表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
332/372

330、モモ、仲間に入れてもらう~魔法って響きだけでどきどきわくわくしちゃうよねぇ~中編その三

「オレ達は具体的になにをすりゃいいんだ?」


「魔法を発現に至る過程には、セージを消費して精霊に喚びかけることが必要です。ディーカル君達は第一段階として、自分の中のセージを認識することから始めなければいけませんわ」


「二人はすでに暴発という形でセージを消費した経験を得ているはず。あの時の感覚を覚えているか?」


「実際に身体がそうなったわけじゃないんですけど、内側からの膨張感があった気がします。水魔法が暴発した時に、それが消えたような感じはしました」


「オレは全身からひたすら力が抜けてくみたいだったな。なんつーか、あれに似てる。腹が減った時」


「私もバル様と魔法の練習をした時に、お腹がスースーしました!」


「皆さん、しっかり掴んでいるようですね。セージの消耗はそれが正しい感覚です。それでは今度は自分の意志でセージを扱ってみましょう。心の中で湖をイメージしてみてください。澄んだ水に満たされた綺麗な湖がいいですわ」


 桃子は言われた通りにイメージしてみる。日差しにきらきら輝く湖。広くて深くて透明な水面には白鳥が、水中にはお魚が優雅に泳いでいる。……じゅるり。はっ、美味しそうなお魚を想像して、食いしん坊なお腹が鳴りそうになってしまった。大事なのはお魚じゃなくて、セージ! 


 湖の方に意識を向けると、こぽりと音もなくなにかが水底から溢れて──……桃子は胸元に熱を感じて目を開く。熱が全身を巡り温かい。バル様にセージをもらった時に似ている。不思議な気分で胸元を触っていると、マーリさんが驚いた顔をして教えてくれる。


「まぁ! こんなに早くお出来になられるなんて!」


「モモ様はセージを操るのが上手いようだ」


「えへへっ、本当ですか?」


 褒めてもらった桃子は、声を弾ませる。途端にセージが散りそうになってしまって、慌てて意識を戻す。もっと集中しなきゃ! 眉間にぐぐっと力を入れて真剣にセージを操ろうとしていると、そんな桃子の肩をとんとんと叩いてバル様がアドバイスをくれた。


「力み過ぎだ。もっと身体の力を抜いて、意識だけでセージの流れを辿るようにしてみるといい」


 リラックスー、リラックスー。私はこんにゃく。柔らかくてふにゃっとしたこんにゃくなの。心の中で自分に暗示をかけるように呟いて、桃子はバル様の言う通りに力を抜いた。そうして、セージの流れを辿るように胸元から指先に意識を這わせる。途端にあっちこっちにわぁっと広がりそうになっていたセージが一つにまとまっていく。細い紐のようだった力の流れが太く力強いものへと変わる。


「いいぞ、モモ。そのまま水の魔法を使ってごらん」


「はいっ! ──水の精霊さん、力を貸して!」


 一度は使うことが出来た魔法だ。桃子は出来ると信じて、水の精霊を喚んだ。途端にどこからともなく青い光がちょっぴり集まってくる。渦を巻いた青い小さな光はやがて一つの青い閃光になった。と同時に共に空中からどばしゃぁっと水が飛び出す。まるでバケツで水を勢いよくかけたような光景に、桃子はおおっと目を大きくする。本当に自分の力だけで魔法を使えた!


 パチパチパチパチッ。そんな音に振り向くと、頬をぽっと染めたレリーナさんが一人で盛大な拍手してくれていた。 


「お見事でございます、モモ様!」


「やったな! それにしても、まさかこんなに近くで魔法を見れるなんてなぁ。でも攻撃力のない可愛い魔法がモモちゃんらしいよ」


「ありがとう! ──バル様も見てくれた? 魔法でお水が出たよ!」


 桃子が興奮したまま言うと、バル様が落ち着いた口調で褒めてくれる。


「……意外な方法だったが上手に発現したな」


「びっくりしてくれた?」


「ああ、非常にな。しかし、水の魔法は威力が弱いな。風・炎・土の魔法の適性も調べてみよう。モモ、セージはまだ大丈夫か?」


「うんっ」


「おいこら、ちょっと待て! 今明らかにおかしなことがあっただろうが!? 大事な部分をまあいいやってスルーして普通に次の段階に進めようとすんな、団長」


 桃子とバル様のどこかのほほんとしたやりとりに、セージを感じ取ることに苦戦していたらしいディーが猛烈に突っ込んできた。え? 変なとこあったかなぁ? 桃子は不思議に思いながらバル様と目を合わせてパチクリと瞬く。ピンと来ていない桃子に、リキットさんが躊躇いがちに手をあげる。私がさっき手をあげて質問したから? 律儀でいい人!


「その……僕達もモモ様と同じ言葉で魔法の練習をするのでしょうか?」


「オレが聞きたいのもそれだわ。チビスケはこんなチビだからいいぜ? だけどよぉ、アレをオレ達が使うとなると地獄だろ。オレはあの呪文で魔法を使うくらいなら、これまで通りに剣だけで戦うぜ」


「隊長……ですが、それで魔法を使えるのなら僕は……っ」


「全身を震わせながら悲壮な決意をすんなって。リキット、お前が責任感や向上心がすげぇあんのはわかるけどよ、冷静によーく考えてみろ。オレ達も地獄なら見る方だって地獄だぞ? 仮に害獣を討伐するってなった時にな、団員の前であれを言えるか? 無理過ぎんだろ」


 二人共、すんごくシリアス顔で話し合ってる。崖っぷちに立たされた人みたいな危機感が全身からオーラとなって漂っているよう。桃子は好奇心の囁くままに想像してみる。私と同じように両手を突き出した二人が、妖精さんに助けを求め──……二人の言いたいことがわかったよ。ディーもリキットも格好よく魔法を使ってほしいよね、うん。桃子は二人の名誉の為に途中で想像を打ち消した。びっくりするほど想像事故だったの。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] > ──水の精霊さん、力を貸して! > 団員の前であれを言えるか? 無理過ぎんだろ ニヤニヤさせて頂きました。 ...なるほど、「アグアメンティ!!」とかを期待しちゃってたと♪ まあ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ