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137、モモ、保護者様の心を知る~意外な繋がりは人の縁を生む~中編

 左腕にお尻が落ち着く定番スタイルになると、視線が合っちゃうから、それが照れくさくて、厚い胸元に頬を寄せて顔を隠した。


「モモ?」


「動いちゃダメ!」


「具合が悪いわけじゃないんだな?」


「うん。だからもうちょっと、このままでいて」


 せめて顔の熱さが消えるまで! そう思うけど、心の中の五歳児は素直だから両手をバンザイしてる。バル様のだっこ! 久しぶりのだっこ! だっこだよぅ! 五歳児のテンションはウナギ登りである。半被はっぴを着込んでお祭りが始まりそうな勢いだ。十六歳の桃子はいろんな感情に振り回されて、顔の熱がなかなか引かない。それなのに、やっぱりバル様の傍が一番安心しちゃうんだから、笑っちゃうよね。


 ついついほぉっとしてたら、無数の視線を感じた。うん? って顔をあげると、バル様の肩越しに見えること見えること。請負人の人達のびっくり顔と、苦笑しているカイに、その後ろのジャックさん。さらに唖然としたように半分口を開けているタオの姿もあった。怒られなかったのは良かったけど、この状況……どうしよう?


「熱烈だなぁ。まさかルーガ騎士団師団長様が自らお見えとは思わなかったぞ」


 人の海が割れると、その間からギャルタスさんがやってきた。爽やかな笑顔を見せているけど、威圧感があるような?


「オレはここの頭目、ギャルタス・デミック」


「……ルーガ騎士団師団長バルクライ・エスクレフ・ジュノールだ。今回はモモが世話になった」


「気にするな。こちらにとっても可愛い請負人の一人だ。仲間を助けただけさ。それはいいとして、対処をぜひお願いしたい奴等がいてね。──お前等、連れて来い!」


 ギャルタスさんが右腕を上げて背後に声をかけると、サバクとルーガ騎士団の団員が縄で縛られて木の床に転がされた。サバクは眼鏡が割れて髪が乱れていた。もう一人の団員の人は、唇に血が付いており、顔に殴られた痕がある。二人は手負いの獣のように周囲を睨んでいる。その目と会った瞬間に、無意識にひっと喉が鳴った。怖くて、バル様の襟元を掴む手が震え出す。


「モモ、動けないから大丈夫だ」


「う、うん……」


「おっと、ごめんな。怖い思いをさせちゃったか。でも確認が必要だから、ちょっとだけ我慢してくれ。モモちゃん達を人買いに売ったのはこいつで間違いないか? 西の孤児院の院長サバク。ギル達の方にはもう確認は取れてる。そうだなよな、ギル?」


「……おう」


 人垣の前にいたギルがぶっきらぼうに答える。後ろの子達も震えながら大きく頷いていた。まだ怖いだろうけど、勇気がある子達だ。私も怖がってばかりいられないね! というわけで、バル様の端正なお顔を見上げて眼福をチャージ。と思ったら、どことなく心配そうな黒い目にじっと見つめられていた。ちょっと照れつつ、眼福力を勇気に変えて、勝負! 頑張って目を三角にしながらサバクを見る。


「ははっ、いいねぇ。強い子だ。加害者に被害者、保護者に救出者、役者は揃ったな。最初から順を追って話をしようじゃないか。まず、モモちゃん達がどうして攫われたかだな」


 ギャルタスさんに視線で促されたので桃子は口を開く。


「お仕事先でのギルの様子が気になったから、孤児院の様子を見に行くことにしたの。でもその時は時間があんまりなかったから、隠してあった帳簿を見つけただけで、内容もちゃんと見れないまま帰ったんだけど……」


「どこでこいつが怪しいと思ったんだ?」


「その人の服がギル達と比べて綺麗過ぎたから。本当に子供を大事にしてくれる大人なら、自分ばかり身ぎれいにはしないもんね」


「それだけで気付いたのか?」


「今回はたまたま気付いただけだよ。お友達と話してなきゃ気付かなかったと思うの」


 だから本当の意味でお手柄だったのはミラだろう。桃子がそう答えると、ギャルタスさんは感心したように頷く。


「いやいや、大したものだ。それで、その後はどうしたんだ?」


「ギルを捕まえて、サバクのことを話して孤児院の本当の姿を教えてもらったよ。子供を売ってる施設だってことも、その相手には貴族もいるってことも。だから皆を助けるために協力することにしたの」


「その後に孤児院に向かったんだな? で、捕まったというわけか。その現場をジャックが目撃して、請負屋に飛び込んできたんだ。そこでオレが話を聞いて、ルイスに馬車を追いかけるように言った。それと同時にサバクと門番の拘束も指示を出した。結果、ルイス達が無事に追いついてモモちゃん達を人買いから救出できた。これが全部の経緯でいいな?」

 

 周囲を見回して確認を求めたギャルタスさんに、今回の救世主、ジャックさんとルイスさんから頷きが返る。桃子もうんうん頷きながら、同意した。





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