4 色々とぶっちゃけた話をしようか
「どっちに気があるって……」
「分かるよ。そもそもキミがあのアリサって子とパーティーを組んだ経緯はかなり異質だとは思っている。だから別にそういう目的で結成された集まりではないっていう事は分かっているつもりだ……つもりだけども。女の子二人を脇に置いて、いや別にそういうのじゃないんでって真っすぐに嘘偽りなく言えるかといえば違うだろう? 違う筈だ」
……何この、そうでない答えは許されないような聞かれ方。
「で、改めて聞くよ。どっちに気があるんだい? もしくはどっちもとかそういう感じだったりする?」
しかも更に押してくるし。
段々逃げられなくしてくるし。
「え、いや……その、なんて言えば良いんですかね」
……だけど逃げにくいからといって、容易に突っ込むような真似は出来ない。自然と理性が色々とブレーキを掛けてくる。
今の自分の立場が恵まれてる、なんてのは案外認められる。
事実だし、それ否定し始めたらアリサとリーナに失礼だし。
いや、アイツらの前ではそんな事も言えないのだけれど。
……とにかく、そう簡単にそんな話、できる訳が無い。
「いや……まぁ、別に……そういう感じじゃ無いんですよ」
だから誤魔化した。これが最適解……なんじゃないかな。
そして俺の答えを聞いたシドさんは、何かを察したような表情を浮かべた後、ニッコリと笑って言う。
「なるほど……じゃあ別にあの子達の事は特になんとも思っていなくて、だから別に可愛いとか、そういう事も全く思っていない訳だ。寧ろ……悪い意味でその逆とか」
「は? 逆って今どういうつもりでそんな事口にしたんですか。あり得ないでしょ。アリサとリーナ以上に可愛い女の子とか見た事無いですし、いるなら逆に見てみたいって位アイツらは可愛いと思いますよ。だからその逆とか冗談でも失礼な事言うのやめて貰っていいですか?」
「……」
改めてニヤリと笑うシドさん。
「……ッ!?」
しまった勢いで、凄い勢いで口滑らした……ッ。
全部釣りだクソォ!
「ま、まあ大体そんな感じじゃないかなとは、キミが否定した時思ったけど……まあ、思った以上に熱いお言葉が飛び出してきたね」
「そういうの恥ずかしげもなく言える辺り、結構ポイント高いですよね」
……いや恥ずかしいが?
もしこんな事アリサやリーナに聞かれていたら、俺恥ずかしくて死ぬが?
……まあそれはそれとしてだ。
「……で、まあそういう反応をしたという事は……まあそういう感じなんだろう?」
「……」
……こうなってしまったらもう逃げられないよな。
誰が悪いのかって言えば俺が悪い。
普通に口滑らせるだけならともかく、全力でスライディングしちゃった訳で。
……うん、本当に俺が馬鹿でした。
だから……もうどうにでもなれ!
「……まあ、そりゃ……全く気が無いとか、そんな訳無いでしょって事で」
もう仕方がないのでカミングアウトである。
「ほうほう、ちなみにどっちに気があるって話だけど……っていやちょっと待ってくれ。さっきの話聞いた感じだと……」
「えーっと、クルージさん。薄々感付いてはいますけど多分アンタ……」
「……まあ正直な話、二人共それぞれ色々違うベクトルでドストライクな感じはある」
うん、嘘偽りなくそんな感じ。
「アリサもリーナも改めて考えると可愛すぎると思うんだよ俺は。そりゃまあご理解してるかもしれないですけど、百人見たら百人全員無茶苦茶可愛いって思うような容姿してるじゃないですか。してますよね」
「え、エンジン掛かってきたなこの人……」
「それで二人共性格無茶苦茶良いんですよ。もうさ、こう……今口頭でどこがどうってすぐ説明とか難しいんですけど、二人共もうマジでいい奴でさ……色々あってほんと俺も救われてるっていうかさ……とにかく、ほんといい奴らなんですよ」
だとすればだ。
「だとすればアリサとリーナ以上に完璧な女の子っていなくないですか? 俺はいないと思うんですよ。それ位あの二人は可愛いし良い奴だし……うん、俺アイツらの為なら多分割と何でもできる気がするんですよ。うん、幸せにしてやりたいなーとか普通に思う。とにかくもう一度言うと、アリサとリーナは無茶苦茶可愛い! そりゃ気ぐらいあるよ! 以上!」
……な、なんか勢いで色々言っちゃったが、まあ引き下がれなかったし仕方がない。
嘘でもないし仕方がないんだ、うん。
……これ本当にアイツらの前じゃ絶対言えないな。
と、そこでシドさんが謎の拍手。
「excellent」
……何が?
そしてルークも普通に心配そうに俺に言う。
「これは冗談でもなんでもなく、真剣な話です……刺されないように気を付けてください」
「お、おう……」
とにかくなんか色々勢いで言った訳だが……その結果かどうかは知らないけど、二人と凄い仲良くなった。
三章との落差