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65、モモ、王様達と面会する~まるく終われば全てが良しになります!~中編

 真っすぐ背筋を伸ばして、バル様の後に続いて開かれた扉の先に入室する。


 五段の階段の上に、王座と呼ばれる金色の椅子が2脚設置されており、そこに座したのはバル様と面差しが似た美形さんだった。癖のある長い白髪を後ろで結い上げおり、涼し気な青い目に楽し気な色が見えた気がした。宿る色彩は違うけど、間違いなくバル様のお父さんだ。


「ようやく相まみえたな。ジュノール大国が国王ラルンダ・エスクレフ・ジュノールだ。異界よりの迷人メイトよ、名乗るがいい。」


「水元桃子です。バル様達からは名前の桃子からモモって呼んでもらってます」


「そうか。では、わたしもモモと呼ぼう。バルクライ、神殿の件、お前の口から報告せよ」


「……はい。元大神官ダマル・ナルイータはモモを攫い、軍神ガデスの身代わりをさせようとしていたようです。許可なく召喚を行った上に失敗となれば、陛下の叱責は免れません。それを回避しようと画策したことは、本人の口から自白されております。また、本人が大神官に就くにあたり、周囲に金を撒いて支持を得たとの話も他の者から入りましたので、引き続き厳しい取り調べを行っております」


「モモについてはどうだ?」


「大神官に抗おうとした行為が軍神ガデスの目に止まりました。本神から、加護を得たことをご報告いたします」


「ほぉ、迷人メイトの上に軍神の加護とは、希少な子供が我が国に降りたものだ。だが、その子供が我が国に齎すのは、幸いか、災いか……」


 流し目が桃子に向けられる。青い目に冷酷な閃きを見つけてドキリとした。さすが王様、迫力が違う。それに今回の件も桃子という存在が居なければ起こりえなかったことだ。そう思うと、ちょっぴり落ち込んでくる。良くしてもらった人達に迷惑をかけるのは悲しい。


 バル様達と一緒に居たいし、バル様自身がそう言ってくれたけど、王様がもし命じたら……心がしょぼんとした。ファイティングポーズも下ろして、厳しい言葉を浴びるがまま俯くと、バル様にぐっと身体を引き寄せられた。


 見上げればなんとなく心配されているのが伝わる。守ってくれようとしているんだね。弱気になってごめん。大丈夫、ちゃんとお話を聞くよ。その上で一緒に居たいってお願いしてみよう。


「それともバルクライ、お前がこれから起こるだろう騒動を全て収められると?」


「必要ならば。もし、災いが降りかかった時はオレが防ぐ。モモと共にあることを約束したからな」


「珍しいことよ。お前がそれほどまでに執心するとは。数ある縁談を断り続けたは、このような幼子が好みだったが故か?」


 揶揄いを含んだ言葉に、バル様はため息をついた。本気ではないことをわかっているのだ。王様VS第二王子の体になってきているよぅ。桃子はハラハラと見守るしかない。


「違う。……彼女は本来ならば十六歳だ。今は無理な召喚がたたり五歳児ほどになってはいるが。軍神によれば一年セージを与え続ければ元に戻れると言っていた」


「では、側室に迎えるか? 正室は周囲の声がうるさい故に無理だろうが、側室ならば許そう」


「父上はおわかりのはずだ。今、オレが婚姻して子を成せば、次期王にオレを押す声は更に高まるだろう。オレが望まないにも関わらずな。貴方は国が二分する事態になってもいいのか? なぜ、次期王をさっさと兄上に指名しない?」


「私は現状、どちらがなってもいいと考えているからだ。少し前までは第一王子を優先していたのは事実だ。しかし、バルクライ、お前は変わった。以前のお前は冷めた目で物事を見て、いつ死んでもいいと言わんばかりの人間だった。だが、その娘が現れてからか。今のお前には生きることに執着が見える。その者を残して死ねないと思っているのだろう?」


「…………」


「いい変化だ。生に執着する者は死に執着する者よりも強靭だ。バルクライ、私はお前の変化を歓迎しよう。故に、今次期王を選定するは早計なのだ。お前には不本意なれど、第二王子だろうと庶子だろうと王の器であるのならば関係はない。お前が王となる可能性もあることを、覚えておくがいい」


「オレがなるべきものではない」


「決めるのは王たるこの私だ」


 無言のにらみ合い。うひゃぉう、ビリビリした空気に足が震えるよぅ。誰か、助けてください!




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