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141、モモ、心配する~大きな危機には救世主が集うもの~後編

「光の精霊よ、助力を乞う」


 白い光が点滅しながらゆっくりと集まり、ルイスさんの手の平で弾けて温かな熱を生む。安心する温もりに桃子は思わず目を細める。ゆっくりと光が消えていくと、お腹の鈍通も消えていた。


「ありがとう、おいちゃん。おいちゃんも神官さんだったんだね? じゃあ、タオとも知り合いなの?」


「あぁ、よく知ってるさ。まさかここで顔を合わせるとは思わなかったぞ。なぁ、タオ?」


「えぇ。モモちゃん、この方は第三派閥のトップになるべき人なんだ。──目配せされましたから知らない振りは装いましたが、正直、心臓が止まるかと思いましたよ」


「すまんな。オレは元々こっちが本職なんだ。七年前に神官にはなったが、その後もたびたび抜け出して請負人の仕事をしてきた。オレは、神に仕えてるわけじゃないからな」


 ルイスさんは自嘲するようにそう言って、怪我をしているお姉さんの前に片膝をつく。


「さぁ、お嬢さんを治してやろう。タオ、お前も治癒魔法を使え」


「はい、ルクティス様」


 ルイスさんは偽名だったのかな? ルクティス様と呼ばれたおいちゃんと、呼んだタオは一緒に怪我をしているお姉さんに手の平を向ける。


「光の精霊よ」


「助力を乞う」


 二人が揃って精霊に呼びかけると、応えた精霊達が二人の周囲をくるくると乱舞して手の平に集まり、噛み傷に優しい光が降り注ぐ。そしてまるで逆再生するかのように傷口が盛り上がり、塞がっていった。わずか数十秒で血の跡を残して完治する。改めて見るとすごい力だね! お姉さんは意識を失っちゃったみたい。でも、二人のおかげで命は助かったようだ。


「まさか、お前が神官様とはなぁ」


「その髭面と頭じゃとてもそうは見えんが、治癒魔法を見ちまったし間違いなく本物のようだ」


「その、オレ達も、る、るくてぃす様って呼んだ方がいいのか?」


「よせやい。確かに神官ではあるが、請負人としては対等な仲間だぜ? ルイスってのはルクティスの愛称だ。今まで通りで構わんさ。肩書きが一つ増えたってだけで、今までとなにも変わらんよ」


「おぉ、そうか! じゃあ遠慮なく。ルイス、この野郎! てめぇ、飲み仲間のオレ達にも黙ってるたぁ水臭せぇ奴だぜ!」


「こりゃあ、一杯奢ってもらわなきゃなぁ」


「そりゃあいい! 今回の件が終わったらルイスさんに酒を奢ってもらおうぜ。それでチャラってことで」


「わかったわかった。奢ってやるからしっかり働けよ。──ジャック、お前は神殿にひとっ走りしてくれ。門番にオレの名前を出して、派閥に所属しない神官をなんとしてでも集めて連れて来るんだ。これはもう国自体の危機だ。オレ達が動かないと多くの人が死ぬ」


「それなら、これを」


 タオが袖の一部を破ってジャックさんに差し出す。そこには神殿の紋章なのか、太陽らしきものの中に星が描かれていた。受付のお姉さんがはっとしたように叫ぶ。


「緊急ですし、請負屋の馬が無事なら使ってください!」


「頼むぞ、ジャック」


「任せてくれよ。酒がかかってるからな!」


 ニカッと笑ったジャックさんは、ちらっとレリーナさんを見た気がした。気のせいかな? ってくらいの一瞬だったけど、頬をちょっとだけ赤くして、外に飛び出して行った。やっぱり初心な人みたいだけど、この状況で躊躇なく出ていけるのがすごいね! 外からはまだ獰猛な狼の声がしてるし、遠いけど人の悲鳴も聞こえてくる。桃子ならまず足が震える。……強がりました。今も震えそうです。


「オレ達も近場の害獣をやるぞ。タオ、ここは任せたからな」


「はいっ、わかりました!」


 タオがしゃっきりと背筋を伸ばして忠犬の返事を返す。その目を見れば、ルイスさんを慕っているのがよくわかる。尊敬の光でキラキラ輝いているもんね! 再び外に飛び出していく救出チームを見送りながら、桃子はちょっぴり羨ましく思った。

 

 なんか、いいなぁ。ルイスさんはお仲間に恵まれてたみたいで、すんごく丸く収めてくれたね。店の中の人達も孤児院の子達も一瞬浮かびかけた不審の色がすっかり消えてるもん。これもジャックさん達がお酒の要求をしながらフォローしたおかげだと思う。だって、お酒の話が出た途端に、周囲の人達も思わず笑ってたからね。


「重症の方は優先的にこちらに回してください。出来る限り魔法で治します」


「それじゃあ、軽傷の方は僕達が診ますよ。その、情けないですけど、力ではあまり役に立てないので」


 線の細い青年が恥ずかしそうに頭を掻いて申し出てくれた。すんごく助かるよね! その後ろで同じように筋肉とは無縁そうなおじさんと、孤児院の子達、それに高校生くらいの女の子達が頷いている。この子達も手伝ってくれるみたいだね。


「害獣が内部に入ってきた時に抑えられる人も必要でしょう。誰か、出来そうな方はいませんか?」


 レリーナさんが周囲に尋ねると、男女混合で六人の人が手を挙げてくれた。どの人も鍛えられてるけど、バリバリ戦っちゃう! って感じじゃなくて、知恵で倒しますよって雰囲気だね。


「私も加わりますから、内部の守りは私達でしましょう。モモ様は傍にいらしてくださいね」


「うん! 皆で協力してこの場所を守ろうね!」


 害獣という怖さに縮こまっていた心がぽかぽかと温かくなって、負けん気を取り戻す。周囲の空気もずいぶんと明るいものに変化した。ジャックさんがきっと神官達を連れて戻ってきてくれるはずだ。それまでなんとしてでも耐えなきゃ! こうして、それぞれの戦いが始まったのであった。





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