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非現実の現実で僕らは戦う  作者: 沖野 深津
第二章 レベリング
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第二十話

「……はぁ、まあいい。もしかしたら勘がいいやつは見当がついてるかもしれないが。この森は……奥に行けば行くほど、魔物が強くなっていく構造になっている。最奥まで行けば……そうだな、俺でもお前らを守りながらってなるときついかもな」


「え……」


ライオットのその言葉に、幾人かが息をのんだ。彼らは内心思っていたのだろう。いざとなっても隊長であるライオットが何とかしてくれるだろうと。そんな彼が守り切れないと漏らすのだ。不安になるのも無理はないのかもしれない。


「な、なんでそんな危ない道に行くの……?」

先ほど元気な声を上げていた少女も、これには不安そうにおずおずと口を開いた。その反応にライオットは満足げに小さく鼻を鳴らす。

「いい機会だからな。実際の戦闘……訓練じゃない本気の実戦ってやつじゃ、必ずしも格下相手に巡り合えるわけじゃない。むしろ同等か格上ってことのほうが多いだろうな。お前ら新人じゃ、特にそうだ。相手もギリギリの戦いなんてしたくない、相手を選ぶ。あっちにとって有利な敵をな。実戦じゃそこでぶっつけ本番になるわけだが、今回は俺と……そして旅人の助力がある。まだ融通の利く状況で同じ経験が出来るわけだ。お得だと思わないか?」

そういう彼はちらりと私たちの方を向いた後、どこか試すような視線を少女騎士に投げかける。どうやらライオットは私たち旅人の能力を高く買っているようだ。


といっても、レベリング中だからそんなに戦力になれない気もするなぁ。オーレンは別だけど。


思ったよりもこのあたりの敵の経験値効率は悪くない。そのためここまでの戦闘で私は五、六ほどレベルを上げているが、まだまだ低レベル帯だ。実際に十全な戦闘をしたいのなら一度町に戻ってガンナーをメイン職に据え置く必要がある。だがそれは難しいだろう。


まぁ、まだ全然私もリンさんも戦えるっぽいし、大丈夫か。いざとなったらオーレンに頑張ってもらえばいいしね。


このあたりの敵なら、私一人でも相手どることは造作もない。近接職に慣れていないと語るリィンベルも、そうは言っても二、三体同時に相手することも苦ではなさそう。加えてそれぞれで戦った場合でこれだ。手を合わせれば、もっと強い敵も戦えると思う。それでもきつかったら、オーレンの出番だ。森の奥がどれほどのレベル帯の敵が出るか分からないが、一気に要求レベルが二十も三十も上がらないはず。この世界の住人であるライオットが戦える風に話しているのでなおさら。


「お、思わないから!? い、嫌よ私は」

しかし新人騎士たちは私たちのように楽観視はできない。そもそも彼女らは一つしかない命。出来ることなら危ないことはしたくないと思うだろう。新人だし、まだ気骨が育っていないというのもあるのかもしれない。ぶんぶんと少女騎士は首を横に振って声を上げた。

それにライオットは「……ったく、根性ねーなぁ」とため息一つ。


「まぁーそうは言ってみたけどな。心配すんな、そこまで奥にはいかねーよ。精々このあたりに出るやつらに毛が生えた程度のやつが出るあたりまでだ。お前らでも十分対応できる。だからそんなにらむなって」

じろりと険のある目をむけてくる少女に向かって小さく手を伸ばしつつ、ライオットは苦笑いを浮かべた。加えて、ちょっと残念そうに見えるのは気のせいだろうか。


……奥まで行って戦いたかったのかな、この人……?


前日の夜に少女たちの話を聞いたところだと、ライオットは戦うことが好きな人とのことだった。初めこそ「面倒くさいわー」などといって仕合を断ろうとするのだが、いざ戦闘が始まると途端に目を輝かせるという。男って、ホントにいつまで経っても子供よねー、と揶揄する声もあったが、そんなところが地味に可愛いとの意見も。

……私にはわかるようで分からない境地なので、何とも言えない。


「と、も、か、くだ。時間も無限にあるわけじゃなし。行くぞー」

未だに一部不満の声を上げる騎士たちをその一言で渋々ながら付いてこさせつつ、ライオットは川へ向かって歩き出した。



「私たちも行きましょうか」

両隣に佇むオーレンとリィンベルに声をかけるために、私はちらりと視線を動かす。最初に見たオーレンは、眠気を吹き飛ばすつもりか小さく頭を振ったのちに頷いた。一方リィンベルの方は、一応開き直ったのか顔を上げて付いて行こうと足を動かしかけたが、その前に自身の耳元に手を持って行った。その動きは、ボイスチャットが着た時のそれだ。

誰かからの通信が来たのだろうか。



「……隊長から、前の方に来てくれだってさ」



一度ちらりと遠くをうかがうような目を向けた後、リィンベルは私たちを見上げながらそう口にした。


あれ? なんでこっちの人とボイスチャットが出来るんだろ?


ボイスチャットは旅人のみが使えるシステムであり、こちらの世界の住人には使うことのできないものだ。そういう思いがよぎったが、すぐに思い当たる節があり考えを改めた。

「えっと。……確か『マージフォーネ』でしたっけ? それですか?」


そういえば、昨夜彼にそのようなものをライオットからもらったという話を聞いていた。なんでも、旅人のボイスチャットと同様の効果が得られる魔法の道具だという。その時にこっそり見せてもらったが、水色の綺麗なアクセサリーであったという印象がある。

リィンベルは私の言葉に小さく頷く。


「そうそう。まあ、隊長との連絡用だな。取り敢えず、呼ばれたし行こうか。一応、旅人という保険があるってことを、目の前を歩かせることで見せて安心させたいんだとさ」

「なるほど。確かに、町から離れて不安なのにさらにその上で……ていうので、ちょっと気落ちしている子もいますしね」

私は昨夜話していた少女騎士の中で、ここまで遠出するのが初めてなのか不安そうにしていた子がいたことを思い出した。その少女はここからだとどこにいるのか分からないが、恐らくまだ開き直っていないような気がする。その子たちが安心するというのなら、本調子ではないが前に立とうという気になってくる。


どこまで行けるか分かんないけど。頑張ろうかな。


遠征二日目。私たちは新人騎士たちの旗印となるべく、グループの先頭へと歩き始めた。


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