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156、モモ、背筋を伸ばす~ピリピリ空気はのんびりイオンで中和したい~中編その二 

 女の人は、受付を通り過ぎて奥へ奥へと進んでいく。そうして一番奥まで進むと、二階に続く階段を上がる。会議室となるのは二階みたいだね。バル様達がその後に続くと、先導していた女の人は二階に上がってすぐに足を止めた。木製の扉をノックして入室を求める。


「頭目、お客様をお連れしました」


「あぁ、入ってくれ」


「どうぞ」


 ギャルタスさんの声を受けて、女の人が扉を開きながら部屋の脇に移動する。部屋の中は広くて、大きな円卓が中央に置かれて、その周囲を椅子に座った人達が囲んでいる。その中には見知った顔もあった。


「待たせてすまない。オレ達が一番遅かったようだな」


「気にすることないさ。今日は大物捕りで忙しかったんだろ?」


「随分と優秀な耳をお持ちのようですね」


 ギャルタスさんが指してるのは、今朝の拘束劇のことだろう。キルマが警戒するように声を固くする。だけどギャルタスさんは意に介さず肩をすくめて席に座るように手で促した。そこには三つ空席があって、まん中にはお子様用の高い椅子が用意されていた。


 わざわざ用意してくれたんだね! ありがとうの視線をギャルタスさんに向けると、にっと爽やかな笑みを返された。左右をバル様とキルマに挟まれて、桃子もちょこんと着席する。全員が席についたのを見届けて、ギャルタスさんが立ち上がりながら口を開く。


「それじゃ、会議を始めるとしようか。顔見知りも多いが、初顔合わせの奴もいる。先にそれぞれ自分の所属組織と立場を名乗ってもらうのがいいな。まずはオレからいく。オレは請負屋頭目のギャルタス・デミックだ。こっちはオレの右腕のフェナン」


「フェナン」


 名前を呼ばれたのは青みがかった黒髪に茶色の瞳の男の人だった。年齢はバル様と同じくらいに見える。全体的に細身で、中性的な雰囲気がある。フェナンさんは、のったり立ち上がってぽつりと名乗ると、温泉に入っているアルパカみたいな顔で眠そうに瞬いて、そのまま着席してしまう。えっ、今のが挨拶だったの?


「悪いな。この通り自由な奴なんだ。けど、腕は十分あるし仕事も早い。裏方に回っていることが多いんだが、ほとんど請負屋にいるからな。もしオレが不在時に用がある時はフェナンに伝えてくれ。次は神殿側の代表者、よろしく」


 ガタリと立ち上がったのはルイスさんとタオだった。良く知る相手だけど、しっかり目と耳を向けておく。


「ご存じの人も多そうだが、神官と請負人の両方をやってるルクティス・クライムだ。ルイスと呼んでくれ。まぁ、今は神官の方は謹慎中でね、オレがここに居るのもおかしな話なんだが……一応、派閥に属さない者達の代表者として参加している」


「一応なんておっしゃらないでくださいよ。──僕はルクティス様、いえ、この場ではルイス様とお呼びした方がわかりやすいですね。この方の補佐をさせて頂くことになりました、タオ・ザルオスです。元は無所属の神官のまとめ役をしていたのですが、ルイス様が頭として立って下さるとのことで、安心して補佐に回っております」


 ルイスさんは苦い顔をしてるけど、それに反論はないようで特にタオの言葉を否定はしなかった。だけど、バル様はその言葉に疑問を覚えたようだ。


「昨日の件で謹慎処分となったのか? 大神官が不在というのに、一体誰がそれを決定した?」


「ご存じの通り、現在の神殿には大神官がいない。だから誰かに言い渡されたわけじゃない。オレが自分から申し出た。古株の神官共をひとまず黙らせないといけないんでな」


「神殿内部での権力闘争か」


「あぁ。朝の一件はオレも聞いた。明日の朝には、神官を輩出していた大貴族が拘束された事実は街中が知ることとなっているだろうな。売られた子供達のことを思えば当然の報いだが、これで三つに分かれていた派閥の一角が崩れたことになる。そこで出て来るのが、古株の神官共だ。今までは大貴族を恐れて息を潜めていた者達だが、邪魔者が消えたとなれば、こぞって我こそ新たな大神官に相応しいと声高に叫び出すだろうよ」


 呆れたようにため息をつくルイスさんに、キルマが尋ねる。


「あなたが大神官の座に付く気はないのですか?」


「責任を取って辞める気ならあるね」


「責任を取る気があるのなら、違う取り方もあるのでは?」


「随分と買ってくれるがね、おいちゃんには荷が重いさ。オレみたいな奴を慕ってくれる奴等を守るために、今は頭であることが必要だと思ったからそうしてるだけだ。新しい大神官が決まったら、辞めてもいいし、残るのなら、また自由気ままに過ごすだけさ」


「ルイス様!」


「悪いな、タオ。オレは神に仕える気は微塵もないんでね」


 のらりくらりと否定するルイスさんの目に陰りを見つけて、桃子は思わず口を挟んだ。


「神様に仕える気がないと大神官になっちゃいけないの?」




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― 新着の感想 ―
[気になる点] ここまでにギャルタス3回フルネームで名乗った気がしますが、全部名字、違うような・・・
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