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ただキミを幸せにする為の物語 -SSランクの幸運スキルを持つ俺は、パーティーを追放されたのでSSランクの不幸少女と最強のパーティーを組みます-  作者: 山外大河
三章 人間という生き物の本質

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93 親が子の為にしてやれた事

「望んでくれないって……そんな事多分アリサは……」


 思わずそんな言葉が出て来た。

 一体今現在のアリサとその母親がどういう関係性なのかは分からない。

 だけどアリサがどういう人間性をしているかは大体分かっているつもりで。そして目の前のアリサの母親がちゃんとアリサの事を思って行動してくれている人だという事はよく分かっていて。

 そんな二人だから……きっと、望まない。望まれないなんて事は無いんじゃないかって。そう思った。


 だけど俺の考えなんてのは、あくまで第三者が勝手にした憶測にすぎなくて。

 実際辛そうな表情を浮かべたままのアリサの母親を見れば、俺の認識がどこか大きく間違っている事は察する事ができて。

 そしてアリサの母親は言う。


「……この子を助ける為に行動するに、この子に何をする必要があったと思う?」


「何って……」


「何なんすか……アリサちゃんの為にしてあげた事……っすよね?」


 俺とリーナはその意図を読めずにそう言う。

 何をする必要があったのか。

 助ける為にアリサにする必要があった事。

 してあげられた事。

 そんな前向きな事をどれだけ考えても、アリサに望まれなくなるような終着点に繋がる事は見えてこない。

 だけど俺達には分からなくても。グレンはこういう大事な時の察しの良さに長けていて。

 何かを察した様に言う。


「……駄目だ。クルージ、それにリーナも。踏み込むな」


 俺達に対してそんな言葉を。


「……この人の前で、これ以上踏み込んじゃ駄目だ」


 一体どんな答えに辿り付いたのだろうか。

 グレンの言葉は酷く重くて、その答えを聞きだそうとする事を強く躊躇わせてきて。


「……気を使ってくれるのね。良かった。アリサの周りにいる人達が優しい人ばかりで」


 そうどこか安心するように言った後、少し名残惜しそうにアリサの方を見てから……アリサの母親はその場から走り去った。


「あ、ちょ……ッ!」


「いい、クルージ。行かせてやってくれ……寧ろ駄目だ、あの人を此処に留まらせたら」


 そう言ってグレンはアリサの方に視線を向ける。


「二人共に、碌な事にならねえ」


「……話してほしいっす」


 一人だけ答えに到達しているグレンに対し、アリサは言う。


「今私達を止めたのは、アリサちゃんのお母さんに気を使って……っすよね? アリサちゃんみたいに凄い動きっすよ。もう見えないっす……だったら、話してくれてもいいんじゃないっすか?」


「……分かってる。別にお前らに隠す様な話じゃねえ。隠しちゃいけない話だ」


 そう言ってグレンは言葉を纏めるように一拍空けてから言う。


「アリサの母親がアリサに何をしたか……なぁ、リーナ。お前はさっき、何をしてあげたかって言ったよな?」


「……言ったっすけど、なんかおかしい事言ったっすか?」


「そんな優しい事じゃねえんだよ。これは間違いなく、してあげたなんて言葉を使っちゃいけない事だ」


「どういう事だよグレン」


 俺が問いかけると、グレンはアリサの方を見て言う。


「二人とも、アリサのスキルがどういう物なのかは分かってるな」


「ああ、アリサにとって不運だと思う事が起きるスキルだ」


「……アリサちゃんは間違いなく、人の幸せを祈れる様な優しい子っすから。それで先輩の幸運スキルも打ち消されてる訳で……それで、それがどうしたんすか」


「もしも……もしもだ。アリサがさ、自分の母親の事を好きでいたら。幸せを願えるような相手なら。幸福であって欲しいと願えるなら……アリサを助けようと必死になるような、娘の幸せを願う母親はどうなると思う?」


 そしてグレンは、とても言いにくそうに。それでも重い声音で言った。


「あの人にとって娘に愛されるって事は……娘を救う事を絶望的にされるようなものだったんだよ」


「……まさかッ」


 察しが、付いた。

 付いたけど、想像すると頭が痛くなりそうで。碌な光景が浮かんでこなくて。

 そんな答えをグレンは言う。


「あの人はきっと、アリサに恨まれるような事をしたんだよ。し続けたんだよ。それこそあの人にとって幸運な事が起きる事を、アリサが不運だと感じるようになるまで」

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