69、モモ、ルーガ騎士団に行く~受け入れてもらえるのは幸せなことだよね~後編
「がっはっはっ、最近の若い者は元気だなぁ!!」
大声で笑い出したのは筋肉ムッキムキなおじさんだった。年齢は四十代後半で、焦げ茶色の髪と同色の目をしている。からりとした笑い声は嫌味がない。うん、なんか個性的な人が多いねぇ。
「ルダさん、笑いごとではありません!」
「あ、あの、争いは止めましょう。幼い子供の前ですし……」
気弱な声が止めにかかる。こちらは内気そうな女の人である。一番小柄で肩までの栗色の髪が内側にカールしている。目は癒しの薄緑だ。困り顔でわたわた両手を前に突き出している。子ウサギみたいで可愛いね。プルプル同盟結ばない? って声をかけてみたくなる。桃子も慌てたり恥ずかしい思いをした時にそうなるので、気持ちはわかるよ。すんごくわかる。
「モモは普通の五歳児ではない。こちらの話も理解出来ている。だから本人の意思が重要なのだ」
「のん気にしか見えないぜ?」
お兄さんが疑わしそうに桃子を見下ろす。にこーっと笑いかけたら、さらに半眼になった。駄目な反応だった? ごめんね。シリアスするのは疲れるから、このくらいがちょうどいいと思うんだけどなぁ。特に異世界で生きるには。
桃子はトーマの指摘通り、至ってのん気に考えていた。
「では、本人に聞いてみよう。モモはどうしたい? 一般的には、神からの加護を受けた者は特別視され敬われる存在だ。その存在を欲しがる国も多い。その代わり悪意のあるなしに関わらず狙われる可能性も大きくなる。ミラの場合は馬車で移動中に美の神が降臨してしまったがために、意図せずに大々的に発表することになったが、お前は今なら選べるぞ?」
美神様、そんなことしちゃったんだね! まさかの場所で登場である。きっと皆口を開いて驚いたんじゃないかなぁ。軍神様の時も皆固まっちゃったもんね。ご好意から与えてもらったんだから、大事にしなきゃ。選べるなら答えはこれだよね?
「発表はしたくないなぁ」
「はぁ? なんでだよ?」
お兄さんがわけわかんないって顔をしてる。神様から加護を得たことは、誇らしいことなのにって考えているのだろう。だけど、リスクを冒してまで誇ることではないよ。バル様に迷惑をかける可能性を天秤にかければ、どちらに傾くかは決まっている。それに、私じゃあねぇ。なんだこの幼児はって見た人ががっかりしちゃいそうだよ。
「神殿のことでバル様達に迷惑かけてるから、危険は避けたいよ。あとね、目立つと屋台で気軽に買って食べたり出来なくなるから、やだ」
バル様とまた一緒に食べたいからね。桃子は笑顔で保護者様を見上げた。それだけで通じたのだろう。バル様の目がふっと細まる。
「これはトーマの負けだな!」
おじさんが笑顔で判定を下す。やった、勝ったぞ! ……なにが? 桃子はとりあえず喜んでからおじさんを見上げた。分厚い手の平でぐりぐりと頭を撫でられる。ふぉぉ、重い!
「……ふーん?」
お兄さんの目の色が変わった。疑わしいものから、これなんの生物だっけ? という目で桃子を見てくる。分類的には日本産の女の子だよ?
「納得したか? では、モモに順番に紹介する。一番隊長、ダナン・ロークン。二番隊長、トーマ・ナビン。六番隊長、ケティ・キオリア。七番隊長、マーリ・イリファス。八番隊長、ルダ・カカオ」
バル様に一人ずつ紹介されたけど、香ばしそうな香りのカカオしか頭に残ってないよう。えーっと、ダナンさんが眼力の人で、トーマさんがズバリな人、ケティさんがプルプル同盟候補で、マーリさんが清純な人、最後にルダさんが筋肉! これで大丈夫かな?
「五人も覚えるのは大変でしょうから、わからなくなったら聞けばいいですよ。誰も怒りませんからね」
うんうん唸っている桃子を見かねたのか、キルマから助け船が出された。ありがとう! 周囲の人からも反対の声はなかった。複数の優しい視線がくすぐったい。
「これから、よろしくお願いします!」
桃子は五人に笑顔を向ける。神殿の事件の時には、痛いことも苦しいことも体験した。でも楽しい思い出もある。小さな友達や助けてくれる人も見つけた。だから大丈夫、頑張れそう!
いつか、この世界に来て良かったなぁ、幸せだなぁって、心から思える日がきたらいいよね。桃子はそう思っていた。
これにて第1部は完結となります! 猛ダッシュ、時々息継ぎで書いてきましたが、ここまでお付き合い頂きまして、本当にありがとうございました。
ここで一度、まったり休息タイムに5日ほど入りたいと思います。それから第2部をのんびりと開始する予定です。
少しお待たせすることになりますが、第2部もお付き合い頂けたら嬉しいです。 天川




