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186、モモ、加護者として立つ~言葉で伝えきれない思いは目で伝えられたらいい~前編

 レリーナさんの差し出してくれた手鏡の中には、見慣れた五歳児が生まれて初めてのお化粧で可愛く盛られていた。唇にちょこっと乗せられた桃色の口紅と、明るいチークが子供らしい丸い頬を恥ずかしそうに染めている。肩もつかないほど短い黒髪は生花と一緒に上手に結いあげられていて、とっても綺麗。顔のパーツも変わった部分はないはずなのに、気のせいかな、目が大きくみえるよ!


「ほぁぁ、お化粧の力ってすごいねぇ!」


「モモ様は愛らしいお顔立ちをしていらっしゃいますから、少しお化粧するだけで十分でございますね」


 感嘆の声を上げていると、レリーナさんが頬を染めて熱心に桃子を見つめている。お化粧も溶けちゃいそうな熱視線だ。美人さんなレリーナさんは安定の桃子押しである。そもそもこの美人さんの中には選択肢が他にあるの? なんとなく桃子しか浮かんでいないような……気のせい?


 リーンリーンと遠くで鐘が鳴り始めた。いつも時間を知らせる鐘とは音が違う。高く澄んだ音を聞いて、お城のメイドさんの中でも一番年上で纏め役らしき女の人が深く腰を曲げて頭を下げる。それに従い周りのメイドさん達も左右に一列に並ぶと、まん中に二人のお子様を招く。


 隣にやってきたミラは元々綺麗で派手めの顔立ちだったけど、それがさらに磨かれてどっから見ても美少女である。お化粧のおかげでいつもより三歳くらいは上に見えるよ! 私も今ならちゃんと五歳児に見えるかな? これぞ、逆サバ! 


「お時間でございます。わたくし共は加護者様とご一緒に移動いたします。護衛兵が先頭を歩きますので、お続きくださいませ」


「わかったわ。さぁモモ、行きますわよ!」


「皆に頑張れーって言わないとね!」


 無表情なメイドさんの迫力に、声に出して返事をしてもいいものか迷っていたんだけど、ミラのおかげで躊躇いは消えた。あくまで優雅さを出しながらやる気を漲らせるという器用なことをしてるミラを見習って、桃子もせめてもの優雅さとして、ゆっくり動くように心がける。


 レリーナさんが扉を開いて、傍で立ち止まる。レリーナさんは一緒に行けないから、遠くから見守ると言われていた。熱視線のレリーナさんに、桃子は小さく手を振り、動き出したメイドさん達と一緒に部屋を出た。


 廊下で待っていた護衛の兵士さん達がメイドさん達の外に周り、左右に別れたまま歩き出す。どんどん人数が増えていくのが面白い。小さい時に読んだ童話にこういうのがあった気がするねぇ? 呑気なことをなるべく考えて、緊張しない緊張しないと心の中で唱える。別名、現実逃避とも言います。はい、ここ大事ですよー。頭の中でタヌキの先生がぺしぺしと黒板を教鞭で叩いてた。……口から心臓出そうだよぅ。


広い廊下を歩いて進んだ先には、大きなホールがあった。広いバルコニーには、正装の白いマーメイドドレスを着た王妃様と、こちらも白い正装に金色のマントをつけた王様が待っていた。服のボタンも金や銀をふんだんに使った豪華な拵えで、2人のオーラを抜きにしても一目で高貴な身分の人だとわかる。


「素晴らしい。元から愛らしい子達が美しい姫君になったぞ。モモ、ミラ、私にその姿をもっとよく見せてくれ」


「……自重せよ、ナイル。これより守りの儀ぞ」


「少しくらい良いではないか。我が夫ならば寛容さを見せよ」


「母上……」


 すんごい綺麗なのに、やっぱり中身は王妃様だ。王様相手に遠まわしにケチって言ってる!王様はため息ついちゃって、王妃様の傍に控えていたバル様のお兄さんも苦笑してる。あっ、その隣にダレジャさん発見! ミラと桃子の顔を何度も目が行き来して心配顔になってる。


「まぁ、よい。これがこうなのは昔からのことだ。二人共こちらに参れ」


 王妃様の言葉を呆れ交じりに受け止めて、王様が呼ぶ。さすがにそんな2人の前に立つのは緊張するよ。ミラも背筋をピーンとしながら近づいていく。さりげなく手を繋がれた桃子の足も一緒に動く。バル様そっくりなお顔がジロリと桃子とミラを観察する。


「ほぅ……化粧で随分と印象が変わるものよな」





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