表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/372

78、モモ、お仕事をする~小さくても目標を持つことはいいことです~後編

「どうせ、興味本位なんだろ」


「そんなことないもん!」


 聞き捨てならなくて、思わず反論する。だって、この仕事を得るためにレリーナさんにも手間をかけてもらったんだから。そういう事情も知らないで決めつけられるのは嫌だ。桃子の中で五歳児も両頬を膨らませて抗議している。絶対に完遂してやるって気持ちは誰よりも強いよ!


「ギル、言いすぎだよ。あなたが貴族を嫌うのは勝手だけど、こんな小さな子を理不尽に責めるのは止めなさい。生まれや家族は誰にも選べないんだから」


「モモ様も落ち着きましょう。お気持ちは私が十分わかっていますよ」


「……ふん」


「ごめんなさい」


 睨み合いに発展しそうだった所をリジーとレリーナさんが止めてくれたので助かった。桃子もムキになったことを恥じて謝る。五歳児に引きずられていたのもあるけど、十六歳の桃子も怒っていたのだ。


「仲直りしたのなら、私はモモちゃん用に木箱を持ってくるわね?」


 エマさんはにこにこしながら、部屋を出ていく。作業台は桃子の背丈より高いので、台代わりになるものがあるのはありがたい。始めるまでに時間はありそうなので、リジーの隣に行くことにする。ギルとリジーの間に作業台があるので、これ以上は喧嘩にならずにすむだろう。


「あの、リジーも仲介屋さんから依頼を受けたんだよね?」


「そうよ。わたしは十七だから、本来ならもっと上の依頼も受けられるはずなの。だけど、請負人になって日が浅いから駄目って断られちゃってね。いずれは害獣討伐にも出るつもりよ。でもその前に、仲介屋から依頼がもらえるように経験を積まないと」


「害獣をやっつけるのって危なくないの? ルーガ騎士団の人達もするって聞いたよ?」


「危ないかもしれないけど、わたしは自分の力を示したいの。ルーガ騎士団になんか負けないわ!」


 リジーの目の色が変わった。ルーガ騎士団をライバル視するなんて、意識が高いんだなぁ。体つきは十六歳の桃子よりも背が高いだけで、一見すると鍛えているようには見えない。でも、もしかしたら物凄く運動神経がいいのかもね。


 スレンダーな体形、つまりお胸があんまりないのでそこに親近感が湧く。そうだよね。誰もがお胸に恵まれているわけじゃないよ! 世界基準がどのくらいなのかわからないけど、お胸のなさで異世界1位を取る可能性が減っただけいい。……同率1位の可能性があることは忘れよう。


「さぁさぁ、これでモモちゃんの可愛い顔がよく見えるわね」


 リジーと話していると、エマさんが木箱を持って来てくれた。桃子の足元に置けば、作業台の高さがちょうど良くなる。


「リジー、モモちゃんに作業の仕方を教えてあげてね。私は桶に水を入れてくるわ」


「はい、わかりました。それじゃあ、モモ。一緒にやりましょうか」


 作業台の上には色分けした花々と白い紙が分けて置かれていた。まずは、白い紙を前に持ってきて、その上に右から順番に花を一つずつ乗せていき、茎を紐で縛る。最後に紙と一緒にクルクルっと巻いて、下を折り曲げて捩る。完成した花束は、床に置かれた桶に立てかけて出来上がりだ。


「簡単でしょ?」


「うん!」


「今度は自分でやってみて。わたしも仕事に戻るから」


 ギルとリジーの前に置かれている花もそれぞれ色と種類が違うようで、そちらも目に楽しい出来栄えになるようだった。こういう綺麗な花束を贈ったら、バル様も喜んでくれるかな? 


「モモ様」


 レリーナさんの声に我に返る。いけない、いけない。お仕事中はお仕事に集中しないとね。桃子は傍で控えるレリーナさんに頷き返して、さっそく白い紙を手に取った。 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ