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208、モモ、救出に向かいたがる~不器用な人は言葉の真意も本心もなかなか見えないもの~後編

「あ、あの、お手伝いダメだった?」


「……いえ。失礼ながら、加護者様にお聞きしたいことがございます。よろしいでしょうか?」


「うん。どんなこと?」


「加護者であられる貴方様は誰に頭を下げる必要のない存在です。それなのに何故、バルクライ殿下の直属の部下でもない、ましてや貴方様に忠誠を誓うわけでもない我々護衛騎士までお気遣いくださるのか?」


 ユノスさんの困惑は、加護者らしくない加護者だったことが原因みたい。でも、かと言って求められるままに加護者らしい態度を取り続けるのは難しい。それって、ずっと舞台でお芝居続けているようなものだよね? 軍神様の振りとか、本物の五歳児の振りとか、今までやったことあるけど、それを朝から晩までやれって言われたらさすがに疲れちゃうよ。


「お気遣いっていうのとは、ちょっと違うかも。ユノスさん達はお仕事として私の護衛を務めてくれているよね? でも、私はそのおかげで安心してお城で過ごせてる。だからね、あの差し入れに大きな意味はないんだよ。ちょっとでもお礼になればいいなぁって思っただけなの」


 たとえば、私がパン屋さんの店員さんだったとする。私はそれがお仕事だから、たとえどんなに態度が悪いお客さんでも同じように対応しなきゃいけないよね? だけど私なら、小銭を投げつけてくるようなお客さんより、出て行く時ににこって笑ってくれる人の方が嬉しいと思う。とても単純なんだけど、それだけできっと楽しくお仕事が出来ちゃうの。


「我々に礼を……」


「ええっと、変だったかなぁ? 私のこと守ってもらってるんだから、お礼をしてもおかしくないと思うんだけど……」


「ただ、驚いたのです。これまで、仕事で礼を言われたことはありませんでした。それに貴方様は高貴な身分であられる。そんな立場の方が、一介の騎士に過ぎない私ごときに、これほど気安く接して頂くなど」


「高貴な身分って」


「ご自覚がないのでしょうか? 貴方様は王と同等に等しい身分でいらっしゃいます」


 これほど桃子に似合わない言葉もないだろう。なんちゃってとか、もどきとか、付け足さないと本当に高貴な身分の人に、詐欺だ! って言われちゃいそうだよねぇ。軍神様に加護者認定してもらったから、間違いなく本物のはずなんだけど、高貴ってつくと違和感がすんごい。


「人にお礼も言えないことが加護者として正しい態度って言われちゃうなら、私には向かないや」


「貴方様を貶めるために申したのではありません! ただ、圧倒的にそのような方が多いというだけなのです。我々は国に忠誠を誓った騎士です。護衛対象にどのような態度を取られても、反論は許されません。ですが、我々も人間であります。貴方様のように礼儀を持って接して頂けることを、嬉しくないはずがありましょうか」


 強く否定する言葉に初めて強い意志を感じた。感情を隠していた目にも熱が見える。きっとこっちが本物のユノスさんだろう。強面の外見通り、普段は無口な人なのかもしれない。だから、話し慣れなくて言葉選びが不器用な為に桃子に真意が伝わりにくかったのだ。でも、努力してくれたから、今はちゃんと伝わったよ。


「このままの私でいてもいいかな? あんまり加護者らしくはないかもしれないけど、護衛騎士のお兄さん達ともいい関係でありたいよ。私は、加護者になったばかりだから立場的になにをしちゃダメなのかわからないことが多いから、周囲の皆に助けてもらうことが多いと思うの。だから、ユノスさん達にも教えてもらえたら嬉しい」


「我々で、よろしければ。──我々はモモ様の護衛兵士として必ず御身をお守り致します」


 使ったタオルを丁寧に畳んで床に置くと、ユノスさんは片膝をついて宣言する。その姿に慌てて立つようにお願いしながら桃子は思う。身分の壁は鉄で出来てるみたいに頑丈だけど、皆が気づいてないだけでその高さは低いのかも。本当は、手を伸ばせばいつでも繋ぐことが出来るのかもしれない。




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