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14、モモ、子供の軽さを思い知る~災難には救世主が付いているはず~前編

「モモ、オレはこれから仕事だ。お前はカイと一緒に屋敷に戻ってくれ」


 バル様は騎士団の門まで桃子を抱えて連れてきてくれると、カイの馬に乗せながらそう言った。騎士団師団長という肩書のあるバル様も、キルマ同様に忙しいのだろう。


 その時間を割いて桃子のために動いてくれたのだ。ありがとう、バル様。帰ってきたら肩揉むよ? おばあちゃんには好評だったテクニックを見せてあげんね!


「うん、わかった。早く帰ってきてね?」


「努力しよう。モモのことは、これからオレが預かることになる。近々、騎士団全体に正式に紹介して、顔を繋げる機会を設けよう。何かあった時に助けてもらえるようにな。それからしばらくは、その身体とここの生活に慣れることを第一に考えるといい」


「ありがとう、バル様」


「あぁ。カイはオレの護衛を外れて、モモにつけ。騎士団に顔が繋がったら、お前を副団長補佐に戻す」


「団長、それならあなたの護衛は誰が付くんです?」


「いくら兄上の仰せとはいえ、これ以上の護衛は必要ない。子供の頃ならばいざ知らず、今は師団長だ。そんなオレに本当に護衛が必要だと思うか?」


「まぁ、隊長クラスでもあなたの相手を出来る人は限られるほど実力はおありですよね。正直、オレより強い人を護衛するのも変だとは思いますよ? けれどジュノラス様は納得しますか? 貴方はただの騎士団師団長ではない。この国の王子でもあられる」


「王位継承権を放棄しても構わないんだが、一度陛下に申し出たら兄上に却下された」


「ははっ、兄弟仲が良いのはいいことですよ。顔を見れば罵る妹も居ますからね」


「……そうだな」


 カイが苦く笑うと、バル様は思案するように頷いた。特定の人を指したような言い方だったけど、誰のことなんだろ? 私もいつかその人に会うのかな。その時は、お話ししてみよう。聞き上手の桃子さんに、お任せだよ!


「モモ、いい子にな」


 そんな言葉をバル様にもらって、桃子とカイは馬上の人となったのである。



 行きよりものんびりした速度で、お馬さんでポクポクと進んでいると悲鳴が聞こえた。商店が並んだ道で女の人がガラの悪そうな男の人達に絡まれているようだ。周囲に野次馬が出来ていき、女の人を庇うように罵り声が聞こえてくる。


「やれやれ、せっかく気分よく走ってたってのに……モモ、悪いけどちょっとここで待っててくれるかい? 治安維持も騎士団のお仕事なんでね」


「うん。女の人を助けてあげてね」


 カイは道端で馬を降りると、馬の紐を近くの木の枝に括り付けた。そして、モモを馬に乗せたまま、騒ぎが起きて罵声が飛んでいる先に走っていく。大丈夫かな? ちょっと心配で馬の上から少しでも騒ぎの様子が見えないかなと桃子は小さな身体を伸ばす。


「うーん、やっぱり見えないねぇ。立ったら見えるかなぁ……ひあ!?」


 身体を左右に動かして角度を変えていると、突然後ろから腰に手が回って引っ張られた。視界がくるりと回り、厚い肩に担がれたまま、相手が走り出す。人攫い!?


 視界がガタガタ揺れて、気持ち悪い。桃子はジタバタ暴れながら、大きく息を吸う。


「だ、誰か……っ、むぐぅ!!」


 声を出して助けを呼ぼうとした。しかし、それを察した相手が肩に桃子の口を押し付ける。これなんていじめ!? 本日二度目の呼吸困難! ピンチですっ! 誰か助けて!!


 裏路地に入ってお店が少なくなった通りを、男だろう人攫いが駆け抜けていく。どこに連れていかれるのか。怖くて、涙が出そうになる。


「チビッコ、目ぇ閉じろ!」


 聞いたことのある声がして、桃子はとっさに言われたとおりにした。ぎゅっと目を閉じると、ガッシャーンと音がして、頭にお水がかかった。


「ぐはぁっ」


 どうっと桃子を抱えていた男が仰向けに倒れる。投げ出された桃子は筋肉質な腕に抱きとめられた。耳元でため息がして、こそばゆくなる。その人の心臓がどくどく動いているのを頬に感じた。それは、とても安心するものだった。途端に、鼻がつーんとした。あれ? 私お酒臭くない?


「……悪いな、咄嗟に酒ビン投げたから、かかっちまったみたいだ。大丈夫か、チビッコ?」


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