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233、モモ、発見する~緊張した時はおまじないを発動させよう~後編

「うわぁっ、すごいすごい! 初めて魔法を使えた!」


「上手い具合に風魔法が発現したね。そうしたら、今度はその魔法を放ってみようか。頭の中でしっかり想像するんだよ。さぁ、空に向かってやってごらん」


「えっと、こう?」


 桃子はじわじわと手を空に向けて動かしていく。すると、手の前に発生していた小さなつむじ風も一緒に移動する。優しく優しく……桃子は心の中でそう呟きながら、一生懸命イメージした。空の方にふわふわ飛んで消えていく様子を思い浮かべて──放つ! 自然と両手を空に軽く押し出すと、つむじ風が徐々に浮かび上がっていき、お城の屋根の高さまで飛ぶと緑の光はふぅぅと蠟燭を吹き消されるように霧散して消えていった。


「お見事! モモちゃん、本当に初めて? こんなに上手に出来るなんて驚いたよ。想像力が豊かなのかな。繊細な魔法を使うことに向いていそうだね」


 褒められて育ちたい桃子としてはこんな風に言われると、嬉しくて頑張りたくなってしまう。この褒め上手さんめ! 魔法を自分で使えたという興奮に胸がどきどきしている。出来ちゃったね! 小魔女な桃子さんになっちゃったよ! バル様もこの魔法を見たら頭を撫でてくれるかなぁ? +抱っこもあると、両手でバンザイして大喜びします!


「パーカーさん、本当にありがとう! コツは掴めたと思うの。これでちゃんと魔法の練習が出来るよ」


「いやいや、僕は砂糖ひとかけら分のヒントをあげただけだよ。素直に言われたことを飲み込めるモモちゃんの力だ。練習するのはいいけれど、1人でやるのは危ないからね。ちゃんと魔法を扱える大人と一緒にやるんだよ?」


「はい!」


「いいお返事も聞けたことだし、僕はそろそろ仕事に戻るよ。さすがに怒られそうだ」


 パーカーさんは大きく伸びをして腰を叩いた。和やかな空気が漂い始めて、桃子もほっとしていると、さくさくと草を踏む音がした。


「……随分と騒がしいな」


「これはこれは珍しい方のお見えだ。お久しぶりでございます、陛下」


 そこにはなんとバル様のお父さんである王様が、護衛の兵士さん達を引き連れて立っていた。その姿を見るのは加護者のお役目を務めた日以来のことだ。バル様によく似た顔立ちはいつも通りの無表情である。王妃様やジュノ様とは、よくお茶に誘ってもらい仲良くさせてもらっているけれど、王様がお相手となるとなにを言えばいいのかわからなくなっちゃう。冷めた眼差しを向けられると、緊張で石になりそう。外国の神話でそういう女の人がいた気がする。メ、メデーサ? なんか違う?


 頭を下げて敬意を示すパーカーさんと同じように、レリーナさん達も王様に場所を開けて頭を下げている。桃子もちょっぴり下がって、緊張のあまりに背筋を伸ばす。どうして突然王様が来たんだろう? 私、なにかしちゃったかな!? 不安で心臓がバクバクしてきた。そんな桃子を一瞥すると、王様はパーカーさんに目を眇める。へらりとした作り笑顔と威圧的な無表情の間に金色の稲妻が見えた気がした。


「開発部に引きこもりきりの男がこのような所でなにをしている?」


「陛下に心配して頂けるとは、僕は大変な幸せ者のようですね」


「ふん。よくまわる口だ」


「いやだなぁ、本心ですとも。先日は魔法開発部の研究費を援助頂きまして、ありがとうございました。研究員一同を取りまとめる総責任者として、お礼を申し上げます。おかげさまで資金繰りを気にせずに研究に集中出来ています。僕はここ最近陽の光を浴びていなかったので、休憩を兼ねて王妃様の素晴らしい庭園で気分転換の散策をさせて頂いておりました。そこでたまたま加護者様とお会いしたのです」


「ナイルにも困ったものよ。男を自らの庭園に入れる許可を出そうとは」


「僕を異性としては見ていらっしゃらないのでしょう」


「ほぅ。あれを庇うか。ではお前はどうだ?」


「王妃様は大変魅力あふれる方ではございますが、非力な僕ごときでは隣には立てませんよ。やはり王妃様のお相手は陛下にしか務まらないでしょう」


「その口の上手さで加護者も内側に引きこむつもりか? ナイルはお前の才を買っているようだが、私は才だけでは評価しない。援助するに相応しい成果を見せてみよ」


「仰せの通りに。しかし、争いは僕の好むところではございませんから、たとえ陛下のご命令であろうと争いの種となりえる道具はつくりかねますね。それでは僕は仕事がございますので、失礼させていただきます。加護者様、またお会いしましょう」


 最後まで笑顔のまま一礼して去っていくパーカーさんに、桃子は口を開けなかった。えっ、えっ? 王様とパーカーさんは仲が悪いの? 2人の間で忙しく目を動かしていた桃子は、王様の横顔が嫌悪するように僅かに歪んだことに気づく。


「笑顔で流すか。食えぬ男よ」


「もしかして、王様はわざとパーカーさんを怒らそうとしてたのですか?」


 冷たい無表情に戻った王様が、桃子を見下ろす。相変わらずの目力に負けそうだ。んぐぐっ、桃子も目に力を込めて答えを待つ。……睨めっこになってる? 


「……そうだ。あの男はどうにも好かん。権力に執着がないように見せて、その実あの男こそが魔法開発部のトップだ。それだけの実力がありながら、軽薄な調子を崩さず、裏でなにを考えているのか読ませぬ。いま一つ信用に欠ける男よ」


 精霊の仕掛けが綺麗だったと話した時のパーカーさんは裏表のない正直な気持ちで出た笑みを浮かべていたように思う。でも、王様の前で見せていたのは、よそ様向きの笑顔だ。大人の男の人だもん、偉い人の前で全開のスマイルなんて浮かべられないよね。だけど、それが王様には不審に思えているようだ。ズバッと言っちゃう王様と、緩―いパーカーさんじゃ性格が全然違うから合わないのかな? 


 でも、パーカーさんは王妃様とは仲良しみたいだから、王妃様と夫婦関係にある王様とも上手くいきそうに見えるのにね。うーん、王様の前で緊張してたとか? 私も今緊張してるもん。おまじないに助けてほしいの! 人っていう字をね、こっそり手の平にいっぱい書いて、一気飲みしたい。そうしたら、疾走中の心臓も小走りくらいにスピードダウンするかも。   


「それよりも、私はお前に用がある。共に来てもらうぞ。そこの護衛よ、モモを連れて付いてまいれ」


「ひょっ!?」


「モモ様、失礼いたしますよ!」


「私もお供いたします」


 王様に指名されたジャックさんに颯爽と抱っこされた桃子は、わけもわからないまま、先を歩き出した王様の後ろに運ばれて行く。レリーナさんもぬかりなく付いて来てくれるけど、このまま、私どこに連れてかれちゃうの!? 





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