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15、モモ、子供の軽さを思い知る~災難には救世主が付いているはず~後編

 頭から顔まで滴って来たのを少し荒い仕草で拭われる。目を開くと、小麦色の髪と青い目が飛び込んできた。騎士団本部で会ったパンクさんが桃子の顔を覗いていたのだ。その右足の下には、外套を被った男が踏みつけられている。


「うん。助けてくれてありがとう!」


「おー、どういたしまして、だ。それでお前なんでこんなとこに一人で居んだよ? 団長かカイは一緒じゃねぇのか?」


「あのね、カイと一緒にバル様のお屋敷に帰ろうとしてたの。だけど途中で騒ぎが起きてたから、カイはそれを収めに行ったのね? 私はお馬さんの上で待ってたんだけど、そうしたら、いきなりその人に抱えられちゃって」


「このクソに攫われかけてたわけだな? ったく、人の休日に仕事を増やすんじゃねぇよ。せっかくの酒も無駄にしちまったしよぉ」


「ぐおっ、や、止め……」


「あ? ガキを攫うような雑魚の言葉はわからねぇなぁ?」


「ぐふぅっ」


 パンクさんは毒づきながら、足元の男の背をぐりぐりと踏みつけた。最後にドカッと足を踏み下ろすと、気絶したのか動かなくなる。意識があると、まだちょっと怖かったから安心した。震える手で、パンクさんの服を握らせてもらう。お酒臭いよね、ごめんよ。


「モモ!」


 その時、後ろから声がした。パンクさんが桃子を抱えたまま振り返ると、カイが必死の形相で駆けて来た。


「よーう、今日はよく会うな」


「ディー、なんでモモを抱えてるんだ!? 足元の男は? この状況はどうなってる!?」


 消えた桃子をかなり必死に探してくれていたようだ。息を荒げて呼吸を整える間もなく、パンクさんに詰め寄ってくる。必然的にモモにも近づくため、その額に汗が浮いているのが見えた。


 不可抗力とはいえ、迷惑かけちゃったね。あの、夕飯のおかずを一個あげるから許してくれないかな? もともと私のじゃないけど。バル様のお家のだけど。


「チビ──モモだったな? 人攫いに遭ってたぜ。オレがたまたま通りかかったから良かったものの、ガキから目を離すなよ」


「あぁ、オレが悪かった。ディーのおかげで助かった。この礼は必ずするからな」


「酒で頼むわ。そんじゃ、オレはこのクソを巡回してる団員に渡してくるから、お前はとっととチビッコを風呂に突っ込んでやれよ」


 パンクさんが桃子をカイに渡す。こういう時、簡単に移れるのが子供の良さだね! コンパクト桃子と呼ぶがいいさ!


「は? ……って酒臭っ!?」


「悪い。クソに酒ビン投げたら、チビッコも濡れちまってよぉ」


「チビッコやなくて、モモらよ?」


「舌回ってねぇぞ、モモ。オレはディーカルだ。ディーでいいぜ」


「ひゃいっ! よおしく!」


「モ、モモ? 顔が赤くなってきてる。大丈夫か?」


「らいじょーびゅ!」


 ちょっと気分がふわふわするだけで、問題ないよ! 右手を上げて笑顔で頷いたのに、パンクさんは面白そうに笑い、カイは顔を青くした。


「大丈夫じゃねぇな、こりゃ」


「オレ団長に殺されるんじゃないかな……」


 カイの嘆く声が遠ざかっていく。視界がくるくる回ってる。あはは、面白いなぁ、これ! 桃子はなんだか湯船に浸かっているような気分で目を閉じた。



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