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187、モモ、加護者として立つ~言葉で伝えきれない思いは目で伝えられたらいい~後編

「そうだろう? あぁ、愛らしいなぁ。抱きしめて頬ずりの一つもしたいが今はまずいか。くぅぅっ、腕がうずくぞ!」


「……お前の趣味に口出しする気はないが、王妃としての務めを果たしてからにせよ。ルーガ騎士団と請負人が出立するのだ。そなたには王妃に相応しき振る舞いを求めるぞ」


「あぁ。わかっているとも。この私が本気を出せば深窓の令嬢も恥じらって窓を閉ざすぞ。だが、この国では私は戦う王妃として知られているのだから、清楚を装う必要はあるまい。今更そんなことをしても無駄だ。皆、私がこうなのは知っているからな!」


 男前な王妃様だね。朗らかに笑う姿が清々しくて、格好いい! ミラの目もキラキラしてる。わかる。わかるよ、その気持ち! 女神様とはまた違った感じで憧れちゃうよねぇ。女性らしい魅力とは別に、男性にも負けない気概というか、溌剌とした感じが同性として気持ちいい人だなぁって思うんだよね。


「もうよい。そなたとその者達は役目を終えたら好きにせよ。だがその前に」


「役目を果たさねば、だな」


 二人は燦々と光が差し込むバルコニーに出ていく。開け放たれた窓から人のざわめきが微かに届く。桃子とミラはバルコニーの両端に誘導される。桃子は右側から、ミラは左側から呼ばれたら出ていくのだ。王様の口上が始まった。


「よくぞ集まった! 今日この日、そなた達は害獣討伐という大きな役目を担い出立する。ルーガ騎士団、神官、請負人、共に闘い、共に守り、おおいに成果を上げて見せよ!」


【はっ!!】


「喜ばしいことに我が国には最近新たな加護者が誕生した。皆もすでに知っていよう。幼子ながら軍神の加護を与えられし者だ。本日の守りの儀は、この者を含んだ2人の者に行ってもらう。加護者よ、前に!」


 王様から声がかかった。桃子とミラは両端からバルコニーに入ると中央の王様と王妃様の傍にゆっくりと足を進める。後ろから護衛騎士とメイドさんが付いてくる。二人の立つ位置には石の台が用意されていて、それに乗ると高さがちょうどよくなった。そこから見えるのは遠くの街並みと、庭から門までずらりと並んだ人々の姿だった。すごい数だ。入りきらない人は門の向こうに並んでるみたい。


 ルーガ騎士団の先頭には一際目立つ濃紺の外套がいた。バル様だ! 片膝をつき、胸に右手を当てて、桃子を見上げている。遠くても目が合ってるのが不思議とわかった。頑張んなきゃ! 足がガクガク震えそうなのを深呼吸で押さえて桃子はミラとタイミングを合わせて口を開く。


「美の女神の加護者たる者より、戦いし者達へ守りの祝福を」


「軍神の加護者たる者より、戦いし者達へ強き力の祝福を」


 二人はそれぞれ右手と左手を窓の下に向ける。それに合わせるようにどこからか精霊が光りながら現れる。どういう仕組みなのかわからないけど、赤や緑の色を放つ精霊達は、楽しげにふわふわと飛んではふっと消えていく。幻想的な美しい光景に桃子はちょっとだけぼうっと見惚れてしまった。

 光りが降りしきる中、王妃様の声が力強く立ち向かう人々の背中を押す。


「お前達は我が国が誇る強き戦士だ! 恐れるな! 立ち向かえ! 怯むな! 迎え打て! そして必ず帰って来い!!」


「害獣を根こそぎ討伐せよ!」

 

 王様の声を受けて、ざっと先頭の人が立ち上がる。バル様と、ギャルタスさんと、おいちゃんだ。それぞれの責任者になってるんだろうね。くるりとそれぞれの部下や仲間を振り返り指示を出す。


「ルーガ騎士団、出発!」


「同じく、請負人、出発!」


「神官はそれぞれ配置につけ!」


 あっと言う間に戦士達が動き出す。バル様の顔がこちらを見上げている。無表情なのになんとなく心配してくれてるのが伝わってくる。桃子はへの字になりたがる口元をにこーっと上げた。泣きそうで口元がひくひくしちゃうけど、頑張って笑顔を作る。バル様は桃子をじっと見て頷きを返すと、濃紺の外套を翻して左右に分かれた人々の間を悠然と門に向かっていく。その後を続くように人が列をなす。波打つ線を描いていた人々が門の外に消えていくのを、桃子は最後まで見送っていた。




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― 新着の感想 ―
儀礼式典かと思ったが、この世界はガチで神の祝福があるんだもんな。 そりゃ国賓以上の待遇で守護者は大切にされるわ。 逆に守護者が居ない他国からすると「何としても守護者を手に入れたい」と企む動機もはっき…
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