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非現実の現実で僕らは戦う  作者: 沖野 深津
第二章 レベリング
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第十一話

戦闘時は集中できる。


ライオットの指示通り、オレの配属された新人グループは、数人のさらに細かいチームに分かれてそれぞれ戦闘を行っていた。といっても広範囲に分散することはせずに、近くに現れた魔物をチーム交代で対応している感じだ。たまに大量に湧いたりすると、複数のチームが同時戦闘する。


「……成程ねぇ。さすが騎士団というべきか、綺麗な戦闘するな」

目の前で小型の犬のような魔物と戦っているチームを見ながら、オレはぽつりと漏らす。

「盾と近接がしっかりと敵の進行を阻んで、後衛で狙い撃ち。RPGの醍醐味って感じの戦闘方法だ」

今まさに盾によって弾かれた魔物が、魔法に撃ち抜かれ黒い煙へとなり果てて行く様子は、オレたち旅人でも理想とする戦闘シーンだ。


……ただ、やっぱりまだ拙いというか。スピード感がないよなぁ。基礎ステータスに寄るのもあるんだろうけど、参考にするんだったらオレだったらもっと――


「どう、リカちゃん。怖くない?」

自身の戦闘をかみ合わせながら目前の戦闘場面を眺め見ていると、不意に最初に話しかけてきた少女が近づいてきた。それどころか、彼女以外にも話したことのない複数の少女がやってくる。どの少女の顔にも、等しくにこやかな表情が浮かんでいた。

恐らく、自分より幼い子を構いたくて仕方ないのだろう。

もしこれが男だったら、ロリコン扱いの即事案扱いだ。世知辛いものである。……でもそれは向こうの世界での話か。こちらではどうなのだろうか。


「リカちゃんも訓練に参加するって話だけど。無理はしなくていいからね?」

「そうよ。お姉ちゃんたちがしっかり守ってあげるから」

「その剣重くない? 持っててあげようか?」

「……あははは……」


お前らオレに構ってないでしっかり訓練しろよ! てか、オレはホントは今年二十四になる野郎なんだぞ!? 節度を持ちなさい節度を!


なんて、言えるわけもなく。というか、彼女らの圧力にオレは押され気味で口答えできるほどの気力がわかなかった。愛想笑いが精々。

そんなところで、オレたち旅人が実力を披露する機会が回ってきた。オレは何とか少女たちを撒くと、シシリーとオーレンの元へと急いだ。




「随分と女の子に囲まれてたね、リンさん」

「おいやめろオーレン。あれは勘違いの産物だ。悲劇の産物だから触れちゃあかんやつや。なんなら変わるぞ?」

「い、いややっぱ何でもない」

オーレン達の元へ戻ると、ニヤニヤと彼が物申してきたが、そう返すとすぐに顔色を悪くした。コミュニケーション能力に優れたオーレンだが、同世代の女の子は少し苦手のようだ。まあオレの言い方も問題と言えばそうなのだが。


「……しかし、取り繕わなくてもいいのは気が楽だわ……」

今近くにいるのは、オレの正体を知っているオーレンとシシリーのみ。そのため地味に肩の凝る気を遣った口調をしなくてもいい。まださほど時間は経っていないのだが、慣れない環境で気疲れを起こしかけていたオレの精神が癒えるのを感じた。


「そういえばさリンさん。僕たちどう戦おうか?」

オレが暢気に場の空気に和んでいると、不意にオーレンがそう口にした。オレははっと我に返ると、ちらりと彼を仰ぎ見た。

「あーそうだなぁ。……っとその前に。一応この演習の間はリカと呼んでくれ。まさか勘繰られることはないだろうけど、エリスさんなんかは元のオレを知ってるからな」

オーレンの言葉にそうくぎを刺した後、オレは小さく唸った。

「どう戦う、か。確かに今回オーレンはサポートで直接戦う予定じゃないもんな」

戦う順番の回ってきたグループは、魔物が現れるまで少し離れたところで待機する。今のところ敵影は見えないので、こうして作戦を考える時間があった。


「今オーレンは精霊使いだよな。うーん……バフに徹してもいいだろうけど、別に必要があるかと言われると……ここらの敵ならそうでもないしな。オレとシシリーに関しては、オレが普通に前に出て、さばききれないやつをシシリーが担当するっていうのでいいと思うが。オーレンは……見学?」


「け ん が く!」


まだ低レベルのオレとシシリーのフォロー役として同行してもらっている彼なのだが。正直に言ってしまうと、彼の力がいる場面というのは今のところない。街の外へ出てすぐのこのあたりならば、自分たちのレベルでも十分対抗できるし、仮に敵の数が多くさばき切れない状況に至ったとしても、新人騎士のおかげで頭数が足らないということは起こらない。そもそも現状彼の力は過剰に過ぎる。なんならこれだけのレベル差があるし、素手でも十分即殺できるのではなかろうか。

そのため彼が何かしたさそうな雰囲気を出しても、オレには提供できる仕事は思いつかなかった。



「……リカさん。来ました!」

とそこでシシリーが平原の向こうを指さして声を上げた。つられて視線を動かすと、今まさに地面に渦巻いた黒い靄が高さ方向に伸び、小型の犬のような魔物へと形を変えた。

低級の魔物などは、このように大気中や大地の魔力を吸い込んで魔界から都度具現化する……という設定らしい。高位のものは自らの魔力を用いて具現化するだとか、以前具現化した低級が年月を経て強個体となるだとか色々と魔物についての云われがあるということを、オレはジェリクから聞いた。当のジェリクが言うには、そういうことを研究する学問がこの世界にはあるらしいとのこと。少し興味が惹かれないこともない。


とまあそれはそれとして。戦闘に集中しないとな。


気を取り直して、オレは腰に差した剣を抜く。市販で売ってあった安物のショートソードで、非常にシンプルなデザインのそれを正面に構える。

「三体か」

目前に現れたのは、犬型魔物が三体。姿を現すと早速オレたちに対して唸り声を上げ始めた。


「シシリー。左端のやつを狙えるか? そのあと、少しだけ相手を頼む。それに気を取られている隙に、オレが他の二体を何とかする。オーレンはそうだな、敵が増えたら教えてくれ」

「分かりました!」

「りょうかい。でも、リン……リカさんは二体相手で大丈夫なん?」

オレの指示を受けて、シシリーは双銃を腰から抜いた。一方オーレンはオレたちから離れ始める。と思ったら、すぐに立ち止まってそう口を開いた。何なら手伝うよとでも言いたげな彼に対して、オレは小さく肩をすぼめる。


「近接のやることは、敵を倒すことも勿論だけど……なにより後衛の壁だろ? こいつら二体くらいなら相手どらないと、先が思いやられるじゃん。練習だよ、練習」


ふっと口元をゆがめながら鼻を鳴らしてみる。オレ自身としては、カッコいい感じじゃないかという思いなのだが、果たして外から見たらどうだろうか。


……ドヤ顔可愛いとかだろうな。


この格好では、どうしてもカッコいいよりは可愛いが先行してしまいがちだった。


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