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非現実の現実で僕らは戦う  作者: 沖野 深津
第二章 レベリング
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第十九話

「おーし、みんなちゃんと起きてんな?」


多少起床の早さに前後はあったものの、すべての新人騎士が朝の支度を終わらせたころ。騎士団長のバイスから各グループに分かれろという指示が下った。昨日同様、私たち旅人勢はライオットチームのメンツに交じり、彼の言葉に耳を傾ける。


ライオットはつい先ほど活動を始めたのか、非常に眠そうにあくびを漏らしながら私たちの前で声を上げる。彼はあくびの後涙をたたえた目で全員の顔を確認すると、小さく頷いた。

「……とっきどきいるんだよな。びっくりするくらい朝に弱くて、周りが動き出しても一切起きてこないやつ。今回はいなくて助かるー」

そう言うと再び大きなあくびを漏らすライオット。それを見た彼の近場にいた活発そうな少女たちがヤジを飛ばす。


「というか、隊長が一番最後でしたよ」

「隊長寝坊ですよ。隊長としてそんなのでいいんですかー?」

「やっかましい。俺はいいんだよ。お前らが寝た後だって、俺を含めた隊長格の何人かは見張りに立ってたんだからな。寝たのだって、辺りが明るくなり始めたくらいからだ。さっきだよ、ついさっき」


「……相変わらず、新人騎士たちと距離の近い人ですよね」

まるで年若い教師が、話たがりなお転婆な女生徒にいじられているような雰囲気が感じられる。なんだか元の世界の学校を思い出すようで、私は小さく笑みを浮かべた。


「私の学校でも、新任の先生が気さくな人でこんな感じになってたなぁ。オーレンの方はそういうのあった?」

ちらりと横に視線を向けると、オーレンが眠そうにあくびをしていた。どうやら彼は夜遅くまで同年代の少年たちと話し込んでいたらしい。

その彼はあくびの最中に声をかけられたせいか、よくわからない声を出して小さく頷いた。

「……うん。確かにあったかなー。あでも、僕たちのところは女子じゃなくて男子がむらがってた」

「そうなんだ。私のところ女学園だったから。共学だとやっぱ違うんだね。リカさんはどうでした?」


今度はオーレンとは反対側に顔を向ける。そして今のリィンベルは小柄な少女の姿をしているため、そこから目線を下げなければならない。自分より遥かに年上の男性だというのにこの身長の差があるということに、未だに違和感を覚える。


……あれ?


反応を見ようとリィンベルの方を見た私は、ぱちぱちとまぶたをしぱたかせる。当の彼は、ぼんやりと前を向いて、心ここにあらずといった様子だった。


「……リカさん?」

「……ん、あぁ。何?」

もう一度私が声をかけると、彼は今気が付いたかのようにこちらを見上げてきた。

「……リカさん、どうかしましたか? 元気ないようですけど……」

私は少し膝を折ってリィンベルの顔を覗き込んだ。朝起きた段階の彼を見たが、その時は別段変わった様子はなかった。眠そうではあったが、今のように人の話を聞かないほどぼーっとしてはいなかったはずだ。


私が別行動しているうちに、何かあったのかな?


私の問いかけに対して、リィンベルは「いや」と小さく首を横に振った。


「悪い、なんでもないんだ。全然調子が悪いって訳じゃないよ」

その物言いは普段の彼のものと変わりない。嘘は言っていないのだろう。

ただそこまでは良かったのだが。直後リィンベルは視線をそらして影のある表情を浮かべた。

「……ただ、見解の違いにダメージを負っただけさ――」

ははっと乾いた笑いを漏らすリィンベル。


一体リンさんに何があったの……?


これ以上聞くのは彼としてもこちらとしても得はないと思った私は、何事もなかったかのように姿勢を戻した。恐らく時間が彼を普段の彼に戻してくれるだろう。


そうこうしているうちにライオットと少女騎士たちの歓談が終わり、本日の予定の説明が始まった。




「んじゃあ今後の予定を説明すっぞ。昨日までは騎士全員で一緒に行動してたが、今日からはそれぞれの分隊ごとに行動する。魔物との戦闘はおおよそ昨日通りだろうが、問題は野営のほうだ。人数的に五分の一だぞ、ごぶんのいち。昨日準備をさぼってたやつも参加しないと、一通りの準備を終えるころには日付跨ぎかねないからなー。勿論、そんなことになっても出発時間は変えないからな」

ライオットのその言葉に、方々からぶうぶうと非難が飛んだ。本来の新人騎士―隊長の間柄では到底見られない光景だろう。だが、別段気にした様子もなくライオットは小指で自身の耳の掃除をしていた。


「当然だろうが。ま、この話はまた野営の時にでも言ってやろう。んで、この後すぐどうするかっていう話だが。それぞれ分隊ごとに枝分かれしてこの森を探索する。まあ、その際に野営できる場所、腹に入れられるようなものを探すんだ。戦闘ばっかするんじゃないぞ? んで、問題の進行方向だが……俺たちの分隊は、そこの川に沿って上流に進んでいくことになった。これがどういうことか、わかるか?」

不意にライオットは先ほどまで絡んできていた少女騎士へと視線を向けてそう問いかけた。


「ぜんっぜんわかんない!」

「お前な……元気だけあればいいってわけじゃねえんだぞ……」

しかし少女騎士は、清々しいくらい何も考えた様子もなく即答。

ライオットは小さく頭を抱えることになった。


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