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非現実の現実で僕らは戦う  作者: 沖野 深津
第二章 レベリング
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第二十八話

「っ!?」


直ぐ近くで、騎士の一人が足元をすくわれて転倒した。間髪入れずに魔物が上からのしかかり始める。

辛うじて短槍を挟み込むことに成功していたが、魔物の重みに騎士は悲鳴を上げ始めた。あのままだとつぶされてしまうだろう。



「動くな!」



見ていられず、助けようとオレを含め数人が一歩足を踏み出そうとしたところ。青年騎士が声を張り上げた。


「雑魚は奴らの担当だ。俺たちが手を出すんじゃない」

「ふざけんな! あのままだとあいつが!?」

冷酷とも聞こえる青年騎士の言葉に、今にも飛び出しそうな様子の騎士がかみついた。オレも口にはしないが、青年騎士の指揮には苛立ちを覚えていた。


目の前でピンチなやつがいるんだぞ! なんでそんなことが言えるんだよっ。


じろりと青年騎士をにらみつける。しかし彼はどこ吹く風と言った様子で静かに腕を組むばかり。そんな青年騎士に業を煮やした幾人かが、我慢できずに飛び出そうとした矢先――



「俺たちが手を貸さずとも、奴らだけで何とかする」

青年騎士が一言呟いた。



直後、魔物の横っ腹で爆発が起こる。その爆発に加えて、槍を持った別の騎士が勢いよく突進をかますと、魔物は勢いよく吹き飛んだ。そのまま魔物は黒い霧へと姿を変えて消滅する。

「大丈夫か!?」

魔物がいなくなったとみるや、ローブを着た少年が倒れ伏した騎士へと走り寄る。彼が手をかざすと、淡い光が騎士を包み始めた。恐らく回復魔法だろう。騎士の方は腕を痛めたのか、術をかけられている間も苦悶の表情を浮かべていた。

その様子を目の当たりにしたオレたちは、一歩踏み出したはいいが動けなくなってしまう。


「初動が遅すぎるが……まあ悪くない対処だな」

ぼそりと呟く青年騎士。その声に振り返ってみると、彼はもう興味をなくした様子で別の戦闘を眺め始めていた。


「……くっそ、一人だけ涼しい顔しやがって。これだから能力の高いやつは」

飛び出そうとしていた騎士の一人が小さく悪態をつく。そこには自身よりも周りを見据えていた青年騎士に対する悔しさがにじみ出ていた。


……成程。集団戦闘か。


オレは口元に手を当てて騎士たちの戦闘を眺める。


確かに、前衛に出るようになってからは視野が狭くなってたかもしれないな。下手に戦える分、自分で処理しようとして。……前までできていた俯瞰が、おろそかになってたな。


それ以後、オレのいる部隊で迂闊に手を出そうとする騎士はいなくなり、皆力をため込むかのように静かに戦場を眺め始めた。オレも久方ぶりに広い目で戦場を見ることができるようになった。


改めて戦闘風景全体を眺めてみると、各々チームで少し戦闘方法に違いがあることがわかる。近接部隊がごり押ししているところ、後衛の魔法で確実に仕留めているところ、中には盾を持った騎士が果敢に殴りかかるチームもあった。これはいいのだろうか……。


……なんか、左のチームあたりが苦戦してるな。


ふとオレは戦闘中のとある一角に目を向けてそう感じた。意図してそういう隊形を組んでいるのか、全体的に敵が分散して攻めてきている。だが、その一角だけは少し敵の数が多い。チームの中にいる盾の人数が足りず、近接部隊が相手どる姿が見て取れた。


『……ライオット隊長、リカです。私たちの待機場所から見て左手方向の部隊が苦戦しているようです。敵の数が多くて。他の部隊から応援の指示って出来ませんか? 無理なら、オーレンかシシリー……旅人仲間に助力させますけど』

オレはマージフォーネをつつき、状況をライオットに説明した。事前に彼から指示されていたわけではなかったが、戦況が悪化しそうなら報告したほうがいいだろうと思った次第だ。

マージフォーネに口を近づけつつじっと苦戦中の部隊を眺めていると、すぐにライオットから返信が来た。


『そうだなぁ。ちとよろしくないな。近場のやつらも、自分のことで手一杯って感じだ。……りょーかい。旅人の方で助力頼むわ。苦戦してちょいと恐怖し始めてるやつらに発破かけられるよう、派手に頼むわ』

『わかりました』

返信が早かったことから、ライオットもどこかで戦況を見守っているようだ。彼からの指示を受けたオレは通信を切ると、ざっと戦場を見回す。


オーレン……は遠いな。魔法じゃオーバースペックってことで、弓を使ってるのか。確かにそっちの方がいいだろうな。じゃあ、頼むならシシリーか。


オレはメニューウィンドウを開き、シシリーへと念話をつなげる。幸いなことに、苦戦しているエリアとシシリーは比較的近いところにいた。彼女の足なら、すぐさま駆け付けられるだろう。



『はい、どうしました!?』


チャットがつながると、少し気を張った声が聞こえた。恐らく念話ではなく素の声をだしているのだろう。戦闘中にかけてしまったようだ。


『悪い戦闘中だったか。けどすまん、急ぎ案件だ。ちょっと苦戦しているエリアがあるから、そっちに移動して助力することってできるか?』

『……だ、大丈夫です。今丁度一区切りつきました。どこへ移動すればいいですか?』

『えっとな……』


オレは念話を継続しつつ、ウィンドウを操作して簡易マップを表示させた。マップ機能を強化するようなジョブを持っていないので、情報量はさほど多くない。敵を示す赤いアイコンがあちこちに点在する中に、旅人以外の人間を示す灰色の点と旅人を示す青色の点が見えるくらいだ。ただ、今は方向が分かればいいのでそれで十分だった。


『簡易マップを見てくれ。丁度シシリーの位置から西に向かったところだ。そこに騎士たちじゃさばき切れない量の敵がいるんだ』

『……あ、分かりました! すぐ向かいます!』

『ライオットさんからは、恐怖を吹っ飛ばせるよう、派手めにやってくれってさ』

『派手めに……わ、わかりました』

『頼む』


そう言ってチャットを終わらすと、オレはシシリーのいる方向を眺めた。直後、遠目でもわかるような勢いで彼女が戦場を動く姿が見て取れた。


「な、はやっ!?」

「なんだあの子!?」


偶然その姿を捉えた騎士の幾人かが、オレの周りで驚きの声を上げた。オレは彼らの方をちらりと振り返って、不敵な笑みを浮かべる。



「彼女は私たちの仲間の旅人です。彼女は、強いですよ!」




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