68、モモ、ルーガ騎士団に行く~受け入れてもらえるのは幸せなことだよね~前編
王様達と顔合わせした翌日、桃子はバル様に連れられてルーガ騎士団本部にお邪魔していた。
バル様の後を辿るように付いて行ってるけど、騎士団に子供の姿が珍しいのか、物珍しそうな視線が飛んできてくる。怪しい子じゃないよ! そうアピールしようと思って、桃子は時々団員のお兄さんやお姉さんに手を振りながら廊下を歩いた。
中には振り返してくれる人も居て、これが楽しい。自然とにこにこしてしまう。心が弾むまま、廊下をスキップしたくなる。バル様が見てない隙に、ぴょこぴょこしていたら、何か感じ取ったように突如バル様が振り返った。桃子はビタッと止まる。
バ・ル・さ・ま・が・止・ま・っ・た! 達磨さんが転んだの要領で頭の中で言ってみる。見つめ合ったまま動かない二人。目でなにかを語っているバル様に聞きたい。あの、まだ動いちゃ駄目かな?
「モモ、跳ねながら移動するのは危ない」
「なんでわかったの……?」
「窓に映っていた」
右窓をちらりと見てバル様が静かにおっしゃった。全て丸見えだったんだね! バレてないと思っていただけに羞恥心が爆発した。恥ずかしい……。五歳児の思うがままに行動して、その度に羞恥心に内心転げまわっているよね。
小さなオツムは学習しないのか、同じことを繰り返している気がする。ううん。気がするじゃなくて繰り返してるよねぇ? わかってるんだけど、わくわくすると楽しくなっちゃって、ついつい五歳児の欲望のままに行動しちゃう。桃子の中の五歳児は今日も元気いっぱいです。
結局どうなったかというと、バル様の腕に捕縛されております。階段を上って廊下に出ると、バル様は桃子を下ろして正面の扉を開いた。
そこには五人の男女とキルマがおり、一斉に振り返られた。急に見られてびっくりする。だけど、その人達の方も驚いた顔をしていた。
「待たせたか?」
「いや、副団長から説明を受けていたからな」
答えたのは鋭い眼差しの男の人だ。ジロリと見られて思わずバル様のズボンの裾を握りしめる。だけど男の人は困ったようにそのまま首を傾げた。た、たぶん、この人これが普通の顔、なんだね。眼力が強すぎるから子供には怖がられそうだ。というか、桃子の中で五歳児がプルプル震えてる。目が怖すぎるよぅ。
「そうか。では詳しく話す必要はないな。神殿の件で軍神より加護を受けた子だ。名はモモという。訳あって、オレが保護者を務めているが、もし困っているのを見かけたらオレかキルマ、またはカイに知らせるか、手助けしてやってほしい」
「それは構いませんが、大々的に発表しないのですか? 加護を受けたことは喜ばしいことですのに。民の間でも微かに噂になっているようですよ」
こちらは綺麗なお姉さんだ。緩やかな波を打つ白に近い金髪を背中に流して、薄桃色の瞳をしている。淡く微笑んでいる姿が、シスターをしてそうな清純な空気を纏っていた。空から天使がラッパを吹きながら降りてきそう。
「モモの意思を尊重しようと思う」
「こんなガキにそんな大事なこと決められんのかよ?」
こう言ったのは、片耳に小指を突っ込んでいかにもダルそうにしている青年だった。こっちは赤茶色の髪に紫に近い目をしている。うーん、ディーと雰囲気がちょっと似てるけど、この中ではだんぜん年下っぽいね。それにこの人の方がガラが悪そう! 目が合っただけで、なんだこら、喧嘩売ってんのか、とか、言い出しそう! あくまで桃子の印象である。
「トーマ!」
「あんだよ、副団長?」
「その態度はなんです。まったく、あなたといいディーといい。少しは場を考えなさい」
「あんたは細かすぎんだよ。そういうとこ見ててダルいぜ」
「トーマ!!」
ずばっと言っちゃった! キルマが怒声を上げて怒ってるのに、しらっと顔を逸らしちゃってるよ。すごい態度だけど、でも率直な分この人は嘘はつかない気がするなぁ。




