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7 色々と心配になりますね 下

 ……しかしながらこれは掘り下げざるを得ない。

 軽く深呼吸して、それからグレンに問いかける。


「と、とりあえず良さげな物件って言ったが、どんな所決めてきたんだ?」


 俺の問いに対してグレンはどこか誇らしげに言う。


「すげえぞ。敷地面積は俺が元々検討していた場所より広くて立地条件も良い。工房として必要な設備も綺麗に残っている築二年の優良物件だ」


 いや……いやいやいや。


「でもお前、その条件だと一体家賃いくらするんだ……?」


 村の連中からある程度の金を貰っていたとしても、その条件を聞く限りだと、それだけではどうにもならないような気しかしないんだけど……。


「それがよ、聞いて驚くな。同条件の物件の十分の一だ」


「はいストップ待ってくれぇ!」


 思わずそんな声を上げてしまう。


「お前、十分の一って……」


「正直、まともな条件の物件とは思えないね」


「いや、人の問題に首突っ込むのもアレだとは思うんですけど、それ絶対ヤバい奴ですよ」


 この場にいる全員がグレンの決めてきた物件に不信感を向ける。


「なあ、グレン。お前、ちゃんと話聞いたか? ちゃんと不動産の人と契約するときは慎重に話聞かないと駄目なんだぞ」


「おいおい、子供じゃあるまいし。ちゃんと聞いてるって」


 そう言ってグレンは一拍空けてから言う。


「家賃を聞いて訝しみ、念入りに話を聞いたうえで契約を決めた。これから自分が生きていく上で大切な事を決めに行くんだ……大丈夫だ。なんの問題もねえよ」


「ま、まあお前がそういうならそうかもしれねえけど……」


 グレンはイマイチ自分の作ったものに対する値段設定がおかしかったりという所があったりもするが、多分それは自分を過小評価している所や謙虚さが出ているという側面が強くて。

 基本的にはしっかり者だ。

 ……案外本当にまともな物件なのかもしれない。


 ……いや、でも十分の一。

 ……まともさが一切見えてこないんですが?


 いや……でもグレンが大丈夫だって言ってるし。

 うーん……。


「……待てクルージ君。納得するな。キミ達の関係上納得しかかっているのも分かるけど、その契約はどう考えたってまともじゃないよ」


「そうですね。その安さには何かとんでもない理由があるとみて間違いないと思います。例えば……事故物件とか」


 ルークの言葉を聞いて全てが繋がったように思考回路が動き出した。


「それだグレン!」


 もう理由がそうとしか思えなくなってきた。

 これはやられてる!


「お前、不動産屋に騙されてるって。本来だったら告知しとかねえと行けない情報を黙ってたんだ!」


「だとしたら出る所に出れば勝てますよ。クーリングオフですクーリングオフ!」


「クルージ君も動けないんだ。なんなら僕が付いていこうか?」


 手の平に拳を受け付けてシドさんがそう言ってくれる。


「俺の方からもお願いできますか?」


「構わないよ。任せてくれ」


「流石兄貴」


 ああ、ほんと流石だよ。面倒見良すぎる。

 と、シドさんにこの件のサポートを託した時だった。


「いやいや、盛り上がってる所悪いけど、事故物件って話はちゃんと聞いてるぞ?」


「「「……は?」」」


 三人して間の抜けた声を出す。

 そんな俺達を見ながらグレンは言う。


「なんでも半年前に殺人事件があったらしくてな。安いのはそういう話」


「いや、いやいやいや!? ちょっと待てよグレン! それ全然大丈夫じゃねえだろ」


「いや、大丈夫」


 そう言ってグレンは笑みを浮かべて言う。


「そんなのはさ、些細な話だろ? 幽霊なんている訳ねえしいた所でだから何? って話な訳で。何の問題もねえよ」


「「「……」」」


「そういう訳で幸先が良い。完璧だな」


 まあ……その、なんだ。

 本人が良いって言うなら良いんだろうけどさ……。

 ……良いのかぁ?


 そんな風にグレンとグレン以外で凄い勢いで温度差が生まれ始めている病室の扉が、静かなノックの後ゆっくりと開いて、新しい人物が二人入ってくる。


「お、お邪魔します……」


「え、えーっと……先輩。怪我の具合……どうっすかね?」


 ……なんか雰囲気がいつもと違うアリサとリーナが。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 新しい温度差が来たぞ! まだ背後から刺される対処を学んでないのに…どうする!? 事故物件ってだけでそんなに安くなるものなんですかねぇ?
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