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163、モモ、貯金をはたきたい~お買い物の作法は先生に教えてもらいましょう~前編

本日よりのんびりと第3部を開始です。これからまた、よろしくお願いします!

「ふふふ、ふふふふふ……」


 その浮かれた高い声は、幼女が与えられた自室のベッドの下から聞こえていた。声の主こと、桃子は嬉しさに、にまーっと頬が緩むままに笑顔である。貯金箱として使っていたコルク付きの瓶をしゃかしゃかと振って、白銀と銅の硬貨がぶつかり合う音に幸せを感じていた。 嬉しいね! ようやく溜まったのだ。お花屋さんで頑張って働いたことと、花冠の作り方を店主のエマさんに教えてあげたことでもらえたお金。そのおかげで、今の桃子はちょっとした小金持ちになっている。


「これでプレゼントを買いに行けるの!」


 喜んでいる理由がこれだ。請負屋さんで働こうと思ったきっかけは、バル様達に日頃のお礼をするためだった。レリーナさんには内緒にしてるけど、このお屋敷で働いている人達にも細やかでもいいからなにかお礼をしたいと思っていたんだよねぇ。五歳児で手のかかる私に親切にしてくれて、本当にありがたかったもん。これだけあれば良いものが買えるかな?


 のそのそと四つん這いでベッドの下を這い出た桃子は、大事に瓶を抱えて、扉のドアノブに飛びつくと、ウキウキしながら廊下に出た。


 孤児院の事件から数日が過ぎたけど、バル様はさらに忙しくしているようで、なかなか帰って来れない様子だ。最後に会ったのは、三日前のお昼だった。休憩時間に重ねてわざわざ帰ってきてくれたんだけど、お昼ご飯を一緒に食べたらまたすぐにルーガ騎士団本部に戻って行った。


 最後にぎゅっとしてくれたから心の中の五歳児も泣かずに我慢出来たけど、やっぱり寂しい。夜は相変わらずレリーナさんのベッドにお世話になることが多いし、セージもお屋敷の皆の好意で順番に分けてもらってる状態だ。どっちも前はバル様が相手だったから、寂しさが増し増しだよぅ。最近は気付くと親指を吸っちゃってるもん。幼児返りが進行してるみたいで困っちゃうよ。目が回るような忙しさなのかな? あんまり役には立てないけど、五歳児の手でよければ貸してあげたくなるよ!


 きょろきょろとレリーナさんを探しながら歩いていると、ちょうど階段を上がってくる姿を見つける。


「レリーナさん!」


「どうなさいました、モモ様」


「あのね、今手は空いてるかな?」


「モモ様にお飲物のご用意をお聞きしようとしていたところですよ」


 微笑む美人さんに、桃子は大事な瓶を上に掲げて見せる。銀貨と銅貨がキラキラと輝くようだ。えへんっ、努力の結晶です!


「お買い物に行きたいんだけど、一緒に来てくれる?」


「えぇ、喜んでお伴いたします。それではモモ様も私と一緒にお着替えしましょう。加護者として噂になっていますからね、しっかりと変装をしなくては」


 バル様の言いつけを守って、レリーナさんに抱っこしてもらいながら階段を一階に下っていく。重くないかな? って最初は気にしてたんだけど、メイドさん兼護衛さんは鍛えてるみたいで不安定さがまるでない。五歳児認定のいい抱っこです。今は抱き上げられることに慣れちゃったけど、たまに元の年齢を意識して気恥ずかしさを思い出すのだ。気恥かしくなると、ほんと照れちゃうから忘れた振りをして話を続ける。


「私だって格好さえ誤魔化せれば、ちょっとおしゃべりが上手な五歳児と変わりないからね。変装するならレリーナさんとは姉妹ってことにする? お姉ちゃんって呼べばいいかな?」


「まあぁぁっ。素晴らしいです、モモ様! ぜひ、レリーナお姉ちゃんと呼んでくださいませ!」


「レリーナ、お姉ちゃん……?」


 頬を紅潮させて興奮している美人なメイドさんのお願いに、桃子は戸惑いながらも素直に答えた。その瞬間、うぐっと呻いたレリーナさんの身体が震え始める。な、なにかスイッチ押しちゃった? 次の瞬間抱きしめられて、柔らかくて豊満なお胸に顔が埋まる。今度は桃子がうぐっと喉の奥で叫ぶ番だ。


「最高にお可愛いらしいです、モモ様!」


「あはは、ありがとー」


 興奮状態の美人なメイドさんに、桃子は困り顔でお礼を述べた。……うん、押しちゃったのは、萌えスイッチだね。





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