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229、モモ、発見する~緊張した時はおまじないを発動させよう~前編

 桃子はキラキラした目で大事に育てていたお花の鉢を覗き込んでいた。2日に1回のペースでお水をあげ続けていたおかげか、ルーガ騎士団のお仕事から帰ってきたら、風通しのいいお庭の片隅で緑の可愛い子達がぴょこんぴょこんと土から顔を出したのである。


「ふおおおおっ、レリーナさん、ジャックさん、やったよ! 芽が出た!」


 傍に控えてくれている2人に知らせた桃子は、嬉しさに大興奮だ。さっき鐘が3つ鳴ったから時刻は午後3時過ぎくらいだね。お花の鉢と一緒に午後の日光浴をしようと思っていたら、芽を出しているのを発見したのだ。ちょっとしたことかもしれないけど、こういうことがあると幸せな気分になるよねぇ。


「モモ様がきちんとお世話をしていたからですね」


「大事にしてきた甲斐があったなぁ。どんな花が咲くのかは知ってるのかい?」


「ううん。だからね、咲くのを一緒に楽しみにしてて。お花が咲いたらブーケにしてバル様にもあげたいなぁ。きっと似合うの!」


 桃子の頭の中では小さなブーケを手にモデル立ちしたバル様がぽんっと浮かんでいた。……格好良くて、なんか照れちゃう! おかしいなぁ、前は照れちゃったりはしなかったんだけど。最近、バル様のことを考えるとないお胸がきゅーっと絞られたみたいになるんだよ。お医者さんに聞いてみたい。これが恋の症状ですか!? って。


 自分の気持ちを自覚してから、十六歳の精神に身体が引っ張られることがあるみたいで、いつもと逆の感覚に自分でも戸惑っているんだよぅ。ベッドにダイブして、ふわふわなバルチョ様をぎゅってしてコロコロ転がりたい気分になるの。


「元気に育ってね」


 桃子は小さな芽を人差し指でちょこっと撫でて声をかけると、くるりと反転した。ここは日当たりもいいからきっと太陽の光をいっぱい浴びられるはず。私も一緒にすくすく育ちたいんだけどなぁ。自分のちっちゃな手を見下ろしてわきわきする。うーん、育ってるのかなぁ? 三食+おやつまで頂いて、運動も適度にしてるはずだから、ちょっとは成長していてほしいけど……。はっ、そうだよ! この世界に飛ばされちゃった最初の頃から一緒のレリーナさんならわかるかも! 


「レリーナさん、私って初めて会った時と比べて変わってるかな?」


「いいえ? お変わりなく本日も大変愛らしいですよ?」


 あれぇ!? 質問と違う答えが返ってきちゃった? あの、褒めてくれるのはとっても嬉しいんだけど、違うの。聞きたいのはそういうことじゃなくてね? 桃子は照れて頬がぽっと熱を持ったことを感じながら、真面目な顔で当然のようにそう答えてくれるレリーナさんを見上げる。


「えっと、ごめんね、私の質問の仕方が悪かったね。その、私の身体がちゃんと大きくなってると思いますかー? って聞きたかったの」


「あら、そちらでございましたか。失礼いたしました。ふふっ、モモ様があまりに愛らしいので思わずそう答えてしまいました」


「間違えても、す、す、素敵っすよ、レリーナさん!」


「ありがとう」


 ジャックさん、頑張った! 照れつつもちゃんと褒めてる! それをさらりと流すレリーナさんもクールで格好いい。私も一回くらい照れずにこうやって言ってみたい。でも、口調を頑張って装ってみても、大変残念なことに、きっとおしゃべりな目と正直なお顔で全部バレちゃうの。ディーに今日貰ったトランプで、さっきまでレリーナさんとジャックさんとメイドのお姉さん二人も混ぜて一緒に【ババ抜き】、もとい、【騎士抜き】していた時のことを思い出す。


 元の世界だと、ババ、つまりジョーカーを一枚抜いて遊ぶけれど、異世界ではジョーカーがないから、騎士をその代わりに抜くんだって。害獣から人々を逃がす騎士の様子を表してるそうで、数を合わせてカードを抜くのが逃がしたってことになるみたい。基本ルールは一緒だったから、スムーズに遊べたんだけど、やっぱり私はお顔に出ちゃってるみたいで、5回やったのに1回も勝てなかったの……。


 あまりにも桃子が負け過ぎたために、皆が途中からなんとか勝たせてくれようとしてて、逆に申し訳なくなった。次までにはもうちょっと強くなっておきたいよぅ。今度、ディーのお見舞いに行った時に手が空いてるようだったら、一緒に遊んでってお願いしてみよう。バル様達とも一緒に遊びたいし、ポーカーフェイスが出来るようにお顔を鍛えておかなきゃ!

 

「モモ様のお髪もお爪も伸びていらっしゃいますが、不思議なことにお身体はあまりお変わりないご様子。これも軍神様のご加護の影響なのかもしれませんね」


「モモちゃんは加護者だもんなぁ、不思議なことがあってもなにも変じゃないさ。大丈夫、きっとその内でっかくなるよ」


「……うん」


 ジャックさんが励ますように笑顔を見せる。桃子は頷きながらすぐ傍で静かに微笑む美人な護衛さんを見ていた。前から時々思っていたけれど、レリーナさんはほとんど全てをわかった上でそう言ってくれたのかも。十六歳バージョンの桃子の姿を見ているし、さすがに加護だけが理由じゃないってことは察しているんだと思う。だけど、こうして何も言わずにフォローしてくれる。いつも助けてくれて、ありがとう! 感謝の気持ちを込めて見つめると、美しい微笑みが深くなった。もしかして伝わった? 




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