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4、モモ、異世界にて交流する~やっぱり、挨拶って大事だよ~後編

 もしテストにこんな問題があったら、すぐに答えられそうだ。問、短時間で発見したことを述べよ。答え、とっても仲が良さそう。想像の中でタヌキの先生が丸をつけてくれたところで、美形さんが呆れた顔でため息をついた。


「お前達、いい加減にしないか。この子の名前もまだ聞いていないんだぞ?」


「名前? 水元桃子だよ。水元が家の名前で、桃子が私の名前なの。あ、じゃなくて、です。あの、たぶん異世界から来ちゃったかも、です」


「ここは公式の場ではないし、普通に話して構わない。それにしても、異世界か。あのアホどもは中途半端に力だけはあったようだな」


「神を呼びつけようとは呆れた行いです。不敬を神に罰されても文句は言えませんよ」


「そうだな。ある種、失敗してくれてよかったぜ。お姫様にはとばっちりになっちゃったようだけどね」


 信じられない顔をされるかなぁ。なんて思っていたのに、そんな心配はいらなかったらしい。

 三人は納得したように話を進めていく。進み過ぎて桃子の理解を超えそうだ。もともと容量の少ない頭がボーンと爆発する前に、三組の視線が戻ってくる。


「随分と上手にしゃべるが、年はいくつだ?」


「すごい! 鋭い! 本当はね、十六歳なの。なんかチビっちゃくなってるけど」


「召喚されたせいで何か副作用が起きてるのか? しかし今まで異界より現れた人間にそんなことが起きた報告はないはずだが……」


「詳しく検査してみたほうがいいでしょうね。モモクゥォの身体が心配です」


「美人さん美人さん、桃子だよ。モ・モ・コ。さん、はい!」


「モモクォ、ですか?」


「おしい! すっごくおしい感じだよ! モモでもいいよ? 友だちはモモって呼んでくれてるから」


「モモ、ならあってますか?」


「うん! 仲良くしてね、美人さん」


 小さくなった手を差し出すと、意外と大きな手がするりと絡まり、上下にシェイクする。よろしくよろしく。


「こちらこそ。小さなお手々で握手なんて、本当に可愛いですね。私は美人さんじゃなくて、キルマージ・サン・ティラムです。役職はルーガ騎士団副師団長です。キルマと呼んでください」


「キルマ様!」


「様はいりませんよ。えぇ、お上手ですよ」


 二人でにこにこしていると、視線を感じた。なんとなく手を離さないまま見上げると、美形さんと目が合う。そうだった。安定感がありすぎて忘れていたが、まだ美形さんの腕の中だった。


「美形さんのお名前は?」


「オレは、バルクライ・エスクレフ・ジュノールだ。一応、ジュノール大国第二王子で、現在はルーガ騎士団師団長をしている」


「わぁー、私王子様って初めて見るよ。えっと、バル……ルラウ様?」


 桃子の残念な頭では五文字の名前は覚えきれなかった。もうすでにあやふやになりつつある名前を音だけで判断してみるが、やはり違ったらしい。バルなんちゃら様は無表情で首を振る。


「バルクライ」


「バル、クライ、うーん舌を噛みそうなお名前だねぇ。覚えきれるかな。バル様、じゃだめ?」


「……それで構わない。ついでだ。お前も名乗ったらどうだ?」


「じゃあ改めまして。オレはカイ・シンフォル。役職はルーガ騎士団団員兼殿下の護衛だよ。よろしくな、小さなお姫様」


「カイ様って、一番覚えやすい。優しい名前だねぇ」


「ははっ、そんなこと初めて言われた。オレもカイでいいよ。モモは面白いな」


 カイは目を丸くして、破顔する。若葉を思わせる緑の瞳が悪戯に煌めく。その笑顔には、夜のホストを思わせる色気は影を潜め、青空を思わせる清々しさがあった。


 モモにはこちらの方が親しみがもてそうだ。それにしても三人三色の美形だ。これはさぞや女の人にももてるだろう。にこっと笑顔を見せたら、一笑みで十人は楽に釣れそうだ。まさに入れ食い状態。


 それが魚なら桃子はもれなく幸せになれるだろう。お魚大好き。マグロのお刺身を頭に思い浮かべていたら、素直なお腹が反応した。


「おなかすいた……」


 感情が年齢に引っ張られているのか、とってもひもじくて切なくなる。両手でぷっくりしたお腹を抱えて、頼るべき保護者様に、お恵みを下さいとばかりに見上げてみる。


 バル様が、無表情で固まった。あ、あれ? 駄目だったかな? 厚かましかった? でもやっぱりお腹は空いてるし、どうにも我慢が出来そうにない。おねだりしたらくれないかな?


「バル様、ご飯ちょーだい?」


「好きな物を食べるといい」


 強く抱きしめられた。どうやらお腹いっぱい食べられそう。良かった!



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