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74、モモ、おしゃべりをする~大事な人達の笑顔を想像すると頑張りたくなるよね~

 最近、バル様と就寝前ののんびりタイムを過ごすのが楽しい。普段は騎士団のお仕事で忙しそうだけど、その時間は桃子の話相手になってくれるのだ。今日もベッドに腰を下ろしたバル様の隣に、ちょこんと座っておしゃべりをする。


「今日はなにをしていた?」


「レリーナさんと外にお散歩に行ったよ。楽しかった」


「そうか。買いたいものがあれば自由に買っていい。巾着の中身は足りてるか?」


「全然使ってないから大丈夫だよ。バル様、次のお休みはいつ?」


「五日後だ。そろそろ繁殖期だから忙しくなる。繁殖期は害獣の狂暴性が増すために、普段外を出歩かない害獣も姿を見せて人を襲うようになる。屋敷に帰れない日も増える」


「バル様も、戦いに行くの?」


「あぁ。討伐にはルーガ騎士団全体で取りかかる。どの国もそうだが、この時期は害獣の排除が最優先事項だ。モモには寂しい思いをさせるかもしれないな」


「じゃあ、今の内に抱っこ!」


 桃子はお風呂上りでいつもよりほっかりしているバル様に飛びついた。寂しくなるのは間違いないから、甘えておこう! 固い胸板に猫のようにゴロゴロ懐く。人肌が気持ちいい。力強い腕が伸びてきて、胡坐をかいた膝に桃子を乗せて緩く抱きしめてくれる。はぅー、ほっとするよぅ。


「バル様、バル様、前後に揺れて」


「……こうか?」


 バル様は言う通りに身体を前後に揺らす。ブランコに乗っているように桃子も一緒に揺れる。それがもんのすごく面白い。


「あははははっ」


「これが楽しいのか?」


「うん!」


「そうか。だが、そろそろ寝なければな。子供の身体に夜更かしは毒だ」 


 もう少し遊んでほしいけど、そう言われちゃうとね。それに、バル様は明日もお仕事だもん。我儘はダメ! ヤダヤダと駄々をこねたがる五歳児を押さえて、しょぼんとしながら、バル様の胸元から手を離す。桃子の表情を読んだのか、頭を撫でてくれた。一緒に美声も降りてくる。


「休日はどこか一緒に出かけるか?」


「バル様と一緒ならどこにも行かなくてもいいよ。お屋敷でのんびり過ごすのも好きだもん」


「モモがそれでいいのなら、昼間はそうしよう。カイとキルマがモモに会いたがっていたし、夜は二人を食事に誘おうと思っているんだが、どうだ?」


「いいと思う!」


 ぱっと顔を上げる。その時には桃子も自分で稼いだお金で何か用意出来ているといいな。その為にも、明日は頑張らなきゃね!


「おいで、モモ」


「はーい、お邪魔します」


 バル様はベッドに肘をついて半分だけ身体を起こした状態で、シーツを捲って桃子を呼ぶ。女の子ならどきどきしちゃうシチュエーションだけど、ここに居るのは残念なことに五歳児です。格好いい人だから、指先で呼ぶ姿にも色気があって、フェロモンがぶわーって出てる。これはくらっときちゃうね! 


 桃子もない胸をどきどきさせてバル様の懐に潜り込む。頭はふわふわクッションに守られており、身体を丸くすると背中に腕が回ってくる。部屋の中がふっと暗くなると、一瞬、神殿の夜を思い出して心が寒くなった。けれど、抱きしめてくれる腕に少しだけ力が入り、そのあったかさで寒さはすぐに遠くなる。


「……ふぁ」


 欠伸を一つ零すと、とろとろと眠気がやってきた。バル様のゆったりした呼吸に誘われて、桃子はすとんと眠りに落ちていった。




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