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非現実の現実で僕らは戦う  作者: 沖野 深津
第二章 レベリング
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第二十九話

「派手めに……って言われても。どうしよう」


戦闘の合間を縫って、リィンベルから言われた目的の場所を目指す。その間、私は頼まれた内容について思案していた。

基本的に私の戦闘方法は地味だ。パーティの穴を埋めるような役割であり、紅魔状態のリィンベルみたいな目を引く戦い方はしたことがない。


目を引く戦いなら、私よりよっぽどオーレンのほうがいいと思うんだけどな。魔法なら、ぱっと見でもすごい派手だし。


だが、頼まれたのはオーレンではなく自分の方だ。なんとか自身の手札の中から対処するしかないだろう。


……ないことは、ないか。ちょっと外しそうで怖いけど。


ふと思いついたのは、普段あまり使わない一つの技。あれならいい感じに派手なのではないかと思った私は、走りながら左に持っていた銃を腰にしまい右手の銃に左手を添える。


苦戦しているエリアっていうのは……あそこかな。


ひたすら言われた通り戦場を西に走っていると、他部隊の倍ほどの数を相手にしている集団を発見した。他の戦場からは離れ若干孤立気味の部隊。盾を持っている騎士だけではさばき切れずに、剣や槍を持つ騎士が何とかといった様子で魔物を止めている。あれだけ乱戦になれば、後衛も魔法を放ち辛いだろう。実際に杖を構えはするが、魔法を撃てていないようだった。



「……あ!」



私が追い付く前に、業を煮やしたのか一人の魔法使いの少女が強引に魔法を放つ。相手に火の玉をぶつける初級魔法だ。しかし制御がうまくないのか、火の玉は魔物に当たらず、すぐ足元に着弾。突然の爆発に、魔物だけでなく食い止めていた騎士も驚いて動きを止めてしまった。実害はないと即察した騎士はすぐに魔物へと向き直ったが、向こうの方が一歩立ち直りが早い――


魔物は邪魔だと言わんばかりに、騎士へと体当たりを仕掛けた。構えるのが遅れた騎士は、衝撃を吸収しきれずにニ、三歩後ろへよろける。その隙をついて、魔物が一気に魔法を放った少女へと猛進し始めた。慌てて騎士が踏み込んで剣を振り下ろしたが、その剣先は届かない。少女も少女で、急な危機的状況に完全に足がすくんでしまっていた。


このままだと、あの子が危ない!?


「っ!」

私は一歩強く踏み出して一気に加速する。目標地点は少女の前方。私の足ならば、魔物に轢かれるより先にたどり着くことが出来る。


全然想定していなかったけど……逆に好都合かも!


「ブラストバレット。レッドエレメンタル、チャージ」

足を動かしながら、私は口元でそうつぶやきスキルを発動させる。すると右手に持つ銃の先が赤く光りを放ち始める。


以前遺跡で初めて使用した近距離高火力の大技、ペネトレイトメテオライト。それの威力縮小版ともいえるのが、今私が使用しようとしているスキルのブラストバレットだ。二つの銃口から発するペネトレイトメテオライトと比較して、こちらは銃一つあれば放つことのできる技で、威力も大幅に下がる。しかし初動が早く、属性を乗せることが出来る。

そして何よりエフェクトが派手だ。


HPが半分削られているこの魔物なら十分仕留めることが出来るし、リンさんの要求する『派手めに』っていうのもクリア出来る!


私は最後大きく踏み込んで、ブレーキをかけつつ少女の目の前に躍り出た。魔物が襲い掛かる前に間に割り込むことは余裕であったが、彼我の距離はあまりない。私は崩れていた姿勢を無理やり起こすと、右腕を延ばし照準を迫りつつある魔物へと向けた。


「え、あ、あの――」

「話は後! すっごい大きな音がするから、耳をふさいでてっ」


突然の来訪者に戸惑いの声を上げる少女。しかし私は時間がないので彼女の声に被せるようにそう忠告した。そうこうしているうちに、鼻息荒く突進する魔物が、私の射程圏内に入り込んだ。


この距離なら、絶対に外さない!


「残念だったね!」

そう口にしつつ、私は一気にトリガーを引いた。


直後、ズバァンッと大きな音を轟かせながら銃口でくすぶっていた赤い光が爆発した。赤い光は光の奔流となり、迫りくる魔物を容赦なく貫く。全身に光を浴びた魔物は、火属性を帯びる光に焼かれ赤熱。悲鳴を上げる間もなく全身を黒い霧へと変えた。

後に残ったのは、光の奔流の余波を受けて足首ほどの深さに抉れた大地と。


爆音を目の前で響かせてしまったことによる耳の痛みだった。



「~~~っ」


私は思わず空いていた左手で耳を覆う。まるですべての音が遠ざかってしまったかのように、耳が利かなくなってしまった。


こ、この音だけは何とかならないかな……。


少しの間眉をひそめながらよろよろと足踏みをしていると、徐々に耳の聞こえが治ってきた。


「だ、大丈夫だった?」

私はもう少し治りきっていない耳の痛みを押しのけながら、背後に立っていた少女へと向き直る。少女は涙目でぷるぷると震えていた。余程先ほどの爆音に驚いてしまったようだ。


「あ、えっと……ご、ごめんなさい。大きな音を急に立てちゃって……」

私は小さく頭を下げる。とんでもない音が出ると知っていた自分ですら、なかなかにダメージの大きい一撃だ。初見で、しかも目の前で見せられた日には、それは驚きもひとしおだろう。確かに派手にやろうと思ってこの技をチョイスしたのだが、選択を誤ったかもしれない。


も、もう少し何かいい技があったかな……。


そう思って自身の持っている技をふと思い浮かべてみたが、これと言ってよさげな技は思いつかなかった。仕方のないことだったとはいえ、少し申し訳ない。

私が少し自己嫌悪に陥っていると、少女は我に返ったのかぶんぶんと大きく首を横に振り始めた。


「い、いや大丈夫です! すいません助けていただいたのにこんな!?」

「いや、いいよ。大丈夫だったのなら全然。こっちこそ、急に大きな音を立てて……」

「と、とんでもないです!? た、確かに驚きましたけど。すごい威力で……魔物を一撃だなんて、感動しました!」

ぺこぺこと頭を下げたり、かと思ったら首を横に振り始めたり……少女はせわしなく反応をし始めた。その声は徐々に興奮味が増してきている。少女の変わりようと大絶賛のコメントに、私は嬉しいのやら申し訳ないのやらよくわからない感情を持て余しつつ、小さく肩をすぼめた。


……ま、まぁそれはそれとして。もっと加勢に入らないと。


少女救出がひと段落付いて、私はふと辺りを見回した。そういえばここはまだ戦場のど真ん中。魔物を一体倒したところで、まだまだ戦況は芳しくない状態だ。こんなところで悠長に和んでいる場合ではなかった。


「えっと。私はほかの人の加勢に戻るね」

「そ、そうだっ。今は戦闘中なんだ」

私の言葉に、少女も周りの状況を思い出したようだった。少女はぺこりとお辞儀をすると、少し離れていた自身のパーティへと戻っていった。


「さて、私は……」

そうつぶやきつつ、再度辺りを見回す。苦戦していそうなところがあれば、そこに加勢しようと思ったのだが。


……あれ、なんかどこも巻き返してる?


この戦闘エリアに来た直後は、どこも魔物の勢いに圧倒され苦戦していたように思えた。しかし今は、こちらの頭数が少ないにもかかわらず善戦しているように見える。もしかしたら、自分の戦いっぷりが何か良い影響を与えたのだろうか。


……大きな音たてただけと言えば、そんな気もするけど。


そう思いはしたが、自分の行いでありながらいまいちピンとこない。

「ま、まぁ取り敢えず。盾じゃない人が支えてるところに加勢しに行こうかな」

この場でぐだぐだ考えていても変わらない。私は近場で近接部隊が相手どっているところがないか探しながら、戦場を駆け抜け始めた。



……その後戦いながら気が付いたことだが。味方が巻き返した理由は、どうやらあの爆音と一撃必殺を披露したおかげで、敵が恐慌状態に陥り動きが鈍ったからのようだった。

予想以上の好影響を与えていたことに、私は少し嬉しく思いました。


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