表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
296/372

294、モモ、親しむ~レベルはひよこだけど、お尻の殻は取れたはず~中編


「バルクライ殿下、ケティはルーガ騎士団でどのような様子ですか?」


「隊長としてしっかりと務めてくれている。6番隊は纏まりがあるいい部隊だ」


「そのようなお言葉を頂けるとは、妹は励んでいるようですね。我が家は初代国王陛下の時代より王族の方々を護衛するリグファン親衛隊としてお仕えしてきた古き臣下の血筋。そんな家柄ですから、末っ子の妹がリグファン親衛隊を目指すのではなく、ルーガ騎士団に入団すると言い出した時は家中を巻き込んでひともめあったのですよ」


「確かケティは三人兄妹の一番下だったか?」


「ええ。長男の私とは十歳違いで、ケティとの間には弟を挟みます。弟は優しいあの子を心配して反対していたのですが、ケティはとても頑固な一面がありますから、泣きそうな顔で主張されては反対しきれませんでした」


「ケティがなぜルーガ騎士団を選んだのかは知りえないが、軽々しい決意で入隊出来る場所ではない。そこに入隊し隊長となった彼女の今の立場が努力を裏付けている。たとえ所属する場所が違おうと、見つめる先や抱える思いはルーガ騎士団もリグファン親衛隊も変わりはないだろう。オレ達は外から、お前達は内からこのジュノール大国を守っていけばいい」


「貴族だけで成り立つリグファン親衛部隊と、庶民から貴族まで受け入れるルーガ騎士団ではまず成り立ちが違いますから、貴族としての矜持が高い騎士との間にはやはり確執が存在します。ですが、私も殿下と同じ考えです」


「時代は移り変わる。これまで距離を置いてきた二つの組織だが、その確執もなくしてゆくことが求められるかもしれない。城に滞在中のモモの護衛騎士についてはよい人選をしてくれたようだな。感謝している。特にユノスには審判でも助けられた」


「あの、気になっていたんだけど、審判の場にカメリアが来てくれたのは、バル様が頼んでくれたの?」


「ああ。ユノスから報告を受けた時に彼女の身の安全を守るために審判が始まるのと同時に保護するように伝えていた」


「いろいろと動いてくれてたんだねぇ。バル様、ユノスさん、それにカメリアも、本当にありがとう。カメリアがあの時証言してくれたから、本当に悪い人を見つけられたし、アニタ様も正しい裁きを受けられたよ」


 あの証言がなかったら、アニタ様は重すぎる裁きを受けて、あの人達は罪を免れて今も普通に側室として日常を過ごしていたかもしれない。


「加護者様は、ただの侍女でしかないわたくしを助けて下さいました。望まぬ罪を犯してしまったあの時も、叱責もせずに逃がそうとさえして下さいました。あの時与えていただいた温かなご恩情は、生涯忘れません」


 がばっと深く頭を下げられて、桃子は慌てて首を横に振る。


「恩なんて大げさに思わなくていいよ? 私も助けてもらったからお互い様だもん。それよりも、カメリアは大丈夫? 証言したことでお城にいられなくならない?」


 ルディアナ様が、一族もろとも八つ裂きにしてくれる! って叫んでたのがすんごく気にかかる。領地を没収された二つの伯爵家が報復になにか嫌がらせをしてきそうだよ。王様があれほど怒ったからすぐに行動を起こすことはないと思うけど……。


「問題ない。カメリアの今後については考えている」


「バル様がそう言うなら安心だね」


 打てば響くような答えが返ってきて、桃子はほっとした。よかったぁ。そうだよねぇ、私が考えつくレベルの心配を、バル様が先に思いつかないわけがないもん。桃子とバル様の会話を聞いていた二人の将軍が目で会話をしたようだった。信頼関係が透けて見える! 目と目で会話が出来るのは、やっぱりそこそこ知り合っていないと無理な芸当だよ。初対面で出来る人がいたら、その人はコミュニケーション能力が爆発してるか、超能力者だと思うの! そう思いながらバル様を見上げたら、ゆっくりと瞬きが返された。


「目まぐるしく考えているな」


 えっ、口から漏れちゃってる!? 慌てて口を両手で押さえたら、バル様の目が撓み、うっすらと口端が上がった。はぅっ、綺麗な微笑みに胸がキュンッてしちゃった。バル様の美形さんめっ!


「うぉっほんっ。あー、バルクライ殿下、モモ様は大変仲がよろしいようですな」


「そう見えたなら嬉しいよ。ジオス将軍とゲイン将軍も仲良しだよね?」


「ふっ、そうですね。ですが、私よりゲイン将軍は父上との方が仲良しですよ。──ああ、もうお越しのようです」


 突然廊下に足音が近づいてきた。貴族のおじさん達がこっちに来ちゃったのかな!? 慌てて加護者モードに表情を引き締めようとしたら、四人が廊下の端によけて頭を下げた。桃子もつられて一緒に付いて行こうとしたら、バル様にひょいっと抱きあげられた。


「モモはここだ」


「うんっ」


 バル様の胸元をちょこっと握らせてもらうと、廊下を曲がって王様と王妃様がやってきた所だった。


「先程の推理は見事だったぞ、モモ! 実に胸のすく思いをした!」


「このようなところで騒ぐでないわ。一室用意してある。バルクライとモモ、それからそこの者達も共に参れ。話がある」


 興奮気味の王妃様を窘めて、王様が静かな声でそう言った。これからどんなお話をするんだろうね、バル様?






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ