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72、モモ、働きたがる~集団を纏められる人は不思議な魅力があるんだよ~中編

「待ってください。貴方とも会話が成り立ったように、この子は外見よりも知能が高いのです。規則的に問題がないのならば、ギャルタスさんと直接お話しは出来ませんか? そこで許可を得られなければ諦めますので」


「頭目とお知り合いでしたか。では、そのようにいたしましょう。すぐにお呼びいたしますので少々お待ちください」


 お姉さんは頭目さんの名前を聞いて安心したように微笑んだ。レリーナさんに向けられていた不審な様子も消えている。なんとかなりそうな予感に少し不安が減った。首をひねって見上げたら、にっこりと微笑まれた。有能なメイドさんは護衛になっても有能ですね!


 レリーナさんに床に下ろしてもらって、頭目と呼ばれた人を待つ。ええっと、ギャル、なんとかさんだったね。ギャルさん、だと派手なお化粧をしてて、まつ毛がバッサバッサしてる女子高生が思い浮かぶ。違う違う。男の人だよね、たぶん。そうしたら、派手なメイクをしてるムッキムキの男の人が……いやいやいや。違うよね?

 

 桃子が頭目さんの姿を想像していると、お姉さんが男の人を連れて来た。年は二十代後半くらいかなぁ? 深い緑色に、薄緑の目をしてる。スポーツが上手そうな爽やか系お兄さんだね。……よかった。自分の想像にどぎまぎしていた分、力が抜ける。


「レリーナじゃないか! 久しぶりだなぁ。元気にしてたか?」


「えぇ、おかげさまで。ギャルタスさんもお元気そうですね」


「あぁ、週に二回は討伐に出るくらいには元気だ。まだまだ現役は辞められそうにない。子供を連れて来たと聞いたが、その子か?」


 薄緑の目が穏やかに見下ろしてくる。桃子は背筋を伸ばしてご挨拶した。


「初めまして、頭目さん。モモと言います」


「オレはギャルタス。まぁ、店長みたいなもんだな。働きたいんだって?」


「はいっ!」


「んー、身体が小さいのが気になるが、受け答えもしっかりしてるな。レリーナが保護者として監督するってのは聞いたけど、メイドは辞めてこの子の家庭教師かなにかをしてるのか?」


「兼任ですよ。貴方にご紹介頂いた所で今も働いております」


「ってことは……」


 何回も呼ばれていたから名前がわかったよ! ギャルタスさんは桃子を見て驚いた顔をした。あぁ、たぶんバル様のお屋敷の子だって認識されたんだね。でもさすがは頭目と呼ばれるだけあって、そこで詳しく聞かれはしなかった。代わりにカウンターの奥を親指で指す。


「奥で話そうか。いいかな? モモちゃん」


 モモちゃんなんて、この世界で初めて呼ばれたよ。気恥ずかしい気分でこっくり頷くと、ひょいっと抱き上げられた。半袖から覗く筋肉が良い筋肉! 近づいた爽やかなお顔の中で緑の目が冷静に桃子を見下ろしているのが気になるけど。怪しい子じゃないよ! 


「いい子だ。アイリッシュ、お前は仕事に戻ってくれ。オレはこの子ともう少し話をして判断したい。レリーナもいいな?」


「構いませんよ」


「はい、頭目」


 レリーナさんとお姉さんの返事を聞いて、ギャルタスさんは桃子を抱えたまま店の奥に向かっていく。レリーナさんが後ろを付いて来てくれるので、緊張はないけど、慣れない腕の中はお尻が落ち着かないね。バル様の腕がちょっぴり恋しい。


 もぞもぞしている内に、ギャルタスさんは足早に受付けを通り過ぎて廊下を奥に進んで行くと右手にあった扉を開く。ソファとテーブルが置かれており、正面の壁には地図がナイフで留められている。


 豪快な留め方だねぇ。あれって、普通の地図かな? それとも、もしかして、宝の地図だったり? ロマンの香りに桃子の中の五歳児が元気な声を上げる。ふぉぉぉっ! 見たい! すんごくあれを見たい!ついつい衝動のままに身を乗り出すと、二つの笑い声がした。


「ははっ、そんなに地図に興味があるのか? あれはこの国の地図だから、モモちゃんも見たことはあるんじゃないか?」


「うふふ、この子はまだ幼いですから見たことはないかもしれません。お家に帰ればおそらくあると思いますよ」




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