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94、モモ、アイディアを出す~もったいないって言い代えると大事にしようってことかな?~後編

「それね、もう花束としては使えないからもったいないけれど処分するのよ」


「残念ですね」


「えぇ。手塩にかけたものだからいつも心が痛むわ。だけど、これをお客さんにお出しするわけにはいかないもの」


 戻って来たエマさんがレリーナさんと話している。仕方なさそうな顔をしてるけど、目が本当に名残惜しそうに見えた。本当は大事に育てたものだから捨てたくはないんだろうね。なにか花束以外の使い方はないかなぁ? 桃子は頭の中で、元の世界でお花を他にどうやって使っていたかを頑張って思い出す。


 お花……お花……花風呂……お刺身に乗ってた……お魚……美味しい……はっ! 逸れちゃったよ。お花、お花と、ぶんぶん頭を振って食欲を追い出す。お魚大好きだし、ちょっとお刺身が恋しいものだから、誘惑されちゃったよ。


「あっ、こういうのはどうかなぁ?」


 桃子はあることを思いつくと、特にくたった花を選んで纏めて編み始める。幼稚園の頃、花の冠を作ったことを思い出したのだ。茎を巻きつけながらある程度長さを作って、最後に輪っかになるように繋げれば出来上がりだ。簡単だし見栄えもいい。草臥れた花も随分と生き生きとして見える。


「まぁ! とても可愛いわ!」


「なんて美しい……モモ様、この素晴らしいものはなんと言うのですか?」


「私は花冠って呼んでたよ。これを、こうして頭の上に被って、子供はお姫様ごっこして遊ぶの。大人はね、結婚式の時に髪飾りとして使ったり、お家で飾る人もいるよ?」


「モモちゃん、この案使わせてもらってもいいかしら? 花冠の作り方をぜひ教えてちょうだい! 売り上げの一部を貴方に払うから、お願いよ」


「いいですよ。でも売り上げの一部はいりません。昨日美味しいお昼を貰ったから、そのお礼です」


「でも、それじゃああんまりにも悪いわ。これ、売れると思うの。だから、モモちゃんもちゃんと貰わなきゃ。ご両親とお話をさせてちょうだい」


 エマさんが真顔でそう言ってくれる。自分が得するだけを考えていないのだから、良心的な人だ。これって授業で習った知的なんとか権みたいなのが絡んでる感じかな? アイディアの使用料? でも、元の世界にあったものだし本当に気にしなくていいんだけどなぁ。それにしても、両親を求められるといつも困るね。


 桃子は助けを求めて美人な護衛さんを見上げた。困った時のレリーナさん頼り! その視線を受け止めて、レリーナさんが対応してくれる。


「エマさん、申し訳ないのですがこちらにも事情がございまして。保護者の方に会わせることは可能ですが、少しお待ち頂けないですか?」


「えぇ、待つのは構わないけれど」


「モモ様、プレゼントをお渡しになる際にお話したらどうでしょう? きっとお怒りにはなりませんよ」


「そうかな?」


「えぇ。驚かれはしましょうが、一緒に考えてくださいます」


 レリーナさんの太鼓判を押されたので、その可能性が高いかも? バル様の驚く様子はちょっと見たい。最近はだいぶ無表情でも感情が読めるようになったけど、いつもクールで格好いい姿しか見られないから。それはそれで眼福なんだけどね。嫌な驚きじゃないのなら、ドッキリみたいで楽しそうだ。


「うん、わかった。お話してみるね! エマさんをちょっと待たせちゃうことになるけど、それでも本当に大丈夫ですか?」


「いつでも構わないわ。ありがとうね、モモちゃん」


 エマさんの目尻に皺が寄る。祖母が笑った時と同じ部分を見つけて、なんとも言えず嬉しくなった。





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