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27、モモ、新たな仲間が加わる~ふりっふりの洋服は着るのに勇気が必要です~

 赤ちゃんから五歳児に戻れた桃子は、ダレジャさんから、すんごい煌びやかなピンクのふりっふりドレスをお借りして、メイドさんに手を借りながら着替えることとなった。


 ミラが幼児の年の頃に着ていたものらしく、フリルの使い具合が半端ない。幼い頃からこんなド派手なものを着こなすとは、さすが本物のお姫様は違うぞ!

 

 なんとか袖を通したドレスで、玄関で待つバル様達の前にお披露目したら、幼児の愛嬌で服装のバランスはカバー出来たらしく、意外と普通に受け入れられた。


「可愛くなったね、モモ。団長、こういう服も入れたらどうです? 女の子にはおしゃれも必要ですよ」


「そうだな。今度の休日に衣装屋を呼ぶか」


「バル様、もうたくさんあるから十分だよ?」


 着られるものがあるだけで有難いことなので、そんな贅沢は申し訳ない。それに、ふりっふりはちょっとご遠慮したいです。もしもし? あの、本気で思案しないで、バル様! ズボンの裾を軽く引っ張って注意を向けてもらう。


「本当にいらないよ?」


「……いずれ必要になる」


 逆に説得された。うぐぐっ、バル様がこう言うってことはたぶんそうなんだろうけど、なんだろうこの敗北感は! あんまりお高いのは止めてね? わたしの心臓のためにも!


 そんな桃子達のやりとりを見ながら、ダレジャさんは満足そうに頷いている。


「うむ、ぴったりですな。ミラのお下がりで申し訳ない」


「いや、助かった。まさかここで元に戻るとは思っていなかったからな」


「ダレジャさんもミラもありがとう」


「わたくしのドレスなんですからね、大事に使いなさいよ」


 ツンデレ? ミラはお姫様属性でツンデレなの? 不機嫌そうな顔をしてるのに、頬が赤いのが可愛いらしい。わたくしってしゃべり方もちょっとぎこちなさがあるし、たぶんアデーナ様の真似をしてるんだよね? 悪いことを指摘されたら素直に謝れる部分もあるし、この子は基本的にいい子だ。うん、仲良くなりたいなぁ。


「うん、汚さないように気を付けるね」


「ふ、ふんっ、それなら差し上げてもいいわよ」


 笑顔で頷いたら、そんなことを言ってくれる。ミラが横目でちらちらと桃子を見てくる。予想外の好反応だ。これは友達申し込みしてもいい感じ?


「いいのかい? ミラのお気に入りだったろう?」


「わたくしにはもう小さいもの」


「ありがとう、ミラは優しいねぇ」


「モモよりもわたくしの方がお姉さまだもの。でも、勘違いしないでちょうだい! バルクライ様のことは話が別よ。わたくし達は恋のらいばるですもの! せいせいどうどう勝負するのですわ」


「こら、ミラ!」


 人差し指を桃子に向けて宣戦布告らしきものをする彼女を、ダレジャが窘める。いいお父さんだね。


「バルクライ様は好きだけど、ミラも好きだよ?」


「えっ?」


 ミラが素直に驚いている。子供の恋って可愛いよね。バルクライ様はとっても格好いいし優しいから好きになるのもわかるよ。


「モモ、オレは?」


「カイもキルマもレリーナさんもロンさんもターニャさんもディーもダレジャさんも、好き!」


 ちゃっかり聞いてくるカイににっこりと断言する。優しい人達に出会えたことは幸運だ。それがどれだけ恵まれたことか桃子は知っている。だから出会った人を大事にしたい。その中にはもちろん、ミラも入っている。


 真っ赤な顔で黙り込むミラに、桃子は小さな手を差し出す。


「お友達になってくれる?」


 ミラが無言になる。心臓がどきどきしてきた。バル様が意図的に桃子の年齢を隠している様子があったから、まだ本当のことは言えないけど、この年下の可愛い子と友達になってみたいという気持ちは本当だ。返事はイエスかノーのどっちかな?


「…………仕方ないから、なってあげてもいいですわ」


 きゅっと手が握られた。やった! 異世界で初めての友達が出来たよ! セージを受け取ったわけでもないのに、嬉しさで身体がぽかぽかしてくる。


「良かったなぁ、ミラ。可愛いお友達だ。モモ殿は深い事情をお持ちのご様子。もし、わたしで何か力になれることがございましたら、遠慮なく言ってください。娘の友の為ならばわたしも力になりましょう」


「うん、ありがとう!」


 交流を深めたところでバル様に抱き上げられた。あ、お待たせしてごめんね。


「ミラ、モモの件での助力には感謝している。こちらの問題が解決するまではモモに接触することは出来ないが、それが片付いたらモモから手紙を送らせる。その時は我が屋敷に遊びにくればいい」


「い、いいんですの?」


「モモと遊ぶ分には構わない。ただし、オレの屋敷では結婚を迫らないと約束するならばだ」


「……バルクライ様のお屋敷では致しませんわ」


「わかった。では、オレも約束しよう。ダレジャ、近々城からの召集がかかるはずだ。準備だけはしておくといい」


「はっ、承知しました」


「では、失礼する。いくぞ、カイ」


「はい、団長」


「またね。ミラ、ダレジャさん」


 玄関を出て行くバル様の肩越しに二人に手を振ると、ダレジャさんはからは笑顔が返り、ミラは小さく手を振り返してくれた。桃子の仲間に年下のお姫様が加わったもよう。



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