした瞬間。


「……ッ!?」


 グレンの周囲に突然リーナが使っていたような結界の壁が生えてきた。

 張られたのは三方向。

 グレンと黒い霧への道だけが開かれ、結果袋小路に追い込まれたような状況になる。

 そして振り返ったグレンの視界に映ったのは、四体の黒い霧の化物。

 その時点では辛うじてまだ黒い霧の化物。


(は……え?)


 それが瞬時に霧散して一点に集まり……現れたのは先のBランクのテストの敵より更に大きい巨大な黒い霧の化物。

 その化物が拳を構え、逃げ道を失ったグレンに向けて正面から放ってくる。

 結界を破壊している暇は無く、完全に嵌められた形になって躱せない。

 そして喰らえばまず間違いなく一発で終わる。

 単純な計算では無いのだろうけど、その腕には四体分の力が込められている気がしたから。


 故にやれる事があるとすれば、迎え撃つ事位。


(くそ無茶苦茶な事やりやがって! もうどうにでもなれ!)


 ハンマーに魔術を付与する。

 もう完全にやけくそだった。

 具体的に目の前の敵がどれだけの力を持っているのかは分からないが、それでも巨大になる前の力×四だとしたら流石にどうにかなる気がしなくて。

 だからもう本当に、それしかできないからやるという、やけくその一撃。

 それが直撃する瞬間だった。


 ハンマーが薄紫のオーラのような物を纏ったのは。


 そして次の瞬間、腕に激しい衝撃が伝わってきて……そして。


「……は?」


 えげつない勢いで巨体が弾き飛ばされ………消滅した。


「……」


 会場が静まり返る。

 観覧席を見ると三人共唖然としていて。


(んんんんんんんんんんんんん!?)


 グレン本人が一番唖然としていた。


(いや……いくらなんでも……はぁ!?)


 分かっている。

 普通に生きていれば、何の前触れもなく突然強くなったりなどしない。

 今までのリーナの様なパターンは特例中の特例だ。

 今の自分にここまでの力を出す事はできなくて、できるようになる前触れも無かった筈だ。

 あの薄紫のオーラにも、全く身に覚えがない。

 では一体何なのだろうか?


 まるで自分以外の力が上乗せされていたような。

 何か超常現象のような事がおきたような。

 そんな感じがする。

 ……感じがして。


(……ッ!?)


 寒気がした。

 前触れも。身に覚えもあった。


 知ってる。

 超常現象を起こす何かの存在に覚えも。

 自分の目の前で起きる前触れも。

 完全にあった。


(……まさか付いてきた? 付いてきちゃったのか?)


 ご自宅の工房の主が。


「……ッ」


 突然寒気が止まらなくなる。

 そんなグレンに係の人間と試験官の術者が近寄ってきて、術者の男が話しかけてくる。


「いやー正直調整ミスったかもしれないって焦ったんだけど、アンタマジで凄いな。とんでもないパワーだよ」


「これはSランクのテストも突破できそうですね」


 純粋に驚きながら、少々聞き捨てならない事を言う試験官の術師と、それに続く係のスタッフさん。

 Sランクのテストも突破できる。

 確かに今の成績を考えればもしかしたら……とは思うが。


「い、いや、ここで遠慮しとくわ……」


「え、なんでだ!? なんかこう……試験官の俺の立場でこんな無責任な事言っちゃ駄目なんだろうけどさ、もっと先狙えるって! 少なくとも近距離戦闘でのパワーはぶっちぎりで最高クラスだと思うぞ!」


「は、ははは……ありがとう。でもほんとここでいいわ。ははは……」


 笑うしかないし、この先に進む訳にもいかなかった。

 明らかに自分の力では無かったし……そして。


「……tっておかしいな。今なんか見えた気が……」


「……ッ!?」


 もうそんなメンタルではない。


 こうしてグレンは頂いていいものか分からないものの、Aランクの称号を得る事となった。

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[良い点] グレンはスタンド能力に目覚めた(笑)
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