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240、モモ、迷う~お腹が満たされていればいつもより勇気も出るはず~前編

 鶏がらスープが美味しい! 桃子は王妃様と一緒に朝食を頂いていた。本日のメニューは目玉焼きとハムをつけたセットに、カットされたトマトとブロッコリーのサラダ。それから丸いロールパン。表面がつやつやした茶色をしていて、手に取るとまだ温かくてパンのいい匂いが漂っていた。サクッとした食感とふんわりした内側のパンの食感が癖になりそう。食べすぎには注意が必要です!


 もっふもっふと食べながら、間に鶏がら味のスープを頂く。幸せなため息が出ちゃう。美味しいが過ぎる。今日は王妃様も一緒だから余計に美味しい。


「幸せそうに食べるなぁ」


「幸せです! このスープもさっぱり風味で食べやすくて美味しいです」


 スープの入った丸いお皿を大事に持ち上げてみる。お子様サイズだから頑張らなくても簡単に持ち上がった。具材はなにを入れてるのかな? 海老の味がしたけど、もっちりしたお団子の中に隠れてた? 桃子は神妙な面持ちでスープの中を覗き込んだ。すると、壁側で小さく噴き出す音がした。さてはレリーナさんとジャックさんだな! って思ってお部屋に控えてくれている護衛さん達を見たら予想通りに笑ってた。けど、王妃様のお部屋の隅で控えている侍女のお姉さん達もほんのちょっぴり顔を背けていた。あれ? 身体が震えてる? 


 そんな侍女の姿が物珍しかったのか、王妃様の顔にも笑みが浮かぶ。皆に笑顔が移っていくねぇ。笑われた桃子もつられたように、にこにこしてしまう。和やかな空気の広がりに、王妃様が上機嫌に口を開く。


「お前達が笑う顔は初めて見た気がするぞ」


「……失礼いたしました、王妃様」


「構わないさ。無邪気な子供の仕草は微笑ましく笑いを誘われるものだ」


 さっと表情を消して背筋を伸ばした侍女のお姉さん達を、王妃様は上機嫌に許す。笑わせようとしたつもりはないんだけど、覗きこんだのがコミカルな仕草に見えたのかな? 侍女のお姉さん達も笑ってくれた方が雰囲気が柔らかくなっていいと思うの! だけど、お城にはお城の決まりごとがあるみたいだし、レアな眼福を頂いたってことで満足しておこう。


 王様もしきたりがあったからバル様達が子供の頃は距離を置いてたって言ってたもん。私じゃあお城の侍女さんは1日も勤まらないかもしれないねぇ。侍女の恰好をして一生懸命顔に出さないように気をつけようとしている自分の姿を思い浮かべた。あっ、表情を気にし過ぎてお皿落としちゃった! ひえぇぇぇっ! 割れたお皿の欠片を持って震えてるところまで想像して、桃子は瞬いた。……ほっ。実際にやらかさないでよかったよぅ。


「モモ、手が止まっているぞ? お腹がいっぱいなら残してもいいからな」


「まだ入ります!」


 桃子はお団子をスプーンに乗せて口に入れた。むぐむぐと噛むと幸せになる。もっちりしてるけど伸びないからお餅じゃなくて、小麦粉っぽい。小さい時におばあちゃんがお汁粉を作ってくれた時にお餅がなくて代わりに小麦粉を溶いて入れていたことを思い出した。あの食感と似てる。もちっとしてるけど噛み切りやすくて美味しい。今日もルーガ騎士団に行くからしっかりご飯は食べておかなきゃ。途中でぐぅぐぅお腹が鳴っちゃったら切ないからね!


 上品に朝食を完食した王妃様を追いかけて、桃子もしっかりとご飯を頂いた。そうして身支度を済ませた頃、部屋の外から男の人の声がした。


「失礼いたします、王妃様。ご側室のアニタ様の侍女がお目通りを願っていますが、いかがなさいますか?」


「食事は済ませたから、構わないぞ」


「はっ」


 王妃様の返事を受けて、扉が外側から開かれる。入ってきたのは昨日の新人侍女と四十代くらいに見える侍女だった。椅子に腰かけた王妃様の前で、2人は深く頭を下げる。


「王妃様、お時間を割いていただきましてありがとうございます。わたくしはアニタ様の侍女頭のニスカと申します。先日は、こちらのカメリアが王妃様の庭園に侵入したと聞き及びまして、アニタ様より心よりお詫びをさせて頂きたいと言付かってございます。王妃様にはルビーの宝石を、そして加護者様にはこちらのドレスをお持ちいたしました。アニタ様より、この間の謝罪と合わせまして、お茶会に改めてご招待したいとのことです。どうぞ、お納めくださいませ」


 カメリアと呼ばれた侍女の子が、テーブルの上に煌びやかな宝石箱と木箱を置いて、そっと開いて中を見せた。ふわぁ! ゴルフボールくらいの大きなルビーが3つも宝石箱に入ってた。私に差し出されたドレスも光沢のある白い布地に雨粒が散ったみたいに胸元から足元にかけて斜めに小さな宝石が散ってる贅沢な品だ。


 金銭感覚が違い過ぎて、震えちゃう。こんなお高そうなの怖くて着れないって! しかもお茶会にご招待とは、全力でご遠慮したい。緊張まみれのお茶会じゃ紅茶の味だってわかんないよぅ! 桃子は顔だけは加護者様モードで無表情を装いながら、内心おろおろしながら王妃様に目を向けた。どうすればいいですか!? 桃子の心の声に答えるように王妃様が鷹揚に頷く。






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