俺は普通に生きていた筈だ!
何が起こっている?
俺こと如月涼介は自分の今見ている状況を理解できていない……
待て、俺は平凡に生きていた筈だ。
普通に母親に叱られながら起きて、学校へ行き
いつもの友達と悪ノリをして生活している。
ルックスも平凡、頭も運動神経も平均。
そんなTHE普通の俺が………
なんで、クラスでボッチの女子に助けられてるんだ?
時間は数時間前に遡る……
「今日、どっか行こうぜ」
「カラオケとか?」
「涼介は音痴だろ?」
「音痴じゃねぇっての!」
俺は昼休みに友達の田中優と山本敦と放課後の予定を話していた。
そこに一人の黒髪の世間で言う美少女が入ってくる。
彼女の名前は坂本龍美。
珍しい名前で、龍に美しいとかいて゛たつみ゛と読むらしい。
話したことはないが、クラスメイトとしては存在をなんとなくは知っていた。
俗に言う彼女はボッチだ。
昼休みも一人で弁当を食べながら本を読み。
誰かと話している所も、声を聞いたことすら俺の記憶にはない。
「また、一人だぜ。寂しくねぇのかな」
「良いんじゃない?彼女、なんとなく話しかけづらいし……」
「おい、山本……そういうのは本人には聞こえないように言おうぜ」
俺は山本を咎めると、坂本に目を向ける。
本人はさも気にしていないのか、すました顔で本のページを捲っていた。
それからは、退屈な授業を乗りきり放課後になったは良いが……
二人に急な予定が入り、一緒に帰ることができなくなった。
俺はいつも通りに学校を出て、自宅への道を歩いていた。
そこで俺は忘れ物の課題の存在を思い出してしまう。
「ああ、まずいな。数学の先生、厳しいんだよな~」
このまま家に帰っても良いが、先生に怒られるのは俺としては避けたい。
俺は家に進めていた足を学校の方角に向けて、ダッシュした。
「結局、遅くなった………はぁ……」
俺はもう暗くなった帰り道をとぼとぼ歩いていた。
とりあえず、母親の怒号が飛んでくることには変わりない。
しばらく歩いていて、違和感に気づいた。
「俺、普通に帰り道を歩いてるよな?なんで、見えてくる筈の家が見えねぇんだよ……」
普通に帰り道を歩いてる筈なのに、空は紫なのか赤なのかとにかく不気味な色だった。
突然のことだった……
俺の目の前に黒いもやが集まり始めている。
そしてそれは獣の形を形成して、狐のお面のような顔が現れる。
それは俺の4倍はありそうだ。
その獣は見下ろして視界に入れた俺をいきなり襲ってきた。
「うわぁぁぁぁっ!!」
俺は走る……
今までにこんなに速く走ったこともなかった。
でも、今はそんなことを考えてる余裕は俺にはない!
「(殺される殺される、殺される!!)」
俺は夢中で走ってる中で行き止まりの路地に運悪く入ってしまった。
案の定、俺の目の前には行く手を遮るコンクリート……
振り返ると、俺を襲っている化物……
ウソだろ………俺、死ぬのかよ……
まだ、死にたくない……彼女だってできてないのに……
「誰か、助けてくれぇぇ!」
「分かったわ」
凛とした声が聞こえた。
顔を上げると………そこには……
「貴方を助けるのが私の使命」
赤の三角帽子に赤と金の装飾のマント……
まるで、魔法使いのような格好をした
坂本龍美であった。
「我に宿りし英雄の魂よ、汝の力……今ここで解き放て!」
彼女は持っていた二丁の銃を構えた。
銃の銃口からは赤の魔方陣が現れて、撃つと同時に炎が化物に向かって飛んでいく。
化物に着弾したのか、化物は炎に包まれ金切声のような音をたてて体が黒い砂になって消えていく。
その時に、狐のお面のような顔がパキリと割れて黒い砂になって消えてしまった。
俺はヘナヘナと座り込んだ。
そんな俺を彼女は無表情で見ている。
「お前は……何者なんだよ……」
「私は坂本龍美、坂本龍馬の魂を宿した通りすがりの魔法使い」
「は?はあぁぁぁ!?」
不気味な空の下で俺は叫び声を上げた
それが、俺と彼女……坂本龍美との物語の始まりだった