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192、モモ、早起きする~名前を付けるなら覚えやすいものと言いやすいものがいいかなぁ~後編

昔々、人々は害獣との長い長い戦いの果てにその数を減らしておりました。

国は門を閉ざし外の声は中に届くこともない、そんな時代にとある村では害獣による大きな被害が出てしまいました。

大人は息絶え、残されたのはたった5人の子供達です。


『この村には、もう僕達しか残っていない』


『皆居なくなってしまった』


『まだ生き残っている人がいるはずよ』


『探しましょう。そして仲間を増やすの』


『いつかかならずこの村を取り戻すんだ』


立ち上がった五人の子供達を遠くから見ていた存在がありました。

神です。彼等の決意に心を打たれた主神は、彼等を手助けするために、新たな神々を生み出すことにしたのです。


《勇気ある人の子等の助けとなれ》


その時に生みだされたのが、癒しの神、水の神、火の神、風の神、土の神でした。


《私はどんな大きな傷も癒して見せよう》


《私はどんな渇きも満たす潤いを与えよう》


《私はどんな敵をも切り伏せる武器を与えよう》


《私はどんな攻撃も耐えられる守りを与えよう》


《最後の私はどんな試練も乗り越えられる強い身体を与えよう》


その願いに答えた神々は少年少女に加護を与えました。彼等は武器を手に害獣を討伐する長い旅に出ました。嵐の砂漠を越え、険しい岩山を切り開き、害獣を討伐しながら国から国に彼等は歩み続けました。


少年少女だった子供達もやがて大きくなり、5人は何時の間にやらたくさんの仲間を率いるほど大きな力を得ていました。


「今こそ害獣を打ち倒す時だ! 勇気ある者達よ、このルーガに続け!」


掲げられた剣のもと、多くの兵士が馬で走り出します。地面は馬の足音で揺れ、空にはドラゴンに乗った人々が飛び立ちました。


こうして、彼等は力を合わせ、害獣を国から追い出すことが出来たのです。

彼等のリーダーであった少年ルーガが作った軍団こそが、現在のルーガ騎士団の始まりと言われています。彼等の功績は称えられ、その物語は貨幣となり現在にも伝わっているのです。


 最後のページに、銅貨、白銀貨、銀貨、金貨の絵が、表面と裏面の二枚合わせで描かれていた。よくよく見ると描かれている絵がちゃんと違う。


「これって、旅の様子が描かれているんだ。銅貨は荷物を肩に背負ってる。これは村を出たばかりの頃かな? 白銀貨は剣と盾を手に構えてるね。神様から加護を受けて害獣を討伐しながら旅してる。それで銀貨は火を噴くドラゴンと戦ってて、金貨はドラゴンの背中に乗って飛んでる。戦って勝てたから仲間になったのかも。貨幣の裏側にはそれぞれの後ろ姿が描かれてるし、さりげないけど、実はすんごく凝って作ってるんだねぇ」


 桃子は感心しきりで絵本に描かれた貨幣をじっくりと眺める。そう言えば元の世界でも、お札とかには偽造が出来ないように、透かしっていうのが入ってるって聞いたことがあった。それと同じで、凝ってる分だけ真似をするのが難しい仕組みになっているのだろう。キルマがこの絵本を選んでくれたのは、この世界では子供の内にこのお話を教えられるのが一般的なんだろうね。誰でも知ってることを知らないのは不自然だもん。だから、【必要な本】と手紙に書かれていたのだ。


 桃子は本をパタンと閉じてよいしょっと片付けると、今度はバル様から贈られた宝石箱を手に取る。中央の紫色の宝石が一番大きくて周囲には真珠らしきものや小さな宝石が付いている。これ一つだけで震えそうなのにこんなにいっぱいついてたら触るのにも勇気がいるよ! 


 でも、せっかくバル様がくれたんだもんね、大事に使わせてもらおう。ぱかっと蓋を開くと、音が鳴り出した。おおぅ、これオルゴールも付いてるんだね!? ポロンポロンと静かな曲が流れ出す。なんだろうこれ、聞いてると眠くなってくる。桃子の口から、ふわぁと大きな欠伸が出た。桃子はオルゴールを開いたまま棚によりかかる。ちょっとだけ、ちょっとだけ……すやぁ。


 




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