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221、モモ、気になる~素直じゃない人の本音は探して見つけてあげたいなぁ~前編

 華麗に書類の計算をクリアした桃子は、心の中に小さな誇らしさを隠して、ディーにお願いされた書類を手にキルマの待つ執務室に向かっていた。キュロットスカートのポケットには、小さな木箱に納められたトランプが入ってて、動くたびに重さを感じる。それでも廊下を歩く足がスキップしたくなるほど軽いのは、ささやかだけど人の役に立てた嬉しさのせいだね! だって、初めて十六歳の知力が助けになったんだもん。


 五歳児の足の速度はかなりのんびりなんだけど、それをさらに緩めて、両隣に二人が来るようにさせてもらう。右にジャックさん、左にレリーナさん、お子様な桃子が真ん中だから、これってよくある両親に挟まれた子供みたいだよねぇ。桃子はジャックさんを見上げる。


「えへへっ、キルマ、褒めてくれるかなぁ?」 


「褒めてくれるとも! いやぁ、本当に驚いた。5ケタも6ケタもある数字を一瞬で計算するなんて、オレには到底真似出来ないよ。あれはもはや技と言ってもいいんじゃないか?」


「そうですね。まさに神技でした。お可愛らしいだけでなくあのように素晴しい特技をお持ちだなんて、モモ様はまさに加護者様に選ばれるべくして選ばれたのでしょう。あれだけの計算を行ったのですから、お疲れではございませんか? いつでもおっしゃってくださいね、モモ様。わたくしが抱っこいたしますから」


 レリーナさんの頬がぽっと赤くなり、心なしか目が熱を持っている。……うん、抱っこしたいって気持ちが伝わるよ! でも、その腕の中には今もバルチョ様がお邪魔してるし、歩ける時は歩いてカロリーを消費しなきゃいけないと思うの。さっきもディーからお菓子分けてもらっちゃったし、気をつけないとまんまるく変身しちゃうかもしれない。


 ちらっとお腹を見下ろす。ぷっくり具合は変わりない? ちょっぴりふくふくしてきてる? はいっ、こちらお腹! まだ大丈夫―っ、でも油断は駄目なのーっ、て叫ばれた気がした。バル様達が帰って来た時に、私の身体が膨らんじゃったら、きっと会っても私のことわかんなくなっちゃうよ! 


「あのね、私運動不足だと思うの。だから頑張って歩く!」


「そうですか? ルーガ騎士団でお仕事をなさっていますし、階段は私共がお手伝いしていますが、それを入れても十分歩いていらっしゃると思いますよ?」


「でも、たくさんお菓子貰っちゃってるし、まんまるくなっちゃうといけないから」


「小さい子はころころしてても可愛いと思うぞ」


「ころころしていらっしゃる、モモ様……愛らしいです」


 何故か、レリーナさんが恍惚とした視線でぼんやりと宙に視線を投げる。あの、もしかして今頭の中にボール体型の私が浮かんじゃってる? 可愛くないよ、それ現実にしちゃ駄目な奴だよね!? 


「急にどーんって体重が増えちゃうのは不健康だよ。このままの私だと、レリーナさん、物足りない?」


「いいえ! そんなことはこの世が滅ぼうとも思いません! モモ様は今のままでも十分可愛らしくていらっしゃいます。どんなモモ様でも、私は、私は……っ」


「おおぅ……」


「レ、レリーナさん、落ち着いて! モモちゃんがびっくりしてますよ」


 今の私じゃ駄目ですか? って聞くのは相手が女の人でも気恥かしいね! モジモジしながら聞いてみたら、レリーナさんはバルチョ様を抱きしめたまま力説してくれた。気押されて、思わず幼児らしからぬ声が出る。いつも心の中で押さえてるんだけどね、ぽろっと零れちゃったよ。ジャックさんが興奮した牛を宥めるように両手を前に突き出してどうどうって感じで、落ち着きを促している。レリーナさんならたとえ牛でも美牛だと思うの。そうなると、私は子牛? ジャックさんは大牛? 三匹の牛は仲良く並んで、草をもっしゃもしゃ食べてそう。


 ジャックさんの言葉に、レリーナさんは我に返った様子で頬を僅かに染めたまま、表情を冷静なものに変える。すって戻ったよ! レリーナさんもトランプ強そう。そのポーカーフェイスの前にきっと私がひれ伏すでしょう! ははーって両手をつく自分がぽんっと頭の中に出てくる。ぼろっとした布の服着てた。 


「……失礼しました。しかし今言ったことは私の本心から出た言葉でございます。モモ様がたとえころころモモ様になったとしても、私は代わらずお仕えしたいです!」


「ありがとう。レリーナさんみたいな美人さんと、ジャックさんみたいな可愛い人が一緒だもん。一緒にいる私も、せめてころ様にならないようにしないと」


「うふふふっ、ころ様ですか?」


「うん! ころころモモ様を略してころ様!!」


「モモちゃんの字が一個もないのに不思議と伝わるなぁ。って、聞き流しかけたけど、オレが可愛いって言ったの? レリーナさんじゃなくて? オレ、バルクライの旦那より身体が大きいんだけど?」


「うん! ジャックさん大きくて頼りになるし格好いいとも思うけど、なんか可愛い人だなぁって思う時があるから! バル様もカイもキルマもあるよ?」


「あの美人な副団長さんなら、まぁわかるけど、旦那が可愛い……? モモちゃん本当に大物だな。あの人を可愛いって言う女の子はきっとモモちゃんだけだと思うぞ」


 可愛いと思うのに男も女もお年寄りも赤ちゃんもついでに言うと動物だって関係ないよねぇ。照れてる女の子の笑顔は可愛いし、躓きかけた男の人が恥ずかしそうに周囲を見回す様子だって可愛い。それに、子猫が寝ぼけてる様子も可愛いし、ベンチに夫婦仲良く座っているお年寄りも可愛い。桃子印の可愛い認定の基準はこんな感じです! 






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